「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

インタビュー

「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

国内興行ランキングで2週連続1位となり、その後もランキング上位をキープして話題を呼んでいる映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)。東日本大震災時の福島第一原発事故を描く本作では、死を覚悟して現場に残った作業員たちの真実が描かれ、大いに反響を呼んでいる。そこで、本作のメガホンをとった若松節朗監督と、事故後に福島第一原発(イチエフ)で作業員として働いた体験談を綴った漫画「いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~」の竜田一人の対談を実施、互いの作品についてたっぷりと意見交換をしてもらった。今回はその後編をお届けする。

『Fukushima 50』をめぐる特別対談、後半も白熱!
『Fukushima 50』をめぐる特別対談、後半も白熱! [c]2020『Fukushima 50』製作委員会

『Fukushima 50』のタイトルは、事故の対処に当たった作業員たちが世界のメディアから“Fukushima 50”(フクシマフィフティ)と呼ばれたことにちなむ。主演の佐藤浩市をはじめ、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、佐野史郎、安田成美といった演技派俳優たちがこぞって参加し、話題となっている。また、第34回MANGA OPENの大賞を受賞した「いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~」は、東日本大震災を機に会社を辞め、福島第一原子力発電所で作業員として従事した竜田自身の経験をもとに、克明なタッチで描くルポルタージュ漫画となっている。

「廃炉作業はこの先も続くから、彼らはヒーローにはなれない」(若松監督)

『Fukushima 50』のメガホンをとった若松監督
『Fukushima 50』のメガホンをとった若松監督撮影/山崎伸子

――実際にイチエフで働いていた竜田さんには、『Fukushima 50』の登場人物はどう映りましたか?

竜田「事故の時、どういう人たちが頑張ってくれていたのかがよくわかりました。作業員にしても(渡辺謙が演じた)吉田所長にしても、結局は普通の人間なので、そういう人たちが必死に頑張っていたことが伝わればいいなと思いました。世界中から“Fukushima 50”とヒーローみたいに言われているけど、実は普通のおじさんたちなので」

若松「確かに、映画を観た人たちのなかには『ヒーローのように描かれている』という人たちもいます。原発問題がすべて収まっているのならヒーローと言い切っていいのかもしれないけど、この先もずっと続いていく。だから、彼らはヒーローにはなれないんです」

竜田「確かに、その辺りのジレンマについても考えてほしいですね」

――竜田さんは、震災後にイチエフで働き始められましたが、実際に働いてる方は、ほとんど地元の方だそうですね。

竜田「地元の方々は、くさいかもしれないけど『俺たちがなんとかしてやる』みたいな使命感があるんだと思います。また、原発にお世話になったから、最後まで看取ってやろうという人もいれば、単純にお金が稼げるから行くという人もいます。だからイチエフは、世間で言われているほど地元で嫌われている存在ではないです。その辺りの空気感の違いは、自分で行ってみて初めてわかりました」

1号機原子炉建屋の爆発シーンに衝撃
1号機原子炉建屋の爆発シーンに衝撃[c]2020『Fukushima 50』製作委員会

若松「あそこで働く人がいなければ事故後の処理もできないし、廃炉の作業をしていく人も必要になりますし、その人たちのお世話をする人もいなければいけない。これからも大変ですよね」


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