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池上彰、映画『ウインド・リバー』にうなる!「アメリカの闇が見えてくる」

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池上彰、映画『ウインド・リバー』にうなる!「アメリカの闇が見えてくる」

『ボーダーライン』(15)の脚本を務めたテイラー・シェリダン初監督作品『ウインド・リバー』(7月27日公開)の公開記念トークイベントが7月19日に神楽座で開催され、ジャーナリストの池上彰が出席。「エンタテインメント映画としても十分に楽しめるだけでなく、アメリカの闇がチラホラと見えてくる」「アメリカについて研究したい人には、研究材料がいくらでもある」と本作の脚本の巧みさにうなった。

本作は、雪深いネイティブアメリカン保留地区“ウインド・リバー”で起きた少女殺人事件の謎に、心に傷を持ったハンター(ジェレミー・レナー)と新人FBI捜査官(エリザベス・オルセン)が挑む姿を描くクライムサスペンス。

池上は「サスペンスや人間ドラマ、父親の悲しみが描かれていながら、アメリカにおいてアメリカ先住民がどのような立場に置かれているかを知ってもらおうという映画。アメリカ国内でもアメリカ先住民がどんな状態になっているかを知らない人は多い」と解説。「アメリカの大統領になった人も知らないんじゃないか」と池上節を放った。

本作の舞台となる“ウインド・リバー”は、全米各地に点在するネイティブアメリカンの保留地の一つ。池上は「イギリスからアメリカに植民して来た時に、先住民はそこらじゅうにいた。その人たちを次々に追いやり、(劇中に出てくる先住民は)“ウインド・リバー”のあたりに押し込められた。農業に適したところは、みんな白人たちが取り上げた」と歴史を紐解き、「なにもないところに押しやられたんです」とネイティブアメリカンは荒れ果てた大地での生活を強いられたと語る。

いまのアメリカの闇を浮き彫りにする本作について「このような映画が作られるようになったこと自体、アメリカ現代史において画期的なこと」とコメントした池上。シェリダン監督はメキシコ国境地帯における麻薬戦争の実態に迫った『ボーダライン』では脚本を手掛けていたが、「『メキシコとの国境に壁を作れ』なんて言ったり、差別的な発言をする大統領がいる」とトランプ大統領の政治姿勢に触れながら、「『アメリカにはこんな闇があるんだよ』という作品を作ろうとする監督の問題意識は、あの大統領が生まれたからなのかなとも思う」と語っていた。

取材・文/成田 おり枝

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