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岩井俊二監督が衝撃を受けたハリウッドの製作体制とは

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岩井俊二監督が衝撃を受けたハリウッドの製作体制とは

11人の監督がニューヨークを舞台に愛の形をアンサンブル形式で描いた『ニューヨーク,アイラブユー』(2月27日公開)。日本からは『花とアリス』(04)、『スワロウテイル』(96)の岩井俊二監督が参加し、オーランド・ブルーム、クリスティーナ・リッチをキャストに迎え、顔の見えない男女のロマンチックな交流を描いた。

岩井監督にとって、3年ぶりの監督作であると同時に、ハリウッド・デビュー作品ともなった本作。日本とは違った製作現場は、岩井監督にはどんなふうに映ったのだろうか?

「現場のプロフェッショナリズムは比較にならなかったですね。ミッションのこなし方がすごかった。現場では誰も怒鳴ってない、小さな声でトランシーバーで話してるだけですべてが動いていく。情報が混乱しない。“こうしたい、ああしたい”と言っていれば、全部できあがってしまう。監督にとっては天国ですね」と、ハリウッド・スタイルの現場に衝撃を受けた様子。

だが、ハリウッドのスタッフの難点はギャラが高いこと。その理由は、スタッフにもオーディションが行われるという査定システムの存在だ。

「日本では俳優のオーディションはあっても、スタッフにオーディションはしないですよね。“キャスティング・ディレクターに会わないか?”って言われて10人くらい候補者のリストが送られてきました。いいスタッフはギャラが違う。イマイチだと落ちていっちゃうというシステム。日本では監督だけが(職がなくなるという危機に)さらされている。頑固だったりすると仕事がなくなってしまいますからね」と、日本映画界での監督というポジションに、本音をチラリともらした。

最近は、市原隼人が主人公の声を務めたアニメ『BATON バトン』(09・劇場未公開)のプロデュースなど、アニメーションの製作に力を注いでいる岩井監督。本作のプロモーション用にも、自らを登場させたアニメを製作。本編とともにニューヨーク・プレミアで上映され、好評を得た。ハリウッドを経験した日本映画界のカリスマの、さらなる飛躍に期待したい。【取材・文/鈴木菜保美】

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