『名もなき者』ジェームズ・マンゴールド監督、日本の観客からの質問に次々回答!ティモシー・シャラメがボブ・ディランにハマった瞬間とは?

『名もなき者』ジェームズ・マンゴールド監督、日本の観客からの質問に次々回答!ティモシー・シャラメがボブ・ディランにハマった瞬間とは?

「行間やセリフの前後にあるものに魅了されています」

上映後の会場を見渡したジェームズ・マンゴールド監督
上映後の会場を見渡したジェームズ・マンゴールド監督

「監督にとって“いい映画”の条件とは?」という投げかけには、「それぞれに意見があると思いますが」と前置きしつつ、「音を消したとしても、ストーリーを綴ることができる映画。役者の眼差しやちょっとした動きだけで、物語を理解できるようなもの。映画と観客のコミュニケーションは、瞳から起きるのではないかと思っている。行間やセリフの前後にあるものに魅了されている」と持論を述べたマンゴールド監督。「我々は、自分たちの目で見るものを信頼しなくなっているのではないかと思います。日々を言葉に頼りすぎているのかもしれない。しかし人間は本能的に、目で見たものに真実が宿っているかどうかを見抜くことができるはず。瞳の裏にあるものがなんなのか。言葉の裏にあるものがなんなのか。それを理解するという作業を観客にしてもらうような映画。私はそういったものに関心があります」と観客の本能や感覚に訴えかけるような映画が、自身の思う“いい映画”だと続けた。

 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』メイキング風景
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』メイキング風景[c]2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

質問の手があがり続けるなど、観客の興奮が伝わるような時間となったこの日。最後の質問は、「一番好きなボブ・ディランの曲は?」というもの。「ボブ・ディランのファンの方って、どれくらいいますか?毎週、好きな曲って変わりませんか?自分はそうなんです」と切り出したマンゴールド監督は、「映画のなかの曲で選ぶとしたら、ティミーとモニカがすばらしいパフォーマンスを見せてくれた『風に吹かれて』。ベッドのうえで歌っているシーンです。あとは冒頭、ウディ・ガスリーの病室で披露した歌も好き。このシーンは、クランクインしてから3日目か、4日目に撮影しました。ティミーがこの役にガチっとハマった瞬間でもあった。そこからティミーは、決してそれを手放すことなく最後まで演じ切りました。『ミスター・タンブリン・マン』も大好き。好きな曲はどんどんお話しできますが、長くなるのでこの辺りで(笑)。本当に美しい音楽ばかり」と改めて魅力を噛み締めていた。

ティモシー・シャラメの献身的な姿を絶賛した
ティモシー・シャラメの献身的な姿を絶賛した

降壇時には「今日は本当にありがとう。映画を観ていただき、時間を共有できたことをうれしく思っています。全国で公開されるのを楽しみにしています。ティモシー・シャラメのファン、ボブ・ディランのファンも日本にはたくさんいらっしゃるし、僕の映画を好きな方もいるかもしれない。いろいろな方に楽しんでいただきたい。東京、日本は来るたびに大好きな場所で、滞在も楽しんでいます」と熱を込めてステージを後にしたマンゴールド監督。会場からは惜しみない拍手が送られていた。


取材・文/成田おり枝

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