『人生、ブラボー!』ケン・スコット監督「物語を牽引するカリスマ性と憎めないキャラが作品の魅力」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『人生、ブラボー!』ケン・スコット監督「物語を牽引するカリスマ性と憎めないキャラが作品の魅力」

インタビュー

『人生、ブラボー!』ケン・スコット監督「物語を牽引するカリスマ性と憎めないキャラが作品の魅力」

過去に行った693回の精子提供を通じて、ある日、突然533人の子供の父親だと告げられた42歳の独身男ダヴィッド。533人中、142人の子供たちから身元開示の裁判を求められて大パニックのダヴィッドが、次第に変わっていく姿がユーモアと感動を交えて描かれた『人生、ブラボー!』(公開中)。ハリウッドリメイクも決定している本作で監督を務めたケン・スコットに話を聞いた。

――693回の精子提供で533人の子供の遺伝子上の父親になる、というアイデアはどこから生まれたのですか?

「父親の話にしようというのはもともとあったアイデアで、僕と共同脚本のマーティンがふたりとも父親だったというところが大きいです。当初は150人の父親という設定で進めていたのだけど、ニュースで250人に精子提供したという話題が出ていたので、現実にも動かされて533人の子供の父親という設定になりました」

――主人公ダヴィッドを演じるパトリック・ユアールが役柄にぴったりで、山ほどの欠点はあるけれど、憎めないという人物像を魅力的に表現されています。ダヴィッドを演じるうえで、パトリックに求めたもの、そして彼の魅力はどこにあると思いますか?

「ダヴィッドは全編出ずっぱりなので、演技力とコメディの“間”が重要だと思いました。パトリックのことは以前から知っており、是非一緒にやりたいと思って第一稿を見せたところ、すんなりと引き受けてくれました。彼も実際に父親なので、自然と演じられたと思います。何より物語を終始牽引するカリスマ性と、憎めないキャラクターが作品の魅力につながっていると思います」

――ダヴィッドの子供たちを演じた役者たちも様々で、千差万別なキャラクターが登場しましたが、どこか皆、ダヴィッドの面影を残しているようにも感じました。子供たちの配役や演技指導で気を遣った点を教えてください

「パトリックとの仕事も刺激的だったけれど、若い俳優の起用もとても新鮮でした。演技学校を出て間もなく、“初めての現場”という人も多かったけれど、若さあふれるダイナミックな演技をしてくれたし、何より心から現場を楽しんでくれていたのが嬉しかったですね。様々なキャラクターを打ち出していきたかったので、各人の多面性を重視しながらも、ダヴィッドとの類似点も探しながら配役することを心掛けました」

――脚本を担当された『大いなる休暇』(03)もそうですが、ユーモアをとても大切にされています。ストーリーを考えるうえで大事にしていることは何ですか?

「僕自身、コメディ畑出身で、即興のコントやアドリブ芝居をやっていたので、作り手に移ってもその素地があるんだと思います。ユーモア以外で大切にしているのはプロセスありきで進めず、物語に連れて行ってもらうように心がけることです。僕が手掛けた中で唯一と言って良いほどコメディ要素のない『ロケット』(05)という作品は脚本で参加していて2006年の第19回東京国際映画祭(その際に監督は来日している)で上映しました。だから日本は思い出深いですね」

――ダヴィッドと父親が語り合う場面は、愛情にあふれた素晴らしいシーンでした。「人生の最大の収穫」など、心に残るセリフも多いシーンでしたが、このシーンに込めた思い、またこの撮影で印象に残ったエピソードがあれば教えてください

「ダヴィッドは現代的な感じのキャラクターとして描きたかったので、対比として父親は伝統的な人として描きたいと思っていました。そんな父親がダヴィッドの現状に直面した時、どのような行動をとるのか、どのような言葉をかけるのかはとても気を遣った特別なシーンです」

――ハリウッドでのセルフリメイクはいかがでしたでしょうか。ここは絶対に変えたくない要素、逆にこういったものにチャレンジしたという点があれば教えてください。また、カナダでの制作活動とどのように違いましたか?

「アメリカでオリジナルを鑑賞した観客の反応は非常に良いものでした。リメイクの際にコメディとドラマのバランスを変えたくないというのはドリームワークスも理解してくれましたし、好きにやらせてくれました。そこにアメリカの文化的要素が加わっているので、よりアメリカの観客もなじみやすい作品に仕上がっていると思います」

――監督自身にとって、初めての映画体験はどういう作品でしたか?また、脚本家や監督になりたいと思ったきっかけの作品やエピソードがあれば教えてください

「映画関係の仕事をしたいと強く思ったのは、12歳の頃に家にビデオデッキが到着した瞬間です。『インディ・ジョーンズ』(81)はテープが擦り切れるほど何度も見ました」

――一番影響を受けた映画監督を一人挙げてください

「やはりスティーヴン・スピルバーグですね。『インディ・ジョーンズ』など小さい頃から好きでしたが、映画をエンタテインメントとして成立させる手腕がとてもすごいと思います」

――監督にとって、人生に必要な映画を3本挙げるとすれば何になるでしょう?

「『インディ・ジョーンズ』『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)、『パルプ・フィクション』(94)かな」【Movie Walker】

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