渋谷凪咲が熱演!清水崇監督の最恐ホラー『あのコはだぁれ?』撮影現場に潜入

コラム

渋谷凪咲が熱演!清水崇監督の最恐ホラー『あのコはだぁれ?』撮影現場に潜入

ハリウッド・リメイクもされた世界的大ヒット作「呪怨」シリーズ(00~06)を皮切りに、実在の心霊スポットを舞台にした『犬鳴村』(19)に始まる“恐怖の村”シリーズ、民間伝承と仮想現実との融合で迫る『忌怪島/きかいじま』(23)、GENERATIONSのメンバーを本人役で登場させた『ミンナのウタ』(23)などなど、常に新しい切り口の恐怖で映画ファンを震撼させてきた清水崇監督。

清水組の現場に潜入!
清水組の現場に潜入![c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

最新作『あのコはだぁれ?』(7月19日公開)は、それら過去の代表作のエッセンスやアイデアをバージョンアップさせ、さらなる恐怖のアプローチと合体させて、学生たちの日常に襲いかかるおぞましい出来事の数々を描く戦慄の学園ホラー映画だ。

日常を浸食する不穏な空気こそ、清水演出!

とある夏休み、臨時教師の君島ほのか(渋谷凪咲)は赴任早々、補習クラスを受け持つことになる。ところが、プリントを配り終えて教壇に戻る彼女が振り向くと、さっきまでいなかった少女が座っているではないか!しかも次の瞬間には、同じクラスの別の少女が屋上から飛び降りる現場にも遭遇してしまう。

こんなショッキングなシーンから幕が開ける本作だが、それはあくまでも“あのコ”の挨拶代わりのようなもの。最恐ヴィランの襲来を最初にバーンと印象づけて、清水監督が自らの脳内にあふれだしたバリエーションに富んだ恐怖のアイデアの数々を全開にしやすくしたという見方もできる。それぐらい、本作での清水演出はやりたい放題の大暴走!シチュエーションごとに異なる恐怖を叩きつけてくる構造はまさに“恐怖の実験室”とでも言うべきもので、撮影現場では、自らがイメージした悪夢の一部始終をモニターでニヤニヤしながら見守る姿も目撃することができた。

清水作品では、過去作においても“この世のものではないもの”が平然とそこにいて、ぼんやりと佇む従来の霊描写とは一線を画すものが多かったが、本作の“あのコ”も前記のようにあまりにも普通に存在する。最初の数シーンだけ、カメラがパンしたときに突然現れたり、廊下の床に反射する形で映り込んだりして不気味さを漂わせるものの、その後は自然にクラスの一員になっていて、逆説的に不穏な空気を作りあげていた。

楽しいはずの夏休みを、不穏な空気が覆いつくす
楽しいはずの夏休みを、不穏な空気が覆いつくす[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

清水監督はそのうえで、補習授業を一緒に受けていた瞳(早瀬憩)が彼女の歌声に魅了され、共鳴していくさまを2人のピアノの連弾で表現(撮影方法も秀逸!)。“あのコ”が子どもたちの日常に忍び込んでいく恐怖を、学校内ではよく見かける日常の風景のなかで、美しい旋律とともに繊細に印象づけていたから驚く。

学生の日常生活で起こる不可解な現象を際立たせるために、清水監督が自然な描写にこだわっているのも注目すべきポイントだ。クランクインは3月中旬のまだ寒い時期で、しかも強風が吹き荒れていた。しかし、劇中は夏休みの設定のため、校内の花壇にはヒマワリが植えられ、コートを脱ぎ、夏の制服姿になった生徒役の俳優陣が汗に見立てた水滴を噴射されてから撮影はスタート。

映画初主演の渋谷凪咲が、先生役に奮闘

渋谷凪咲はイメージを一新するシリアスな役柄に挑んだ
渋谷凪咲はイメージを一新するシリアスな役柄に挑んだ[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

ヒロインのほのかに扮したのは、本作が映画初主演の渋谷。そんな彼女にも清水監督から容赦なく「もう一度」と声が飛ぶ。これまでバラエティへの出演が多かった彼女は、経験から次の展開を予想して動いてしまっていたのかもしれないが、清水監督はそれを見逃さない。

「いまの動きは、次になにが起こるのか分かっている動きです。はじめて見た時のような自然なリアクションをしてください」と的確な指示が伝えられ、生徒たちと初めて対峙する何気ないシーンでも「その、“いつもの”渋谷凪咲の優しい口調だと子どもたちにナメられるよ(笑)。もう少し語気を強くして!」といった細やかな演出が徹底されていた。

『あのコはだぁれ?』より
『あのコはだぁれ?』より[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

子どもたちの日常…それは学校だけに留まらない。家や通学路、駅前のロータリーや溜まり場なども本作では“恐怖”の舞台になるが、学校帰りに立ち寄る楽しいゲームセンターで恐ろしい目に遭うなんて誰が思うだろう。UFOキャッチャーやプリクラがホラーアイテムになることを想像する人もあまりいないだろうが、そういう場所でこそ仕掛けるのが清水監督だ。

なにが起こるのかは、映画を観た時の驚きと恐怖が失われるので書くことを控える。ただ、この一連では、ほのかの教え子に扮した注目の次世代俳優、荒木飛羽と蒼井旬の、怯えたり絶叫したりする迫真の芝居が、この世のものではないものを見た衝撃を伝えていた、ということだけは言っておこう。

【写真を見る】絶句…クレーンゲームが掴み上げたものの、背筋が凍る“正体”は?
【写真を見る】絶句…クレーンゲームが掴み上げたものの、背筋が凍る“正体”は?[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

ホラー担当(ホラーシーンの細かい演出や描写、それに伴う備品の用意を任されている清水組ならではのスタッフ)が自ら濃度を調整した血のりで、UFOキャッチャーから伸びる真紅の靴跡を慎重につけていたのもこのジャンルの現場ならではの光景で、このゲームセンターの一幕が、2人が口を揃えて「気持ち悪い」と語るような姿で登場する“あのコ”の不気味な動きとともに、本作中盤の大きな見どころになるのは間違いない。

新キャラクターも…パワーアップした恐怖のアプローチ

さらに、家のシーンでは『ミンナのウタ』で観客がどよめき、震え上がった恐怖のアプローチ(これも書けません。観ている人は思い出してください!)をパワーアップさせて導入。“あのコ”の家族や新たな脅威になるに違いないキャラクターが大暴れするこのシークエンスの見せ方も清水監督ならではで、キャストやカメラマンにさえ本当の狙いを伝えない遊び心あふれる演出から生まれた、奇妙な違和感がおもしろかった。

はたして“あのコ”の正体は…
はたして“あのコ”の正体は…[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会

「あり得ないからこそ、敢えてやる!」。そううそぶく清水監督には迷いがなく、学校の屋上が舞台となる、アクション映画と見間違うようなクライマックスでも、現在と過去、そのどちらでもない世界が交錯する究極の清水ワールドを、ロケーションとオープンセットを駆使して約1週間にわたる撮影で構築。その怒涛の惨劇は台本を読んだだけでは理解できないもので、どんな映像になっているかと期待が高まる。

それだけに、映画の公開が楽しみだ。視覚に訴える表現にこだわる清水崇監督が、十八番とも言える時空を超越した世界観で、どんな恐怖で私たちを戦慄させるのか。本作が猛暑を吹き飛ばす冷気を運んでくることに期待せずにはいられない。

『あのコはだぁれ?』は7月19日(金)公開
『あのコはだぁれ?』は7月19日(金)公開[c]2024「あのコはだぁれ?」製作委員会


取材・文/イソガイマサト

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