中村義洋監督、濱田岳のドギマギラブシーンで「もっと行け!」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
中村義洋監督、濱田岳のドギマギラブシーンで「もっと行け!」

インタビュー

中村義洋監督、濱田岳のドギマギラブシーンで「もっと行け!」

『アヒルと鴨のコインロッカー』(07)や『ゴールデンスランバー』(10)など、伊坂幸太郎原作の映画化作品でおなじみの中村義洋監督と濱田岳の名コンビ。今回は第1回パピルス新人賞に輝いた久保寺健彦の小説を映像化した『みなさん、さようなら』(1月26日 公開)で5度目のタッグを組んだ。本作で濱田は、何と1312歳から30歳までを演じている。中村監督にインタビューし、本作の見どころと、濱田との撮影秘話を語ってもらった。

主人公は、ある事件が原因で、団地というエリアから出られなくなった青年・渡会悟(濱田岳)。「一生、団地の中で生きていく」と決意した悟の青春がユーモラスな視点で綴られている。中村監督は本作に惹かれた理由をこう述べる。「僕は、『キャスト・アウェイ』(00)みたいに、特殊な人間関係とかシチュエーションのなかで孤立している人を描きたいんです。そういうものに惹かれますね」。

今回の悟役は濱田岳にしか成し得ないものだったと話す中村監督。「本作は、一年毎に物語を追っていくというもので、他の俳優だと中3までは子役で、大人になってからはこの人で、といったことになってしまう。でも、岳ならいけるんじゃないかと思ったんです。それでメイク部と相談して、『金八先生』の頃の岳の写真やビデオを見て、今とどう違うかってことを追求していったんです。メイクで陰影をつけ、髪型も変えていきました」。

勝手知ったる仲の中村監督と濱田は、毎回コラボレーションを楽しんできた。「俳優と監督って業種が違うから、それを踏まえて言えば、岳に対しては尊敬しかないんです。なぜなら、岳と仕事をすると、予想のつかないものが出てきたりするから。まず脚本を書き、岳に決まったら、あて書きふうに直してやってもらうでしょ。一緒にやると、笑いのツボやセンス、感覚が自分と似ている感じを共有するわけです。さらに、そこから超えるものを見せてくれるから、ありがたいですね」。

中村監督はその例として、濱田岳が波留扮する幼なじみの有里から家に誘われるシーンを挙げる。「じゃあ、家に来れば?という話になった時、岳がなぜか自分で自分の胸を守っているんです。何それ?って(笑)。面白いんですよ」。濱田は本作で波留と倉科カナのふたりとラブシーンを演じている。「岳がびびっていたので、演出はそんなにしていないですよ。もっと行け!もっと行け!と言ったくらいかな。緊張して、いろんなタイミングがぐだぐだになっていたから。『もっと胸を揉まないと』と言うと、セリフが詰まったりして、面白かったですね」。

一生、団地という狭い世界で生きていこうとする悟については、「ある意味、幸せなことですよ。小中学が楽しかったとしたら、この面子でずっと生きていきたいと、当時は自分も思っていたから。ただ、20代になると、変わらなければいけなくなってくるんです。僕は変わりました。ああ、自分は大馬鹿野郎だったなと、悟ったんです。今でも学生と会ったりすると、世界の狭さというか、青い感じ、本当に自分中心に回っているなと感じます。でも、僕もそうだったから」。

大人の洗礼を受けたのは助監督時代だそうだ。「崔洋一さん、伊丹十三さん、あとは先輩の助監督さんに付きましたが、自分が思っているほど、自分なんて大したやつじゃないと思い知らされました。僕は2年しか助監督をやっていないけど、その価値観はすぐに植え付けられました。でも、それがあるから今がある。その前に僕はPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で賞を取りました。若い頃の賞って、監督になるためにはいろんな意味では良いんです。でも、その後、人としてもそうですが、監督として何本もコンスタントに映画を撮っていけるための術は、絶対的に助監督時代に付けてもらったと思います」。

最後に、監督は映画作りについて、こう締めくくった。「見た人が元気になってほしいんです。そのためには主人公がドン底にならないと。というか、ドン底からどう生きていくかってことは見せたいですね。本作を見て、どう感じてもらえるかも楽しみです」。【取材・文/山崎伸子】

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