プロゲーマーのももち「10代のころにゲームセンターで先輩から学んだことは大きい」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
プロゲーマーのももち「10代のころにゲームセンターで先輩から学んだことは大きい」

インタビュー

プロゲーマーのももち「10代のころにゲームセンターで先輩から学んだことは大きい」

華麗なスティックさばきや駆け引きで雌雄を決する対戦型格闘ゲーム。超絶技を次々と繰り出し、そのプレイで人々を熱狂させるプロゲーマーの知られざる姿を追ったドキュメンタリーが『リビング ザ ゲーム』(公開中)だ。同作に出演するプロゲーマーのももちとメガホンを握った合津貴雄に取材を敢行し、撮影の経緯はもちろん、プロゲーマーの知られざる一面やこれからのゲーム業界への希望などを聞いた。

アメリカのプロチーム、Echo Foxの一員として活躍するプロゲーマーのももち
アメリカのプロチーム、Echo Foxの一員として活躍するプロゲーマーのももち

本作の撮影が始まったのは2014年。当初、合津が映画の主軸に考えていたのは日本初のプロゲーマー、梅原大吾だった。「梅原さんの取材で2014年末にアメリカで行われた格闘ゲームの世界大会“カプコンカップ”に行ったのが最初です。その後、梅原さんや周りの方を取材していくうちに、ももちさんっていうおもしろい方がいると聞きまして」とその経緯を語る。実はその大会で優勝したのがももち。だが、作品を見ればおわかりになると思うが、彼の姿はほとんど映っていない。

【写真を見る】カメラがももちに迫った2014年は彼にとっても激動の1年だったという
【写真を見る】カメラがももちに迫った2014年は彼にとっても激動の1年だったという[c]WOWOW / Tokyo Video Center / CNEX Studio

プロゲーマーカップルの勝負の一年を見届ける

合津がももちに対し興味を抱いたのにはさまざまな要因があった。「当時、名古屋から誰も頼る人がいない東京に出てきたばかりで、そのハングリー精神にひかれたのと、ももちさんは“梅原を超えたい”という僕が出会った中で唯一の選手だったんです。また、恋人のチョコブランカさんと結婚したいと考えていて、自分の将来を賭けてゲームで戦うカップルプロゲーマーの勝負の一年を見届けたいと思いました」と人間的な魅力が大きかったという。

毎日10時間もゲームと向き合うというももちの練習シーンも登場する
毎日10時間もゲームと向き合うというももちの練習シーンも登場する[c]WOWOW / Tokyo Video Center / CNEX Studio

現在はももちの奥さんであるチョコブランカも、ももちと同じアメリカのプロチーム、Echo Foxに所属している。劇中では2人で一緒に練習をするシーンもあるが、その練習時間はなんと10時間にも及ぶという。「まったくコントローラーに触らない日はないですね。感覚はすぐに戻るんですけど、1日空いて、次の日に最初に触ったときは少し腕が落ちたかなって思います。だから、海外遠征で飛行機でアメリカなどに行く場合は、半日から1日ぐらいはコントローラーに触れない時間が絶対にあるので不安になりますよ」

2014年当時、ももちがメインキャラクターとして使っていたのが主人公リュウのライバルのケン。梅原がリュウ使いだったということも理由のひとつだという
2014年当時、ももちがメインキャラクターとして使っていたのが主人公リュウのライバルのケン。梅原がリュウ使いだったということも理由のひとつだという[c]WOWOW / Tokyo Video Center / CNEX Studio

他のゲーマーがどんな人か、詳しくは知らなかった

ももちがプレイする「ストリートファイター」は1対1で戦う対戦型格闘ゲームであり、練習する時はもちろん1人。個人競技ゆえにプライベートで他のプロゲーマーと交流する機会はほとんどないのだとか。「梅原さんが普段何をしているのか、ゲーマービー(元ホテルマンの台湾人のプロゲーマー)やルフィ(広告代理店に勤めるフランス人のプロゲーマー)がどんな風に練習しているのかとか、ある程度は想像できましたけど。知らないことのほうが多かったです」と、ももちはライバルたちの人となりを映画で初めて知ったそう。

父親がゲーム好きで、ゲームに対して理解のある家庭だったことが大きいとも
父親がゲーム好きで、ゲームに対して理解のある家庭だったことが大きいとも

ももちは前述したようにアメリカのプロチームの選手。他のプロスポーツ同様にプレイ内容が次のシーズンの契約にもつながるシビアな世界だ。「プロ野球みたいに複数年契約とかはなくて、自分は1年毎にチームと契約を更新しています。ただ、野球だったらその競技がなくなることはないけど、ゲームの新しいバージョンが発売されなくなったり、大会が開催されなくなったりする可能性もあるので、すごく怖い世界だと思います」と将来への不安ものぞかせる。

1/60秒の判断が勝負を決するため、より成功率を高めるために練習を重ねる
1/60秒の判断が勝負を決するため、より成功率を高めるために練習を重ねる[c]WOWOW / Tokyo Video Center / CNEX Studio

ゲーセンで年上の方から学んだことを、次の世代へ伝えたい

ももちは2015年11月に株式会社忍ismを立ち上げて、後身の指導も始めたり、2017年1月にはビデオゲームがプレイできるスタジオスカイを設立。「10代の頃にゲームセンターで年上の方から学んだことってすごい多いんです。ゲームは自分のほうがうまかったから、教えてもらうことなんてなかったんですけど、彼らと接することで人生経験になりました。そして自分がいま、その時の大人たちの立場なので、それを若い子たちに教えてあげられればいいなと思っています。日本の格闘ゲーム業界は高齢化が進んでいて、世代交代ができていないので、自分が風穴を開けられればと思っています」と、街中からビデオゲームが楽しめるゲームセンターが少なくなっているいま、改めてゲームを通して異なる世代が交流できる場を設けた意図を語る。

『リビング ザ ゲーム』は公開中
『リビング ザ ゲーム』は公開中[c]WOWOW / Tokyo Video Center / CNEX Studio

平昌冬季オリンピック開会式の2日前、史上初の五輪公認のeスポーツ(※)大会が開催されるなど、ビデオゲームを取り巻く環境が変わってきたが、ももち自身のスタンスはどうなのだろう?「『ストリートファイター』以外はアマチュアレベルなので勝てる自信がないけど、自分の得意なタイトルが選ばれたら戦ってみたいですね」と意欲も見せる。ぜひ、彼が日の丸を背負って戦う姿を見てみたいと思うのは自分だけではないはずだ。

※注:eスポーツ=エレクトロニック・スポーツとはコンピュータゲームやビデオゲームを使用したスポーツ競技の総称。対戦格闘ゲームだけでなく、スポーツゲーム、パズルゲームなど多彩なジャンルのゲームが採用されている。

取材・文/トライワークス

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