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ベニチオ・デル・トロ、麻薬戦争のいまを問う『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』を語る

インタビュー

ベニチオ・デル・トロ、麻薬戦争のいまを問う『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』を語る

『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の主演を務めたベニチオ・デル・トロ
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の主演を務めたベニチオ・デル・トロ[c]2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

第88回アカデミー賞で3部門にノミネートされた傑作サスペンスアクション『ボーダーライン』(15)の続編 『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』が11月16日(金)より公開される。アメリカとメキシコの国境地帯(ボーダーライン)で激化する麻薬戦争のいまを、真っ向から描いた本作で、主演を務めたベニチオ・デル・トロにインタビュー。

現在もトランプ政権に揺れるアメリカだが、本作では麻薬ビジネスや不法移民問題、アメリカのテロ対策にも果敢に踏み込んでいく。デル・トロが演じたのは、かつて麻薬カルテルに家族を殺された過去を持つ暗殺者アレハンドロ。彼がCIAの特別工作員マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)と組み、麻薬カルテル間の内戦を引き起こそうと、麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐する。

前作から脚本を続投したテイラー・シェリダンは、本作でアレハンドロの人間性を深掘りしていく。兵士として虎視眈々と戦況をうかがい、任務を遂行してきたアレハンドロだが、イサベルと行動を共にするうちに、彼女の命を救いたいというジレンマに陥る。

【写真を見る】ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、美少女イザベラ・モナーの3ショット
【写真を見る】ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、美少女イザベラ・モナーの3ショット[c]2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「本作でのアレハンドロは、自分が過去に経験したことを追体験させられるという奇妙な状況に陥る。彼は自分の娘を殺された経験を持つが、今度は自分自身が少女を誘拐する、というか“誘拐事件に仕立て上げる”というミッションを課せられる。そのなかで、彼は少しずつ自分の良心を取り戻していく。そういう脚本が僕は気に入ったよ」。

もともと感情を押し殺して任務に臨むアレハンドロだけに、デル・トロにも微妙なさじ加減の感情表現が求められた。

「アレハンドロはストイックなキャラクターだから、あまり大きな表現をしないわけで。僕としては、現場にアレハンドロとして存在し、いろいろなことを経験することで、感情の機微が伝わればいいと願うしかなかった。ステファノ・ソッリマ監督とは密に話し合いながら作っていったよ。僕としてはアレハンドロのエモーショナルな旅路は、彼女を誘拐した瞬間から始まると思っている。そこから少女の命を救うべきか、それともミッションを優先すべきか、葛藤していくんだ」。

ジョシュ・ブローリン演じるマットとの関係性について、デル・トロは「プロ同士の関係で、お互いを完全にリスペクトし合っている」と捉えている。

「『目には目を』という戦い方をする2人は、同じ目的意識に突き動かされてきたが、本作では少し考え方が変わっていく。いままではマットのほうが最終的な決断を下してきたが、今回は、最終的にアレハンドロ自らが決めることになる。観ているほうは、彼らの間で緊張感が生まれたと思うかもしれないけど、百戦錬磨の2人だからこそ、今後もそこまで影響しないんじゃないかな。2人の関係性は、戦地の兵士ならではのもので、自分の命を持ってしても、相手を守ろうというくらい強い絆があると思うから」。

ブローリン自身については「とにかく一緒にいて楽しいやつだ。いままで共演してきたなかでも、もっとも好きな役者の1人だ。カメラが回っていない時はユーモアに溢れている。でも、カメラの前では、“真実”を演じられるという意味で、とても貴重な役者だと思う」と、人柄はもとより、役者としてのすばらしさも称える。

 『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は11月16日(金)より公開
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は11月16日(金)より公開[c]2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

最後に「ボーダーライン」シリーズのように、深刻な社会問題を、映画というエンタテインメントに落とし込む意義についても聞いてみた。

「たとえばウエスタンは、人間の欲望や愛情、復習などを物語にして見せてきた。自分たちが生きている時代に起きていることを、フィクションに起こすことで、人間の本質を掘り下げることができると僕は思う。20~30年代は禁酒法時代でギャングがはびこっていて、ギャング映画もたくさん作られたし。いまは禁酒法がなくなり、その問題はある程度解決したけどね。麻薬問題はすでに60年代後半から始まり、いまだ解決を見ていない。特にドラッグは、危険性の高いものから低いものまでいろいろとあるからこそ、複雑な問題が絡んでいる。僕はそういう世界観を借りてきて、映画にすることで、人間そのものを模索できると思っている」。

取材・文/山崎 伸子

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