現代人が抱える漠然とした恐怖と不安を描いた『テイク・シェルター』のリアリティに迫る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
現代人が抱える漠然とした恐怖と不安を描いた『テイク・シェルター』のリアリティに迫る

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現代人が抱える漠然とした恐怖と不安を描いた『テイク・シェルター』のリアリティに迫る

マイケル・シャノン主演、異常気象襲来に錯乱する男の恐怖を描くサイコスリラー『テイク・シェルター』(3月24日公開)は、監督が抱えていた、ふとした思いから生まれ、徹底したこだわりで製作。世界中からの絶賛を受け、33映画祭で30部門ノミネートを果たした。

はっきりとはわからないけれど、得体の知れない恐怖や不安がつきまとう。現代人の誰もが一度はこんな感覚を経験したことがあるのではないだろうか? 特に、一年前の東日本大震災以降、常に見えない恐怖と不安を抱き、突然降りかかる災難にどう対応すべきか、日々考える人も少なくはないはずだ。

本作では、まさにそんな日本人の姿を投影した映画とも言えるだろう。大災害発生の悪夢に悩まされ、それが現実になると信じ込んだ主人公が、周囲の不信感もよそに、避難用シェルター作りに没頭するというこの物語を“他人事”と割り切れる人はそう多くはないだろう。幸せな日常が、突如として壊される不安と、大切な家族を失う恐怖に怯え、うろたえ、常軌を逸した行動に走る主人公の姿は、かなりのリアリティをもって今の日本人の目に映ることだろう。

本作は、監督・脚本を担当したジェフ・ニコルズ自身の「プライベートも仕事も順調で幸せにも関わらず、何か悪いことが起こるんじゃないか?」という、漠然とした不安がきっかけで構想された。誰もが一度は抱えたことがあるであろう、そんな思いを映画化するに当たり、監督が最大限にこだわったのはリアリティの追及だった。なかでも、キャスティングにおいて、聴覚障害を持つ娘ハンナ役に、実際の聴覚障害者であるトーヴァ・スチュワートを抜擢したことは最大のこだわりと言えるだろう。通学途中に本作プロデューサーにスカウトされたというトーヴァ・スチュワートは、全くの演技未経験者とはいえ、その聡明さと勘の良さですぐに現場に溶け込み、本作において重要な存在感を発揮。主人公カーティスに怪演の名手マイケル・シャノン、その妻サマンサに本年度アカデミー賞にもノミネートの実力派ジェシカ・チャステインをキャスティングしたことは、小さな町の平凡な一家に突如襲いかかる脅威をより身近なものとして描くうえで、ベストな選択といえる。さらに、『アバター』(09)、『2012』(09)など数々のハリウッド大作でVFXを手掛けてきたストラウス兄弟が製作総指揮を務め、悪夢とも現実とも言い難い絶妙な世界観の構築により、リアリティを引き立てることに成功している。本作を見れば、あなたは決して傍観者ではいられなくなるだろう。【Movie Walker】

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