ニコール・キッドマン、『The Paperboy』で2度目のオスカーなるか?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ニコール・キッドマン、『The Paperboy』で2度目のオスカーなるか?

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ニコール・キッドマン、『The Paperboy』で2度目のオスカーなるか?

『めぐりあう時間たち』(02)では、付け鼻をして第75回アカデミー主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンだが、新作『The Paperboy』(全米公開中、日本2013年公開予定)で見せる役者魂は半端じゃない!

第65回カンヌ国際映画祭では、放尿シーンや過激な性的描写ばかりに話題が集まったニコールが、リー・ダニエルズ監督とデヴィッド・オイェロウォと共にニューヨーク映画祭で登壇し、役作りについて語った。

『プレシャス』(09)で、第82回アカデミー脚色賞、そしてモニークを助演女優賞受賞に導いたリー監督が今回選んだのは、ピート・デクスター著作の同タイトル小説を脚色したスリラーサスペンスで、ピートと巨匠ペドロ・アルモドバル監督(製作)が約10年間温めてきた企画だ。

第84回アカデミー作品賞などにノミネートされた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(11)さながら、黒人が虐げられていた環境で幼少時代を過ごしたことから、「私は、自分が全く経験していないことは映画にできないので、この作品も両親や親戚、近所の人々が体験したことを見てきた自らの経験が基本だ」と語るリー監督。今作では、黒人が不当に扱われていた1960年代のフロリダという時代背景を十分に生かしながら、不当な有罪判決を受けた可能性のある死刑囚ヒラリー(ジョン・キューザック)のフィアンセ、シャーロット(ニコール)と、シャーロットから調査依頼を受けた地元新聞記者ウォード(マシュー・マコノヒー)とヤードリー(デヴィッド)の手伝いをすることになったウォードの弟ジャック(ザック・エフロン)を中心に、セクシャルで悲劇的な人間ドラマが展開する。

本作で、付けまつげに分厚い化粧、ハミ尻、ハミ胸な女性シャーロットを演じたニコールは、「リー監督は、とにかく肉付きの良い女性であることにこだわったから(笑)、太もももムチムチ、スカートからはみ出すお尻も必要だったの。とにかく予算がなかったから、監督からメイクも自分でやるように言われていたし、衣装はビンテージショップなんかに行って、自分で探してきた5ドル程度の安物ばかりよ(笑)。靴フェチのリー監督は、特に靴にはこだわりがあったようだけれど、とにかく私が用意するものは全部OKだった。予算がないのも、時には良いことね」と、会場を笑わせた。

ジャックに愛されながら、狂人ともいえるヒラリーとの生活を選んだシャーロットという女性の役作りについては、「ああいう感じの女性に5人ほど会って、話を聞いたの。『私には無理かも』って言ったら、彼女たちが『できるわよ!』って肩を押してくれたわ」「私は彼女をクレイジーだと思ってないの。世の中にはクレイジーな人なんてそんなにいないものよ。彼女はとてもダメージを受けている女性で、刑務所から出て、外の世界で暮らすことを恐れているヒラリーに対して、ある種、子犬みたいに従順な一方で、彼を救えるのは自分だけだって思っている。そこには、無償の愛があるの。それが運命だっていうのはとても悲しいことだけれど、彼女にたくさん同情できる部分があったからこそ、南部なまり(英語)のあんな格好のシャーロットを演じることができたのよ。とにかく感覚に任せて、自分の既成概念を解き放って、とても自由に演じることができたわ。もちろん、監督とは話をしたけれど、私が演じてみて、気に入ってくれたらOKみたいにね。こんなに自由にさせてくれる監督は、滅多にいないわよ」と、リー監督をベタほめした。

一方でリー監督は、役者への要求が厳しいようだ。「映画は監督のもの」と断言するニコールは、ほぼ全ての厳しい要求を呑んだそうが、1つだけ断ったことがあるという。「監督のビジョンを壊す気はないの。ある程度、自分の意見は言うけれど、最終的には言われたことは何でもやるわ。でも、シャーロットが、黒人のことをニグロって呼ぶセリフは、無償の愛の持ち主であるシャーロットという人物が発する言葉としては必要がないと思ったの。それに私には息子がいるから、それは断った」のだそうだ。

それについて、リー監督は「ニコールは、1日目にはランドリーでのジョンとの過激なセックスシーン、2日目にはザックに実際におしっこをかけるシーン、そして3日目にはテレパシーを感じるセックスシーンを見事に演じてくれた。だから文句はないよ」と、ニコールを絶賛した。

舞台に登壇したニコールは、ボトックス使用を認めたとはいえ、45歳とは思えない人形のような美しさだ。同作では、年上の女性シャーロットに恋心抱き、セックスシーンを演じたザックが尿をかけられても、役どころさながらに、10歳も年上のニコールにぞっこんになってしまったのも納得だ。

そんなニコールが、今作では口を半開きにし、股を開いてストッキングを破り捨ててマスターベーションをしたり、放尿したりと、その度胸とチャレンジ精神には度肝を抜かれるばかりだが、「この役をやるのに、恐怖心がなかったと言ったら嘘になるわ。だからこそやったのよ。自分の殻を打ち破るためにも、これからもそういう役に挑戦していきたい」と貫禄たっぷりに語ってくれた。

構成員の94%が白人、77%が男性で、さらに平均年齢が62歳というアカデミー会員が、どこまでシャーロットに感情移入してくれるのかは定かではないが、2度目のオスカーを狙えること間違いなしのニコールの演技はまさに必見だ。たと賞を獲れなかったとしても、役者魂には大きな拍手を贈りたい。【取材・文 NY在住/JUNKO】

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