『パディントン』&『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の関連性とは?ポール・キング監督が影響を受けた偉大な英国作家たちからのレガシー

コラム

『パディントン』&『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の関連性とは?ポール・キング監督が影響を受けた偉大な英国作家たちからのレガシー

ディケンズ作品のような市井の人々が助け合い、懸命に生きる姿

かつてキング監督は、映画『パディントン』には英国の国民的作家であるチャールズ・ディケンズ(1812年生~70年没)の名作小説「オリヴァー・ツイスト」からの影響が大きいと語っていた。孤児の少年の成長を描いた「オリヴァー・ツイスト」をはじめ、「クリスマス・キャロル」や「デイヴィッド・コパフィールド」など、社会の片隅で生きる人々のハードな現実を、ユーモアや楽観主義で包み込むのがディケンズの作風である。そして今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も、やはり同様にディケンズ色が強いように思えるのだ。

「いつか世界一のチョコレート店を作る」という母との約束を胸に、チョコレートの町にやってきたウィリー・ウォンカ
「いつか世界一のチョコレート店を作る」という母との約束を胸に、チョコレートの町にやってきたウィリー・ウォンカ[c] 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

「いつか世界一のチョコレート店を作る」という亡き母親(サリー・ホーキンス)との約束を胸に、ほとんどお金もなくチョコレートの町にやって来た純粋な青年ウォンカは、その夢を意地悪な大人たちに邪魔される。彼の味方になってくれるのは、安宿で一緒になった孤児の少女ヌードル(ケイラ・レーン)など、恵まれない貧しい人たち。ウォンカと市井の人々の共助や共生、分配といった主題は、ロアルド・ダールの前にはディケンズがいる、という英国の偉大な作家の系譜を示すようでもある。

ウォンカを助けてくれるのは、安宿で出会った少女ヌードルら恵まれない貧しい人たち
ウォンカを助けてくれるのは、安宿で出会った少女ヌードルら恵まれない貧しい人たち[c] 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

豪華英国俳優たちの競演も必見!


「チャリチョコ」で人気爆発した奇想天外なキャラクター、『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』(公開中)でもパロディが行われていた小さな紳士ウンパルンパを演じるのは、『パディントン2』にも出演していたヒュー・グラント(思えば1987年の『モーリス』でブレイクした若き日のグラントは、『君の名前で僕を呼んで』のシャラメのような「王子様」だったのだ!)。

ウォンカからこっそりとチョコを盗む小さな紳士、ウンパルンパ
ウォンカからこっそりとチョコを盗む小さな紳士、ウンパルンパ[c] 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

さらにオリヴィア・コールマンや、「Mr.ビーン」ことローワン・アトキンソンなど、(資本的にはアメリカ映画ながら)英国を代表する豪華キャスト陣がしっかり脇を固める。そのなかで美しい歌声とダンスも披露するティモシー・シャラメの爽やかな存在感が本当にすてき!王道のファンタジー・ミュージカルにしてヒューマンストーリーとして結晶した『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、すでにスタンダードの風格を備えているのだ。

文/森直人

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