第85回アカデミー賞ベストドレッサーは、主役を争ったあのふたり!
今年のレッドカーペットは、若手が白やペールピンクといった淡色を好み、ベテランが赤やメタリックの濃い色を好む傾向が見られ、無難な黒が少ないのが特徴だったが、米E!テレビ、Usウィークリー誌などの多くのメディアがほぼ同列でベストドレッサーに選んだのは、『世界にひとつのプレイブック』(公開中)で主演女優賞を受賞したジェニファー・ローレンスと、『ゼロ・ダーク・サーティ』(公開中)で惜しくも主演女優賞を逃したジェシカ・チャステインだった。
ジェニファーが着ていた薄いピンクに白のディオール・オートクチュールのドレスは、肩紐なしのパニエ入りのウェディング・ドレス風で裾が大きく膨らんだもの。ラフにまとめ上げたヘアスタイルもネックレスをバックにたらすという前代未聞のファッションも評判だったが、唯一、「似合っていても、歩きにくいドレスは選ぶべきではない」という辛口評価が、ダントツの1位になれなかった理由かもしれない。
昨年のアカデミー賞でも、シンプル派のグウィネス・パルトローと1位を二分したジェシカは、今年はアルマーニ・プリヴェのボディコンシャスなドレス。スワロフスキーを全身にあしらった赤銅色のドレスに、大きなウェーブをつけたロングヘアが古きよきハリウッドを彷彿させるゴージャスなファッションで、ゴールデングローブ賞ではジェシカを酷評していた米E!テレビの辛口ファッション評論家からも、「ハリーウィンストンのジュエリーといい、まさにムービースターの貫禄。パーフェクトでゴージャス」と大絶賛されており、完全にファッションアイコンの仲間入りを果たした。
大人の女性の中ではダントツのファッションセンスを誇るナオミ・ワッツのアルマーニ・プリヴェのメタリックドレスは、片方の肩がカップスリーブ、片方が紐で腕から胸の上が露出するというアンバランスなデザインで、「モダンでリスクのあるメタリックシルバーを完璧に着こなしている」と高得点。この3人は、今年の3大アイコンとしてほぼ完璧な評価を得ている。
エイミー・アダムスのオスカー・デラレンタのペールグレーのドレスは、上半身はビスチェタイプ、スカートは大きなオーガンジーのフリルのついた、裾が大きく広がったフワフワドレスだが、「グレーがセクシーな色であることを証明してくれた」という高い評価を得ている。
リース・ウィザースプーンは、娘が選んだという青いヴァレンチノのドレスで、ウエストラインに黒を用いることで細く見せることに成功し、産後3ヶ月とは思えない見事なボディを披露。また、ショートヘアがお似合いのシャーリーズ・セロンの、胸がVの字に開いた白く立体的なディオール・オート・クチュールのドレスは、「ゴールデングローブ賞で、アン・ハサウェイが着ていたシャネルのドレスを見なかったら、ベストドレスだったかもしれない」という、シンプルだが、シャーリーズしか着こなせないドレスと評判だった。
他には、ケリー・ワシントンの胸元がゴジャースなコーラルカラーのミュウ・ミュウのドレス、ステイシー・キーブラーのナイーム・カーンのメタリックドレス、ニコール・キッドマンのローレン・スコットの黒のメタリックドレスは、ニコールにとって新たな分野へのチャレンジだったが、概ね好評だった。
またゴールデングローブ賞ではワーストドレッサーに選ばれたハル・ベリーが、ボンドガールを意識して選んだ長袖のシルバーとブラックのストライプのベルサーチのエッジが利いたドレスは、「これぞ、ハル・ベリー」とまったく老けずにナイススバディを維持しているハルを絶賛する一方で、「10年間変わらないヘアスタイルはどうにかして欲しい」という注文がついた。
ゾーイ・サルダナが着ていたフランス人デザイナー、アレクシマビーユによるファッショナブルな白と裾のグラデーションが美しいドレス、ジェニファー・ガーナーが着ていた紫のグッチのドレスは、後ろの大きなリボンとフリルが、「長時間座っているオスカー向きではない」という批判も受けながらも、「夫のベン・アフレックが、やっとハリウッドに復活できる日」だったため、普段は嫌われる250万ドルの200カラットの巨大なダイヤモンドのネックレスにも許可が下りたようだ。
また、ジェニファー・ハドソンが着ていたロベルト・カバリのブルーのレースのゴージャスな長袖ドレス、サンドラ・ブロックのロングヘアと、ダークで、足元がオーガンジーで透けているエリーサーブのドレスは少々色味が地味としながらもベストドレスに選ばれているほか、キャサリン・ゼタ・ジョーンズのズハイル・ムラドのベージュ・ブラウンのドレスも、オーガンジーの部分の色はやはり地味と指摘されながらも、「キャサリンはまさに女の中の女」と、セクシーな着こなしを絶賛されていた。
通常とはちょっと違った観点では、75歳とは思えない若々しさでジェーン・フォンダが着こなしていた黄色のヴェルサーチ、史上最年少の主演女優賞候補となったクヮヴェンジャネ・ウォレスが、子犬のぬいぐるみのバッグを肩にかけて着ていた青いアルマーニのドレス、また、昨年助演女優賞を受賞したオクタヴィア・スペンサーのタダシ・ショウジのドレスは、「昨年のデザインのほうがベストだが、自分が似合う服を知っている人。体型に関係なくファションを楽しめることを証明してくれた」と好評だった。
多くのカップルの中で一際輝いていたのは、チャニング・テイタムと妊娠中の妻ジェナ・ディーワンで、ジェナのVネックに黒いレースのレイチェル・ロイのドレスもセクシーと評判で、3ピースのグッチのテイラードスーツを見事に着こなしていたチャニング夫妻がベストカップル賞に選ばれた。
アカデミー賞では共に主演女優賞と助演女優賞を受賞し、受賞後はトロフィーをぶつけて受賞を祝ったというジェニファー・ローレンスとアン・ハサウェイは、謝罪文を出すところまで息があっていたが、ファッションにおいては大きく明暗を分ける結果となった。【NY在住/JUNKO】