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第86回アカデミー賞授賞式、視聴率アップも評価は二分

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第86回アカデミー賞授賞式、視聴率アップも評価は二分

現地時間の3月2日に開催され、エレン・デジェネレスが司会を務めた第86回アカデミー賞授賞式は、『ロード・オブ・ザ・リング』(03)が作品賞を受賞した04年以来となる高視聴率をマークした。

調査会社ニールセンによれば、平均視聴者数は前年の4040万人から約7%アップの4300万人。最も多かった18歳~49歳の視聴率は0.1%減少の12.9%となったが、『ゼロ・グラビティ』の大ヒットに加え、ソーシャルメディアを駆使したことや、クリス・ヘムズワースやクリス・エヴァンス、ザック・エフロン、エマ・ワトソンなどの若手をプレゼンターに起用したこと、アメコミのスーパーヒーローなどを紹介したことによって若年層の視聴率が上昇したようだ。

04年の4350万人には及ばなかったが、視聴者数が3年連続でアップしたとあって、エレンの評判は上々と言いたいところだが、批評家からは辛口な評価もあり、意見は分かれている。英BBCニュース、CNNニュース、ロサンゼルスタイムズ紙、ハリウッド・レポーター誌、Slate.com、USAトゥデイ誌、ヴァラエティ誌、、デイリー・メール紙、Usウィークリー誌などを参考にまとめてみた。

総体的に大きく評価されたのが、エレンがいまの時代を反映するかのようにソーシャルメディアを駆使し、セルフィー(=自分撮り。実際にはブラッドリー・クーパーが撮っているので違うが)によって視聴者の興味を誘った点だ。ツイッターアカウントが一時クラッシュして封鎖される事態が起き、4日時点で1470万件のリツイートがあったことで、アカデミー賞の歴史を塗り替え変えたことは快挙と認められている。しかし、視聴者からも「大手スポンサーのサムスン新作Galaxy S5の宣伝で自己満足に過ぎない」といった厳しい声も聞こえてくる。

また、ピザを会場にデリバリーさせセレブを巻き込んだことも視聴者にとっては斬新で、「エレンがホストを務めた7年前の歌やダンスの独りよがりなパフォーマンスより、観客と一体型だった点がよかった」「セレブをけなすより、普段はなかなか見ることができないセレブの人間的な部分を出すことに成功した」という好意的な声がある一方で、厳しい判断が下されたのが、エレンがコメディエンヌという点だ。

セレブを傷つけることは避けたいと宣言した通り、エレンがちょっとしたジョークで始めたイントロ部分には多くのメディアが好意的だった。また、映画の中のスーパーヒーローを紹介する際に、「こんなご時世だから、ヒーローは誰にでも必要よね。でも、世界で一番必要なのは若さよ!」と、若いことを最重要視するハリウッドを揶揄した点などには評価が集まった。しかし、「普通の賞のホストみたいだ。観客というよりは、セレブの友達とたくさん時間を費やしている感じ」「セルフィーが最高の瞬間で、あとは間延びした感がぬぐえない」「セレブをけなさない代わりに、印象に残るセリフがない。コメディアンが司会をやっている意味がないのではないか」といった、専門家ならではの手厳しい意見も聞こえてきた。

また、一般視聴者からは、「普段チヤホヤされているセレブを、今日だけは誰かがいじってくれるのを待っている人も多い。ゴールデングローブ賞のホストだったリッキー・ジャーヴェイスを呼んでほしい」「スパイスが足りない。仲よしクラブみたいで物足りない。07年の方がよかった」と刺激を求める声もあった。

中でも一番辛辣だったのはハリウッド・レポーター誌で、「まるで耐久テストにかけられているようだ。プロデュースも監督も行き届いていない、バラバラで退屈な賞になった」と痛烈に批判した。

前半戦の受賞者のスピーチが一部長かったこともあるが、エレンがピザやセルフィーで時間を費やしたため、メインの監督賞、主演男優賞、作品賞などの紹介がかなり慌ただしくなったことは事実だ。オンエア時間を延長してもなお、主役であるはずの彼らの紹介やスピーチを大幅に削らなくてはならなくなったため、クライマックスで慌ただしい感が否めなかった点において、タイムテーブルについてはおおむね批判が多かったようだ。

しかし、Usウィークリー誌の読者アンケートでは、「ジョン・トラボルタをかつらでいじるより、ずっと楽しかった」「セレブが子どものようにはしゃいだり、ピザを食べたりするのを見るのは楽しかった」と約9割が好意的な評価を下しており、視聴者の印象はおおむね好意的だ。

14年のオスカーと言えば「セルフィー」と「ピザ」という歴史に残る言葉を刻んだことは紛れもない事実であり、視聴率アップという結果を考えても、成功に終わったと言えそうだ。【NY在住/JUNKO】

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