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ニューヨーク映画祭閉幕!デンゼル・ワシントン、2度目のアカデミー主演男優賞なるか!?

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ニューヨーク映画祭閉幕!デンゼル・ワシントン、2度目のアカデミー主演男優賞なるか!?

オスカー受賞監督アン・リーによる『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(日本2013年1月公開)で始まった第50回ニューヨーク映画祭は、同じくオスカーを手にしているロバート・ゼメキス監督作で、今回がワールドプレミアとなった『フライト』(全米11月2日、日本2013年3月公開)で幕を閉じた。

同作は『フォレスト・ガンプ 一期一会』(94)で第67回アカデミー作品賞及び監督賞を受賞したロバート・ゼメキス監督が、『キャスト・アウェイ』(00)から実に12年ぶりに手がけたライブアクションスリラーで、監督、脚本家のジョン・ゲイティンズ、ドン・チードル、『ザ・ファイター』(10)で第83回アカデミー助演女優賞に輝いたメリッサ・レオ、ブルース・グリーンウッド、ジョン・グッドマンが登壇した。主役のデンゼル・ワシントンは体調不良で欠席かと思われたが、さすがプロ。会見途中で姿を現し、会場を沸かせた。

デンゼルが扮するのは、空軍あがりの民間パイロット、ウィテカー機長。臨機応変な対応と操縦技術は抜群だが、アルコール中毒症を隠しながら何の問題もなく仕事を続けているウィテカーは、朝9時のフライトの前日もアルコールやセックス、コカインに溺れていた。運悪く、悪天候とタービュランスに遭遇するも無事に脱出したのも束の間、機体に故障が発生。神がかりな操縦技術を称えられる一方で、操縦中の飲酒や中毒症に疑いがかかり、物語は思わぬ方向に展開していくというストーリーだ。操縦士ウィテカーを通じて、人間のあり方が問われるスピリチュアルなドラマでもある一方、飛行機が墜落するまでの最初の約30分は手に汗握る迫力で、最新のVFX技術を取り入れ、ロバート監督ならではのエンターテインメント性の高い作品に仕上がっている。

『リアル・スティール』(11)で製作を手がけたロバート監督と、脚本を手がけたジョンは、同作でタッグを組んでいるが、ロバート監督はジョンが「2009年に実際に起きた事件に似ていると思う人もいるかもしれないが、執筆を始めたのは1999年だった。だけど、その時は40ページだけ書いて止めていたんだ。最初からこの結論を考えていたわけではないが、その後、実際にパイロットや関係者に会ったりして、いろんなリサーチを重ね、試行錯誤を繰り返した結果、最終的にこの脚本ができあがった」と語り、素晴らしい脚本に魅せられて、メガホンを取ることを決めたという。

「実際に私もパイロットや関係者に会ったりして、映像化することが現実的かどうかも考えたし、ジョンとはとにかく色々話し合いました。私も悪天候の中で飛行機に乗ったりしますが、決行するかどうかもパイロットの決定ですし、プレッシャーは相当なものだと思います。実際に軍を経て民間機のパイロットになっている人も多いですが、トラウマからアルコール中毒症に悩まされている実態があることも知りました。この作品を見ると、まるでアルコール中毒の人たちが操縦をしていると勘違いしてしまうかもしれませんが、夏に全米のパイロットや組合関係者に試写を見せた反応は、『この作品を作ってくれてありがとう』という肯定的なものばかりでした。あくまで一人のパイロットが主役の、人間のドラマなんです。ウィテカーはアルコール中毒ですが、それは周囲の人間や環境とつながることのできない、人間的に欠落したものからくる、彼の本質的な問題からくるもので、そういうキャラクターにも惹かれました」と、自信をのぞかせた。

しかし忘れてはならないのは、やはりデンゼルの存在だ。ロバート監督が、「デンゼルの演技を見ている毎日は、本当に楽しかった」と語るとおり、ハリウッド映画ではあるものの、黒人が主役、しかも45日間という短い撮影期間でこれだけの大作が完成したのは、第62回アカデミー賞で『グローリー』(89)で助演男優賞を受賞し、第74回アカデミー賞では『トレーニングデイ』(01)でシドニー・ポワチエに続いてアフリカ系アメリカ人では2人目となる主演男優賞を受賞した、デンゼルの迫真の演技があったからこそと言えるだろう。既に、第85回アカデミー主演男優賞のノミネートが確実視されているほどだ。そのデンゼルは共演者に気を遣ったのか、一番端に座り、「とにかく脚本が素晴らしかったし、この役を演じてみたいと思ったんだ。それにロバートがメガホンを取りたがっているってエージェントから聞いたから。この2つが大きな理由だね。大変だったったことは、何だろう。今、ここにいることかな(笑)。操縦の勉強は全くしてないし、パイロットには会ってないよ。フライトシミュレーターから指導を受けたくらいだよ。監督はどうだった?」とあくまで謙虚だ。

同作でウィテカーを弁護する代理人に扮しているドンが、『青いドレスの女』(95)に続いてデンゼルとの2度目の共演について問われ、「役どころも内容も全然違うけれど、お互いがお互いを守っているというか、人を守ることで自分を守っているという点は似ていると思う」とまじめに答えると、デンゼルは「僕は、『青いドレスの女』の撮影の1日目に、『ああ、間違った役を引き受けちゃった』と思ったよ(笑)。彼が演じた役(すぐ切れるモラルのない男)をやりたかったね。『トレーニング・デイ』の時は、すぐにこれだって思ったんだけどね」と、またもや相手を立てるジョークで会場を沸かせた。

かつてはノミネートの常連だったデンゼルも、最近ではノミネート自体がご無沙汰だが、複雑なキャラクターと特撮(デジタルで300ショット)という贅沢な組み合わせが楽しめる同作で、2度目の主演男優賞受賞を果たせるのか!?ロバート監督作『フォレスト・ガンプ 一期一会』では、トム・ハンクスがアカデミー主演男優賞を受賞し、『キャスト・アウェイ』でもトムは同賞にノミネートされているとあって大いに期待できそうだ。【取材・文 NY在住/JUNKO】

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