『マメシバ一郎3D』で中年ニートを演じる佐藤二朗「せっかく自分が演じるなら攻めたいと思った」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『マメシバ一郎3D』で中年ニートを演じる佐藤二朗「せっかく自分が演じるなら攻めたいと思った」

インタビュー

『マメシバ一郎3D』で中年ニートを演じる佐藤二朗「せっかく自分が演じるなら攻めたいと思った」

アラフォーでニートの芝二郎が、可愛いマメシバとの出会いを通して、外の世界へと踏み出していく姿を描く映画&テレビシリーズ『幼獣マメシバ』。シリーズ最新作となる『マメシバ一郎3D』が2月4日(土)より公開される。口だけは達者、ひねくれ者の二郎役をユーモアたっぷりに演じるのは、個性派俳優の佐藤二朗。まさかの3D映画となった本作を「手につかめるようなところまで飛び出してくるので、お犬ちゃんの可愛さは倍増。笑いも飛び出す3Dになっています!」と自信をもってアピール。一度見たら、もうやみつき。芝二郎という愛すべきキャラクターの誕生秘話から役者道の原点、熱い思いをたっぷりと聞いた。

芝二郎役は、佐藤二朗の当て書きで作られたキャラクターだという。「以前から僕の芝居を見ていた脚本の永森裕二さんが、『佐藤二朗の魅力を最大限に引き出すものをやりたい』と思っていてくれたようで。この役は完全な僕への当て書き。もし僕のスケジュールが合わなかったら、この企画自体をやめようと、それくらいの思い入れで作ってくれたキャラクターなんです」。

初めて脚本を読んだ印象は?「中年ニートって、俳優がやってみたいと思う面白い役柄だし、セリフがとにかく面白くて。そのまま読むだけでも面白いので、最初は特別な役作りを考えていなかった。でも、主役なんて滅多にないことだし、せっかく僕がこの役をやるんだったら、ちょっと攻めてみようと。語尾に『ウン、ウン』とか付けて、癖のある役にしようと思って」。

様々な作品に登場し、どんな役どころでも強烈な印象を残す佐藤。役作りへのこだわりを聞いた。「見ている人が“いるかも”と思えることが大事。見ている人が『こんなヤツ、いない』と思った瞬間、マッハの速度で引いちゃうと思う。『どこかにいるかも』と思ってもらえる、その微妙なところに面白さが詰まっている。そのラインって本当に数cmとかしかなくて。その下に行ってしまうとオーソドックスでつまらないし、上に振り切ってしまうと、『いるわけない』となってしまう。二郎役はそういった意味でも、ギャンブルをしたくなる役だったし、賭けでした」。

前作の映画『幼獣マメシバ』(09)では、国境を越えてアルゼンチンまで行った二郎。本作の冒頭では、また引きこもり生活に戻っている。立ち止まりながらの彼の成長にどんな印象を持ったのだろうか。「永森さんと話したのは、人の成長って右肩上がりの直線じゃなくて、同じところをぐるぐる回る円のイメージだと。蚊取り線香みたいにね。同じところを回るんだけど、その2周目が来た時、1周目よりは少しだけ外側を回って大きくなっていると良いなと。主人公が一つの作品の最初と最後でガラッと成長しちゃうのって、『ホントかよ!』って思っちゃうんです(笑)。二郎は殻を破れたというよりも、ちょっとだけヒビを入れられたかなというところ。5mmでも3mmでも前を向いたっていう方が、僕は共感が持てると思う」。

マメシバとの出会いから、社会に踏み出す勇気をもらう二郎だが、自身が役者道に踏み出すきっかけとなった出来事とは?「小学校4年生の時に学習発表会があって、『お芋はこうして生まれました』というタイトルの劇をしたんです。僕は芋を引率する猫の先生という役で、物語の8割くらいをしゃべり続けるんだけど(笑)。父兄の方々が異常なくらいに笑ってくれて。で、『何だろうこれは!楽しい!』と。それからは間違いなく自分は役者になるんだと思っていました」。

劇団「自転車キンクリート」の鈴木裕美、その芝居を見てドラマに起用してくれた堤幸彦など、感謝という言葉では言い尽くせない、出会いの連鎖こそ役者を続けてこられた最大の理由と語る。改めて感じる役者の魅力とは。「役者ってね、ぶっちゃけ、なくても良い職業だと思うんですよ。それに俳優を30年やってきた人が、子供や動物に食われちゃうことだってある世界。これは松尾スズキさんが言ったことで、うまいこと言うなあと思ったんだけど、“彼岸”っていう言葉を使ったんだよね。岸の向こう。なくても良いし、動物に食われちゃうこともある職業だけど、だからこそ誰もが届かない“彼岸”にいたいと思う。僕は他のことは何もできない、ただのおっさんで良いけど、お芝居に関しては特別。“彼岸にいる人”でありたいですね」。

チャレンジしてみたい役柄には「血も涙もないような役、救いようもない役をやってみたい」と答えてくれた。佐藤二朗の果てしなき役者道に何が待っているのか、この先が本当に楽しみでならない。まずは、芝二郎の心の旅路を描いた本作で、その魅力を堪能してみてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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