『バード・ボックス』でチャレンジングな作品に挑んだスサンネ・ビア監督の心算とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『バード・ボックス』でチャレンジングな作品に挑んだスサンネ・ビア監督の心算とは?

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『バード・ボックス』でチャレンジングな作品に挑んだスサンネ・ビア監督の心算とは?

“それ”を見てしまった者はみんな死に至り、人類滅亡の危機に陥る。そんな、サンドラ・ブロック主演のNetflixオリジナル映画『バード・ボックス』は、とても刺激的なSFホラーだ。サンドラ演じるマロリーは母親であり、目に見えない恐怖から子ども達を守りサバイブするために闘いぬく、力強い女性。

スサンネ・ビア監督は本作について「興味深く信憑性があるストーリーに、意外性のあるキャラクターが描かれているところに惹かれました。登場人物には必ずしも好感度や共感は必要ないけれど、信憑性は必要だと思っています。マロリーはとても興味深いキャラクターで、彼女のキャラクターを描いてみたいというのがこの映画をやろうと思った理由でした。いままで男性の映画製作者が描いて来た母親像は、温かくて優しくて、包み込むように守ってくれる女性だった。でもマロリーは、攻撃的で時に厳しく、子ども達を守るためならばどんなことでもするというキャラクター。生き延びるためには子ども達に名前をつけないような母親だったからです」と語る。

ビア監督はデンマーク出身の女性監督で、交通事故によって関係が変わって行くカップルを描いた『しあわせな孤独』(02)で注目を集め、暴力と復讐の因果を描いた『未来を生きる君たちへ』(10)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。人間が備え持つ複雑さを描き出す監督として定評がある。人類を脅かす脅威に立ち向かうマロリーと、彼女を支えるトム(トレヴァンテ・ローズ)のキャラクターは、紋切り型ではなく、まるで伝統的な男女の役割が逆転しているようだ。ビア監督は2人の関係をこう評する。「サンドラとトレヴァンテの間には、強い信頼感と協働体制があった。すべてのキャストがなにも見ることができない状況で、深い信頼関係を築いていく物語なので、2人の間にも信頼だけでなく、互いを思いあう気持ちや同情が見える。ただの恋愛感情ではなく、深く意味のある関係が築けていると感じたわ」。

配信される映画は、映画館で観る映画と違い、一瞬でも集中が途切れたら視聴終了することができる。日々流れるあらゆるコンテンツの中から今作を選び、最後まで観てもらうのは相当なチャレンジである。ビア監督の心算ははっきりしていた。

「最も大きな挑戦は、見えないものを描きながら、恐怖を持続させること。そして、その挑戦を乗り越えることに挑戦しました。最初から恐怖の根源を描くつもりはなかった。人々が恐れるものはそれぞれ違う想像のもとにあるはずだから、可視化はできないわ。それに、ホラー映画やスリラーで1番盛り上がるのは、怪物なり悪役が登場する寸前でしょう?私はその盛り上がりを2時間持続させたかったのです」。

ディストピアにおけるサバイバル・スリラー『バード・ボックス』は、Netflixにて現在配信中。

取材・文/平井伊都子

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