吉田兄弟が『KUBO』に感激「まさか三味線奏者が映画の主人公になるなんて」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
吉田兄弟が『KUBO』に感激「まさか三味線奏者が映画の主人公になるなんて」

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吉田兄弟が『KUBO』に感激「まさか三味線奏者が映画の主人公になるなんて」

『コララインとボタンの魔女』(09)のスタジオライカによるストップモーションアニメ『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(11月18日公開)で、日本語吹替版の主題歌「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」を手掛けた三味線奏者の吉田兄弟。世界を股にかけて活躍する2人を直撃し、楽曲の制作秘話や、感銘を受けたという本作の世界観について話を聞いた。

本作の舞台は古の日本で、三味線の音色により折り紙を意のままに操れる少年・クボが、旅を経て成長していく冒険譚となっている。第89回アカデミー賞で長編アニメーション賞候補となり、“アニメ映画界のアカデミー賞”と称されるアニー賞でも3冠を受賞するなど、世界的にも評価も高い作品だ。

監督したのは、本作で長編アニメーション監督デビューを果たしたトラヴィス・ナイトだが、海外クリエイターのフィルターを通して描かれたとは思えないほど、古式ゆかしい日本が見事に表現されている。吉田兄弟もそのクオリティの高さには驚嘆したそうだ。

弟の健一は「外国人監督による間違った解釈の日本の映画はたくさんあると思いますが、今作はこんなにストレートに日本を描いているのに、素晴らしい映画に仕上がっている。監督は日本の伝統や文化についてすごく勉強されていますね。これにはジェラシーを感じました。日本人に作ってほしかったと思ったくらいです」と唸る。

兄の良一郎は「少年が三味線をもって戦う姿がカッコいい!」と満面の笑みを見せる。「こんな映画ができあがってくるなんて。三味線をずっと続けてきて良かったです。僕たちは小さい頃から三味線を始めましたが、どうしても年配の方が弾くイメージがあって、自分たちもやめたいと思った時期もあったんです。その頃はまさか三味線奏者が、こんなにカッコいい映画の主人公になるなんて考えられなかったです」。

健一も「昔、三味線をソフトケースに入れて稽古場まで通うのが嫌で、友達の家を通過する時は走ってましたから」と苦笑い。

「僕らは再来年で20周年を迎えますが、教育で選択授業に和楽器が入った当時、僕たちは学校でたくさん演奏をやったんです。それがたまたまメディアに取り上げられたので、今、僕らはここにいます。ある意味、自分たちは三味線を広めるという役割を意識してきました。今回の曲は、その意気込みを感じてもらえるアレンジになっているんじゃないかなと」。

「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」は、時代を超えて愛されてきたビートルズの名曲なので、吉田兄弟もライブで披露したことがあったそうだ。健一は「ビートルズはメジャーとマイナーが共存していますが、僕たちはマイナーが得意なんです。この曲は最初にマイナーからスタートし、メジャーに変化していくため、すごく三味線に合うと思っていたので、決まった時はどう料理をしてやろうかと思ってワクワクしました」と喜んだのだとか。

良一郎も「津軽三味線ならではのやり方があると思いました。たとえば最後の駆け上がるメロディーラインも三味線ならではのもっていき方があるんです。それらを僕たちらしく表現できたのではないかと」と手応えを口にする。

2003年の全米デビュー以降、アメリカ・ヨーロッパ・アジア・オセアニアなど世界各国で活動してきた吉田兄弟。良一郎は「富士山や着物など、自分たちにとっては当たり前になっている日本のものが、海外へ行くとすごく魅力があり、個性的なものだったんだと感じることがあります。三味線という文化も日本でしかないものだから、それは最大の武器なんだと改めて感じますし、日本文化の良さを再認識してもらう入口になればと」。

健一も「こんなに日本の古き良きものをちゃんとピックアップしている映画は、これからもそうそう出てこないんじゃないかと。今後、東京オリンピックに向けてもっともっと日本に対する興味は加速していくと思うので、本作を観てもらって何かを見つけてもらえればと思います」と本作をアピールした。

取材・文/山崎伸子

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