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『カメ止め』上田慎一郎監督×崔洋一監督がトーク!「無知で無名で無謀だったからこそ無敵に撮れた」

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『カメ止め』上田慎一郎監督×崔洋一監督がトーク!「無知で無名で無謀だったからこそ無敵に撮れた」

日本映画監督協会が、映画の明日を担う新人監督に贈る“日本映画監督協会新人賞。これの第59回受賞者である上田慎一郎監督と、同協会理事長の崔洋一監督が、第32回東京国際映画祭開催中の六本木ヒルズ アリーナに登場し、トークセッションで“映画の未来”について語った。

第32回東京国際映画祭のイベントに登壇した崔洋一監督と上田慎一郎監督(左から)
第32回東京国際映画祭のイベントに登壇した崔洋一監督と上田慎一郎監督(左から)

カメラを止めるな!』の上映後、崔監督はまず「映画を作ったきっかけ」と「原動力」について質問。すると上田監督は「7本連続で短編映画を自主映画として作っていて。『映画祭で賞をもらって監督にならないと』という思いがあったんです。だから『こういう作品を撮った方が賞が獲れるかな』と下心を抱えながら撮っている時期もありました」と回顧。

「では(『カメラを止めるな!』以前も)既にベテランだった?」と崔監督が返すと、上田監督は「中学生のころからハンディカムで撮っていました。そのなかで(批判的な)いろんな言葉も浴びていて。だから『カメラを止めるな!』では、そういった言葉や下心を忘れて、やりたいことを詰め込んで撮りました」と、大ヒットとなった作品の制作秘話を話した。

そんな同作はそもそも「専門学校のワークショップで披露すること」が目的だったそう。「それが評判になれば公開になるかも?と言われていたので、公開されたらといいなとは思っていました」と、上田監督は映画館での公開が“うっすらとした野望”であったことを明かし、崔監督は「300万円という低予算で作って、そのチャンスをつかんで大成功したんですね」と感心した。

そして、イベントのテーマである「日本映画の未来」について「どう思う?」と崔監督。これに上田監督は「まず業界内で話していると、未来がないというような暗い話題が多い。でも僕は『日本映画の未来は明るい』と思って作っていきたいと思っています」と主張。「無知だからそう言えるところあるんです。『カメラを止めるな!』は、無知で無名で無謀だったからこそ無敵に撮れたのかも。ブレーキがなかったことが強みでもあるのかな」と自己分析した。

ここで、会場からは拍手が。崔監督も「極めて健康な人だよね。『無知』『無知』と言うけれど、これは大事なポイントです。いまある映画界のシステムを意識したら撮れなかったんではないかという大事なテーマを抱えていると思う。それは、映画のことを全部知っているからいい映画を撮れるのか?ということにもなる。業界に石をぶん投げているね。面白い人だ」とニンマリ。

さらに「『カメラを止めるな!』のあの監督と上田さんは重なりますか?」と作品に絡めて質問すると、上田監督は「はい。いつも主人公に重ねようとしているわけではないのですが、撮り終わると自分だと思うことが多いですね」と回答。「映画のなかのプロデューサーは、片手で握手しながらも、片手ではぶん殴りたくなるようなキャラクターに描かれていますが、それは現実でも?」と突っ込んだ質問もすると、「誇張して描いてますけど」と上田監督。

これには現実でも思う当たる節があるようで、崔監督が「誇張じゃないよ!」といい返すと「抑えめに描いてます(笑)。僕はそういう人と出会ったら妻に話すんですよ。それで、話しているうちに妻が笑うんです。だからこういう作り方になっているのかなと思いますね」と、タジタジになりながらも、『カメラを止めるな!』に出てくるコミカルなキャラクター、プロデューサーとの関係について説明していた。

取材・文/平井 あゆみ


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