押井守総監督に大役を任された真野恵里菜「今は達成感でいっぱい」

インタビュー

押井守総監督に大役を任された真野恵里菜「今は達成感でいっぱい」

アニメ史に残る伝説的作品『機動警察パトレイバー』の実写化が実現。総監督として指揮をとるのは、テレビ・劇場版のアニメシリーズでも監督を務めた鬼才・押井守だ。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』(第1章が4月5日より限定上映開始)となって、巨大プロジェクトとして展開される本作。思い入れのある作品の実写版で、押井監督が求めたヒロイン像とは。そしてヒロインを演じた真野恵里菜が越えた壁とは。2人に語り合ってもらった。

“レイバー”と呼ばれる作業用ロボットが普及した東京を舞台に、レイバー犯罪に立ち向かう警視庁特科車両二課中隊(特車二課)の活躍を描く本作。今回の実写プロジェクトで綴られるのは、アニメのその後の物語だ。主人公は、泉・野明(いずみ・のあ)から、泉野・明(いずみの・あきら)に世代交代。その明を演じるのが、真野だ。真野は「押井監督からは、太陽みたいな子でいてほしいと言われました」と振り返る。

押井監督は、明という女の子をこう分析する。「明というのは、ロボットを操縦する女の子。アニメではよくある設定なんだけどね(笑)。しかし本作の場合、ロボットに乗る瞬間の方が圧倒的に少なくて、明は現実と地続きの世界に生きている。ちょっとオタクっぽいかもしれないけれど、普通の女の子なわけです。パトレイバーって一見すると特撮ものっぽい世界だけれど、今回描かれるのはあくまで日常の話。時々思い出したように事件が起こるんだけれど、言わば、学園ものに近いんじゃないかな。 特車二課をひとつのクラスとすると、明はクラスに必ずいる明るい女の子。ある種の光を放っていて、みんながそれを受けているようなね」。

「僕は演技指導とかは好きではないし、現場のなかで自分自身で考えてほしいと思っていた。とにかく、真野ちゃんの考えてきたものを見せてもらおうと思った」と言うだけに、真野にとっては、演技の自由度も高く、それだけに責任も重いものだったはず。しかも、伝説的アニメの実写化だ。

真野は「プレッシャーもあったし、私が明で良いのかなという不安もあった」と素直な胸の内を吐露する。「撮影が始まってすぐに、佑馬役の福士誠治さんが『みんなでご飯を食べに行こう』と隊員役6人に声をかけてくれて。その時に私は『みなさんに甘えさせていただきます』と宣言をして、色々なお話をしたんです。それからは、変な遠慮がなくみなさんと接することができるようになりました」と、現場で育んだコミュニケーションが、彼女にとって大きな力となった様子だ。

「どんどん明やレイバーが好きになって、ずっと特車二課にいたいと思った」と真野。押井監督の「映画の撮影って、役者さんは待っている時間の方が多いと思うんだ。特車二課と同じだよね。待機しているのが仕事のようなもの。役者さん同士でいろいろと話をして、クラスのような現場で共同生活を送るなかで、それぞれの役割が出来上がってくると思っていた」との思惑が見事にハマり、特車二課の生き生きとした空気を作り上げた。

半年にわたる撮影を終えて、真野は「達成感でいっぱい」と晴れやかな表情を見せる。「本当に一生懸命やって、すごく楽しかったし、現場で肌で感じることがとても多かった。1年前にハロー!プロジェクトを卒業して、こんなにガッツリとひとつの作品に携わるのも初めてでした。自分のなかで何か、変われたのかなと思います」とニッコリ。押井監督が「自信になったんじゃないの?」と聞くと、真野も「はい!自信がつきました。大きい経験になりました」と、瞳を輝かせる。

大役を演じきった女優・真野恵里菜は、押井監督の目にどのように映っているのだろうか?押井監督は「なかなか、かわいいじゃないかと」とコメント。真野も思わず「あはは!」と笑うが、「でも、それがとても大事なことだと思うんだ」と押井監督。「僕も含めて現場の人間みんなが、そうやって思えなければダメ。あの子と仕事をして楽しかったなと思って、その結果、良いものができたということが一番大事なんじゃない?こういう現場は、仕事であると同時に、仕事以上の何かが大事だと思うんだ」。

真野に信頼を寄せ、大役を任せた押井監督。特車二課で“光”となる彼女は、現場でも光そのものだったようだ。【取材・文/成田おり枝】

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章』
4月5日(土)より全国にて劇場上映開始
劇場上映期間中、上映館内にて劇場限定版ブルーレイの先行販売決定
4月26日(土)よりスターチャンネル(BS10ch)や各種動画配信サイトで放送・配信開始。一般販売ブルーレイ&DVDも販売開始

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