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75歳で初監督のダスティン・ホフマン「まだまだクライマックスはこれから」

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75歳で初監督のダスティン・ホフマン「まだまだクライマックスはこれから」

引退した音楽家たちが暮らすホーム「ビーチャム・ハウス」を舞台に、過去の栄光をひきずった4大旧スターがホームの存続をかけて悲喜こもごものドラマを繰り広げる映画『カルテット! 人生のオペラハウス』(4月19日公開)。キャストにはマギー・スミスやトム・コートネイら、英国を代表する俳優が集結し、アカデミー名優陣と音楽史に輝く名音楽家たちの豪華競演が実現した。

本作のメガホンを取ったのは、『クレイマー、クレイマー』(79)、『レインマン』(88)で二度のアカデミー主演男優賞に輝いた超大物俳優ダスティン・ホフマンだ。本作は彼が75歳にして念願の監督デビューを果たした作品でもある。

俳優としては50年以上にも及ぶキャリアを持ち、映画史に残る名作『卒業』(67)をはじめ、『クレイマー、クレイマー』『レインマン』などで世界中を魅了したダスティン・ホフマン。そんな彼が今度は監督として自ら俳優に指示をすることについてこう語る。

「俳優たちには、『役を演じてほしくない』と伝えた。『役を自分自身に引き寄せてみてほしい。そうすれば役を演じなくて済むんだから』とね。演じる必要はないだろう。『この映画の中の人たちは、君や私自身だ。いわゆる自分たちの人生の第三幕だ。私たち自身、老いについてどう思うか、自分たちの作品についてどう思うか、そういう思いを映画にぶつけてほしい』とね。『もちろん、脚本はロナルド・ハーウッドが書いたものだけど、そこに今までやったことがない方法で、自分自身を表現する気概を持てるかい』と言ったよ。とにかく、この映画では、俳優の誰にも役柄の性格を演じたり、誰かに対する気持ちを演じたりしてほしくなかった。トムが本当にビリーのことを好きで、ビリーもトムのことを心から好きだという雰囲気を出したかった。それが映画によくある化学反応と言われるものだと思うが、化学反応というのは、演じる必要がない。嘘は要らないはずだ。できるなら、誰かを愛したり、惹かれたりするのを演じるなんてもっての他だ。どんな場合にでもね」。

そんなダスティン・ホフマン監督について、二度のアカデミー賞受賞に輝くオスカー女優であり、本作にも出演しているマギー・スミスは、「実際、彼自身どうやって監督すれば良いか、かなり模索していたと思う。だって、彼にとって監督業は未知のテリトリーなのだから。でも、私たちはとても期待していたわ。ずっと役者をしてきたけれど、実際映画に出ていた俳優がメガホンを取る作品に出たことはなかったもの。私たちにとっては大きな救いになったわ。とにかく、演じる側のことを熟知しているから。自分の撮影の番が来るまでかなり待つことがある。すると、緊張の糸が切れてしまうことがあるの、自分の番が来てもね。そういうことを彼はわかってくれている。だから、少しリハーサルをして、すぐ本番を撮ってくれる。休憩を取るのは悪くないし、時間があればランチを取ることもできるわね。でも、あまりにも長く休むと、演技に戻りにくくなるの。その辺の事情は経験者にしかわからないのよ」と、俳優業に長年携わってきたダスティン・ホフマンだからこそ生み出される監督としての才能を讃えた。

それに対して、ダスティン・ホフマンも「マギーは偉大な女優だ。歴史に名を刻む人だ。後にも先にも唯一のマギー・スミスだ。芸術家であり、職人でもあり、その道を究めている。演技は天賦の才というか、彼女の全てなんだ。彼女はまさしくストラディバリウスのような存在だ。だから、私は監督として、よく調律された最高級の楽器を手にしていたということだ。マギーが演じるジーンは、マリア・カラスのように偉大な歌手だったんだ。だが、自分の時代は終わったことを知り、音楽の世界からさっさと身を引きたいと思っている。マギーにこう伝えたんだ。『この作品は登場人物についての映画ではない、この映画は君やトム、ポーリーン、ビリーの話なんだ。君たちの映画であり、君たちへのオマージュなんだ』とね」と、マギー・スミスに対して俳優として敬意を表し、そして監督としてキャストとの最高のアンサンブルを楽しんだようだ。

自らを本作と重ね合わせるかのごとく、「まだまだクライマックスはこれから」と75歳にして自身初の監督業に挑んだ『カルテット! 人生のオペラハウス』。名優たちの演技と共にダスティンの手腕にも要注目の作品だ。【Movie Walker】

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