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時代はロックンロール!『Not Fade Away』がニューヨーク映画祭で炸裂

映画ニュース 2012/10/14 10:00

時代はロックンロール!『Not Fade Away』がニューヨーク映画祭で炸裂

ローリング・ストーンズ結成50周年、ビートルズとボブ・ディランのレコードデビュー50周年、そしてジェイムズ・ボンド007シリーズ50周年と、映画、音楽業界にとって大きな節目となる今年、ロックンロール全盛期の1960年代を描いた『Not Fade Away』(全米12月公開)が、第50回ニューヨーク映画祭のセンターピースの作品に選ばれ、デヴィッド・チェイス監督やプロデューサー、音楽監修を務めたブルース・スプリングスティーンの現役ギタリスト、スティーヴン・ヴァン・ザント、そして、出演者のジョン・マガロ、ベラ・ヒースコート、ジャック・ヒューストン、ウィル・ブリル、ブラム・バカレラが登壇した。

ロックンロールがアメリカを席巻した1960年代のニュージャージー郊外を舞台に、ミドルクラスの若者たちがバンドデビューを夢見て駆け抜ける姿を描いた同作。メガホンを取ったのは米人気テレビシリーズ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のデヴィッド・チェイス監督だ。

ティーンエイジャーをニューヨークで過ごし、ドラマーだったというデイヴィッド監督が、ドラマーのダグラス(ジョン)を主役にした同作について、「自伝ではないですが、この時代の音楽は今でもアメリカで根強い人気を保っていることを考えても、本当に良い時代だったと思います。『音楽が全て』と言っても過言ではないほど、音楽の影響力は大きく、ファッション、映画、全てのアートとつながっていたんです。『ローリング・ストーンズ』誌などはまさにその例です。一方で毎日めまぐるしく変化していくという意味で、とても特異な時代だったとも言えます。とにかくロックンロールが大好きで、その思いを初メガホンで作品にできたことを本当に嬉しく思っています」と、67歳にしてアメリカンドリームを叶えた喜びを語った。

主役のバンドメンバーとして同作に出演する若手俳優たちにとって、1960年代はまさに親世代が青春を過ごしてきた時代だ。ジョンが「残念ながら、僕たちはこの時代は子供だったけれど、親が車の中で聴いていたのを覚えているし、大きな影響を受けてきた。それに、今でもアメリカを代表する音楽と言っても過言ではないくらい人気がある。だから、時代を越えた、ユニバーサルなものだと考えているよ」「でも、僕たちは全く楽器が弾けなかったから、一からのレッスンだったんだ。デヴィッド監督が最初の頃はバンドに入ってきてドラムを叩いたりしていたけど、すごく申し訳ない気がした」と語れば、ジャックが「役者の醍醐味は、今までチャレンジしたことがないことができることだし、3ヶ月間ずっと一緒にいたから、音楽を通じて僕たちはとても仲良くなったんだ。僕たちはこの映画を派手なものにしたくはなかった。ミドルクラスの普通の家の子供たちが、時にはお互いに良いことも悪いことも影響を与えたり、受けながら生きているという感じが大事だと思っていた。だから、撮影の合間に出かけたり、いろんな話をすることで友達になれたことは、演じるうえでとても助けになったよ。映画の撮影でそんな経験はあまりできないことだけど、大事なことだね。とても良い経験になった」と語り、皆が大きくうなずいて賛同する姿が印象的だった。

この素人集団を立派なミュージシャンに成長させたのは、9月にブルース・スプリングスティーン生誕の地であるニュージャージで、3時間以上の精力的なコンサートをこなしたばかりのギタリスト、スティーヴン・ヴァン・ザントだ。「僕は最初にデヴィッド監督に、『音楽ができる役者を集めてくれ』ってお願いしたんだよ。だけど、彼から『そんなの忘れてた』って言われたんだ(笑)。確かに演技ありき、なのは当然だけど、自分も音楽がわかるのに10年以上かかったんだから、音楽の経験のない人たちを3ヶ月でミュージシャンにするのは、至難の業だったよ。それでブートキャンプを決行したんだけど、彼らの集中力と熱心さには本当に感心した。最初はどうなることかと思ったけれど、今なら、この場で演奏しろって言われたら、すぐできるまでに成長したんだから。ジョンやジャックは歌も歌えるんだ。演じることと音楽は共通するのかもしれないね。素晴らしいよ」と、語る61歳の現役ミュージシャンは、これまでにない経験によって、若手俳優から大きなエネルギーをもらったようだ。

1960年代の良き時代のファッション、音楽もさることながら、浮き足立った息子ダグラスを制する、この時代にありがちな気難しい父親を演じる「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のジェイムズ・ガンドルフィーニの渋い演技も、取り残され感があってなかなかのものだ。

そして、青春映画で忘れてはならないラブストーリーで、ダグラスの恋人役を演じたベラ・ヒースコートのファッションと透明感あふれる美しさにも要注目だ。ベラはティム・バートン監督『ダーク・シャドウ』(12)で、ジョニー・デップ扮するコリンズが過去に心から愛した唯一の女性ジョゼットを演じた期待の新人で、今後の活躍が楽しみな女優でもある。【取材・文 NY在住/JUNKO】