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『オカンの嫁入り』の宮崎あおいが語る、乗り越えないといけない壁

インタビュー

『オカンの嫁入り』の宮崎あおいが語る、乗り越えないといけない壁

咲乃月音の人気小説を、宮崎あおいと大竹しのぶの初共演で映画化した『オカンの嫁入り』(9月4日公開)。映画は関西を舞台に、母の結婚を許せない娘と、余命1年を言い出せない母親がぶつかり合い、やがて心を通わせていく様を描いているが、娘の月子に扮した宮崎は、この作品でこれまでにない大きな試練を味わったようだ。

「ずっと悩んでいて、精神的にとても大変な1ヶ月でしたね。これまではシンプルにお芝居ができたんですけど、24歳になって、だんだんそれができなくなったというか。ただそれは、この現場に限ったことではなくて、きっと自分がそういう時期なんだろうなと今は思っているんです。頭で考えて、こう見えるかな? と思ってお芝居をしていて、役として動けていないもどかしい時期なんです」。

特に今回演じた月子は、母親のことが大好きなのに素直になれなくて、逆に酷いことを言ってしまう女の子。ちょっと複雑な設定ゆえに、その本質をつかみ切れず、「監督が言っていることと、自分のやろうとしていることがすごくかけ離れているような気がして。だから、それを合わせる作業にも時間がかかりましたね」と振り返る。

「今回、お母さんとの距離感が私の中ではすごく大事だったんです。仲の良いシーンが一切なくて、冒頭から(母親が結婚を決めたという)研二(桐谷健太)という異物が入ってきて、NOの姿勢から始まるお芝居だったので、月子がお母さんのことを大事に思っていることが表せないんじゃないか? と思って。そこは悩みましたね」。

白無垢を着た母親と月子が対峙するクライマックスでは、その苦しみはスクリーンからは想像できないほど最高潮に達したようだ。

「ふたりの間には畳一枚分ぐらいの距離があったんですが、それもあって、監督が思い描いただろう月子に近づけなくて。何回もお付き合いしてくださった大竹さんが毎回ボロボロ泣かれるんですけど、私はそこまで想いを持ち上げることができなくて、それがものすごく悔しかった。変な言い方かもしれないけど、みんなが働いているのに、私だけ働いていない感じがして。何もできない自分がすごく情けなくて、恥かしくて、本当に難しかったな~(しみじみ)」。

劇中には母娘の心を繋ぐおいしそうな料理が次々に出てくるが、宮崎と現場や監督との距離を縮めたのもまたおいしい料理だった。

「私が監督をご飯に誘ったんです。それは別にお芝居の話をするためではなく、京都に私の大好きなご飯屋さんがあって、そこで監督にも食べてもらいたかったからなんですよ。でも、その時に監督が、月子を私が思っていたようなワガママな子に描くつもりはないということがわかって。それまでは想いが揺れていたんだけど、そのご飯の時に監督を信じてついて行こうと強く思ったんです」。

宮崎が格闘するのは役柄と真剣に向き合っていることの証なのだ。その意味では、これは私的な感想だが、大河ドラマ「篤姫」(08)以降の彼女は何かから抜け出すために必死に闘っているように見える。

「(第2章の)スタートをちゃんと切りきれていないんですよ。それほど『篤姫』は大きな作品だったし、あれだけ大きな感動を味わってしまったから、自分の心の中の代償というか、乗り越えなきゃいけないものはやっぱりとても大きくて。相当頑張らなきゃいけないと思っています」

そうきっぱり言い切った宮崎あおい。『オカンの嫁入り』はさらに進化し続ける彼女の新たな闘いの序章の記録でもあるのだ。(取材・文/イソガイマサト)

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