ジェシカ・チャステイン「1970年代の戦争映画のようで政治映画に出演している感じ」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ジェシカ・チャステイン「1970年代の戦争映画のようで政治映画に出演している感じ」

インタビュー

ジェシカ・チャステイン「1970年代の戦争映画のようで政治映画に出演している感じ」

キャスリン・ビグロー×ジェシカ・チャステインで、ビンラディン追跡劇の裏側を描き出した『ゼロ・ダーク・サーティ』(公開中)。第85回アカデミー賞で5部門ノミネートの本作は、CIAのビンラディン追跡チームの中心人物が若き女性分析官だったという衝撃の事実と共に、最先端技術による情報収集、過激な拷問、頭脳で闘うスパイ活動、法外な賄賂、そしてシールズ隊員による作戦、という今までに明かされていなかった追跡に至るまでの経緯を赤裸々に描き出している。そんな本作で女性分析官マヤを演じたジェシカ・チャステインにインタビュー。

――脚本を読み始めてすぐにマヤを演じたい、埋まっていたスケジュールを空けてまでオファーを引き受けたとお伺いしていますが、あなたの気持ちを強く動かした一番の理由は何だったのでしょうか?

「もちろん、キャスリン・ビグロー監督です。彼女は私のヒーローであり、偉大なフィルムメーカーだと思っています。特に、監督とこのキャラクターで一緒に仕事ができたことは、人生一回きりのチャンスだと思ったんです。物語のベースが最近の史実であり、それだけに映画として作る理由があると思いました。私はもともと『大統領の陰謀』『地獄の黙示録』『帰郷』『アルジェの戦い』など、そういった作品が好きなんです。このような作品は、社会に対して鏡を照らし、見ているものに史実として行ったことに直面させ、そこからどのような道を歩いて行けば良いのかを考えさせる映画なんです。脚本をもらった時は素晴らしく、絶対にこれはプロパガンダ映画ではないと思いました。特に、ラストの終わらせ方に心を動かされるところがあり、演じてみたいという気持ちになりました。まるで1970年代の戦争映画のようで、政治映画に出演しているような感じだったわ」

――キャスリン・ビグロー監督の作品の魅力は?また撮影前と撮影が始まった後で印象は変わりましたか?

「映画というのは暴力が観客側にある程度予想されてしまうことがあるかもしれないけれど、それによる悲劇やどれくらい人を滅ぼすのかというのがわかりにくくなるケースが多い中で、彼女の作品ではキャリアの当初から、暴力を通してモラルが失われていくということがきっちりと描かれています。そこが彼女の作品で好きなところです。実際に彼女に会う前はどういう人か想像できなかったけど、今回の作品で素晴らしいのは、120人ものセリフのある役、様々な状況やたくさんのロケーションで撮影したにも関わらず、常に素晴らしい偉大なリーダーであり続けました。しかも、脅威ではなく、思いやりを持ってみんなを率いていくことができるんです。彼女は強く美しく豊かな感受性を持っているからこそ、男性的な部分と女性的な部分を両方持ち合わせているのかもしれませんね」

――本作に出演するに当たって今までとは全く違う映画だなと思った瞬間はあったのでしょうか?

「2011年のアカデミー賞授賞式に祖母と出席しました。その後、すぐに飛行機に乗って何と25時間後には撮影現場に到着していました。その場で撮影中に使う携帯を渡されたので、監督と脚本家に冗談ですぐに電話して、「今、着いたわ。もう準備はできているからいつでもOKよ」と言ったの。そしたら「じゃあ来て」って言われて、ろくなメイクも衣装もなくて行ったら、顔を隠すローブを渡されて、いきなりマーケットに連れて行かれて、「はい、野菜買って」と言われたの。カメラが見えないまま撮影が始まって、実際に撮られているのかどうか自分ではわからなかったんだけど、その瞬間に今までと全く違う映画だなと思いました」

――マヤは今までと演じてきた役柄とは真逆で、さらにあなた自身とも全く違うタイプの性格だと思いましたが、マヤを演じたことであなた自身がマヤから影響を受けたことはありますか?

「マヤには影響を受けています。彼女を演じているなかで色々学びました。特に、裏側では何百人と働いている人が英雄と言える行動を起こしても、なかなか日の目を浴びないという事実があることを知り驚きました。彼女から学んだことは、時にはNO!と言って良いんだ、ということです。彼女は自分の信じていることしか口にしないし、間違っていれば間違っていると口にする。私は時々正直にNO!と言えないことがあるので、時には良いよねと思えるようになりました」

――第85回アカデミー賞の発表がいよいよですね。今のお気持ちを聞かせてください

「ここ数年、人生が変わってしまって、映画界ではオーバーナイトサクセスという神話があるだけに、自分もそうなんじゃないかって。つい最近になって顔を見られるようになったから言われがちなんですけど、実はそうではないんです。私はずっと俳優という仕事をしてきて、大学も行っているし、オーディションも受け続け、テレビも映画も出演して、ようやくここにたどり着いたから、賞やノミネーションとして励ましやサポートをもらえることは美しいことです。もしアカデミー賞を獲れたら、夢を見ていたことだから本当に光栄です。だけど、私の中では受賞しているも同然。大好きな監督や脚本家と仕事をしたいというのは夢だったし、実際に色々なキャラクターを演じることも夢だった。ある意味、私は夢を叶えてしまっているなかで生きているから、アカデミー賞を気にしないようにしています。だって今が十分にハッピーなんだから!」

――この作品を見る観客にあなたが注目してほしいポイントや見どころを教えてください

「世界には知られざるヒーローが数多くいます。彼らは自分の人生を注ぎ、そのことに何時間も費やしています。たとえば、本作では国のために頑張っている人たち、普段光を当てられない彼らの姿が映し出されています。私はそこにすごく感銘を受けました。日本の皆さんにも同じように何かを感じてもらえればと思います」【Movie Walker】

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