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「井筒監督にほめられたい!」桐谷健太が明かす監督への思いと役者道10年の軌跡

インタビュー

「井筒監督にほめられたい!」桐谷健太が明かす監督への思いと役者道10年の軌跡

今、最も勢いのある俳優と聞かれて、桐谷健太を思い浮かべる人も多いはずだ。ドラマや映画など出演作が相次ぎ、常に「もっと彼を見てみたい!」と、深く濃い余韻を残す、何とも面白い俳優だ。映画初出演は井筒和幸監督の『ゲロッパ!』(03)だった。役者デビュー10周年という節目を迎えた今年、『黄金を抱いて翔べ』(11月3日公開)で、井筒監督との嬉しい再会を果たした。「井筒さんにほめられたい」と笑う彼に、監督への思い、そして役者としての10年の軌跡を尋ねた。

高村薫の日本推理サスペンス大賞受賞作を原作に、6人の男たちが金塊強奪に挑む姿を描く『黄金を抱いて翔べ』。脚本を読んだ時の感想を「最初に読んだ時は、難しいなと思ったんです。どうなるんやろうって。それぞれに過去があって、そこに工作員や過激派が入ってきたりね。井筒さんがどう料理するのか楽しみでもありました。井筒さんがやるからには、パンチが効いているのは間違いないんで(笑)」。

『ゲロッパ!』『パッチギ!』(05)、『パッチギ!LOVE&PEACE』(07)と、彼の成長を見守り続けているのが井筒監督だ。「井筒さんに呼んでもらった限りは、絶対に良いものにしたいし、最高のものにしたいと思った」と語るが、役者としての成長を自身ではどう感じているのだろうか。

「最近、気合いを入れることと同時に、肩の力を抜くことも覚えたんです。『アウトレイジ ビヨンド』(公開中)の時は、『この世界でテッペン取ってやる』という役柄の気持ちさえ持っていたら、後は自由でええわと思って、何も考えずに現場に行って。そんなの初めてで!こんなやり方もあるんだと思ったら、刀が一つ増えたような気がしたんです。『こっちにも刀がある』と思ったら、どんどん新しいことができるなって。『黄金を抱いて翔べ』では、役を作り込んで現場に行った。そうやって、アプローチを毎回変えているんです」。

役者道10年の間には、様々な変化があったようで、「毎回変わっていけるから、役者は面白い。根性や度胸も上がってきている気がする」と充実の表情を見せた。「それにね、世界って、自分が作っているから面白いんですよね。自分の脳みそが作っているから、自分の考え方が変われば全部変わる。面白いことや楽しいことは、自分で作っていけるもんなんやなって思うんです」。

ポジティブな言葉が飛び出すが、それも培ってきたものだという。「培ってきたからこそ、それが自信に変わったんです。最初はね、根拠がなくポジティブな時もあったんです。でも、それって何かの弾みでバチーンと消えるもの。そうではなくて、一つ、一つ、自分で積み重ねていったものは、なかなか崩れないです。ここまで越えたから、もっと上に行ってやろうと、今は冷静に考えることができます。夢見がちでなくなったのは、ちょっと寂しいことでもありますけどね(笑)」。

5歳の頃から役者を目指してきた。夢を現実のものにした今を「覚めない夢の中にいるようなもの」と表現した。「役者って、自分も夢を見ることができるし、見ている人にも夢を与えられる仕事。外側から役者の仕事を見ていた時は、何とかその中に入ろうと頑張っていた。今度は、そこを広げてもっと面白くしていきたい。たとえば、しっかりやっていけば、世界にだって行けるんじゃないかと思うんです」。

井筒監督からも嬉しい言葉をもらったと微笑んだ。「言葉は内緒ですが、すごい嬉しい言葉をもらったんです。これからに続いていくような言葉を。やってきたことが間違ってないねんなと思ったし、もっと、もっとやっていこうって思った。井筒さんの作品に入る時は、ほめられたいっていう気持ちが強いんです。子供心で、よしよしされたい(笑)。『ようやったなあ』って言われたいし、だからこそ今回、オールアップの時に嬉しい言葉をかけてもらって、もう半泣きになりましたよ」。

道のりを見届けてくれている監督からの言葉は、どんなに大きな力になったことだろう。一つ、一つの積み重ねを自信に変える。そんな彼の熱く、真っ直ぐな歩み方こそ、人々を惹き付けてやまない理由だろう。まずは本作で、変化を楽しむ男、桐谷健太を堪能してほしい!【取材・文/成田おり枝】

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