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才色兼備の女性監督サラ・ポーリーが描く男性の悲哀がリアルすぎる

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才色兼備の女性監督サラ・ポーリーが描く男性の悲哀がリアルすぎる

朝は一緒に目覚め、ベッドの中でひとしきり冗談を言い合い、時々は仕事中の相手にちょっかいを出したりする。恋人時代の情熱やときめきは薄れつつも、何一つ不満もなく穏やかな愛情を育む毎日が続くと信じてしまうのは、幸せな結婚生活を送っている誰もが思うことだろう。しかし、自分の知らないところでパートナーが新たな恋に出合い、自分と他の異性の間で揺れ動いていたら?

チキン料理のレシピ研究家のルーという夫がいながら、情熱的な眼差しを送ってくる青年ダニエルにも惹かれてしまう女性マーゴの姿を繊細なタッチで描いた8月11日(金)公開の『テイク・ディス・ワルツ』は、『マリリン 7日間の恋』(11)で第84回アカデミー主演女優賞候補にもなったマーゴ役のミシェル・ウィリアムズの自然な演技や、彼女と危うい関係を築いていくダニエルを演じたルーク・カービーのセクシー&ミステリアスな魅力が話題を呼んでいるラブストーリー。なかでも『グリーン・ホーネット』(11)に主演したセス・ローゲン演じるマーゴの夫ルーが体現する、冴えない男性の悲哀が光る作品だ。

自宅で原稿書きの仕事という似通った仕事に就き、ふたりにとっては愛情表現ながら、他人が聞けば眉をひそめること間違いなしの罵詈雑言を笑顔でぶつけあう。そんな毎日に安心しきり、マーゴの変化に全く気付かないどころか、結婚記念日のディナーの席で「会話がしたい」と望む妻に「君のことなら、何でも知ってるのに」と返してしまうほどに鈍感なルー。だが、ダニエルが自分の前から姿を消したことで、感情が爆発したマーゴから、ダニエルとの関係を聞かされた時に彼がつぶやくあるセリフ、さらに永遠だと思っていた幸せが失われていくかもしれないことに落胆するルーの心情に共感してしまう男性も少なくないはずだ。

そんなルーという等身大のキャラクターを生み出したのが、アトム・エゴヤン監督作『スウィート ヒアアフター』(97)の主演女優としても知られるサラ・ポーリー監督。1979年生まれの彼女は、監督デビュー作『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』(06)でアカデミー賞2部門ノミネートなど、世界各国で高い評価を得ている才媛。4歳から子役として女優活動を始め、華やかな世界で長きに渡って活躍しながらも、ごく平凡に生きている人々の等身大の姿を温かくも優しい視点で描くことができるのは、彼女がハリウッドを離れ、地元のカナダで地に足の着いた生活を送りながら映画に向き合っていることと決して無縁ではないだろう。

本作では脚本・監督・製作と三足のわらじを履いているサラ・ポーリー。彼女の持ち味でもある、繊細かつ深みのある人物描写に裏打ちされた奥深い物語は、恋の先にある様々な現実を教えてくれることだろう。【トライワークス】

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