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テレビドラマに初挑戦したシャマラン監督を直撃!

インタビュー

テレビドラマに初挑戦したシャマラン監督を直撃!

『シックス・センス』(99)、『サイン』(02)など、唯一無二の世界を紡いできたM・ナイト・シャマラン監督。初めてテレビドラマ制作に挑んだ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』の放送がスタート。謎が謎を呼ぶストーリーで、早くも視聴者を釘付けにしている。来日したシャマラン監督にインタビューした。

主人公は、シークレット・サービス捜査官のイーサン。失踪した二人の同僚を捜索中に交通事故に遭い、ウェイワード・パインズという街にたどり着くが、そこは出口のない、脱出不可能な街だったというミステリーだ。街の人々の不穏な行動、時空を超えたかのような展開…。視聴者はマット・ディロン演じるイーサンとともに、“街の秘密”に翻弄されていくことになる。

シャマラン監督は「まず、テレビドラマに出たことがない役者がいい。そして、一時代を築いたアイコン的な存在がいいと思ったんだ」とマットの抜擢について言及。80年代を代表する青春映画スターであり、本作がテレビドラマ初出演となるマットをキャスティングできたのは、まさにシャマランの理想通りだった。

「彼が『イエス』と言ってくれたのは、本当にラッキーだった。イーサンはシークレット・サービスでもあるので、そういった男らしさも必要。あと肝心なのが、ダークなユーモアのセンス。周囲の人たちがおかしな行動をしている中で、『え?一体、何なんだよ』という変顔もできなければいけない。彼はそのすべてを兼ね備えていたね」

シャマラン監督にとっても、本作は初めてのドラマへの挑戦だ。原作は、ブレイク・クラウチの全米ベストセラーだが、「主人公が何もわかっていなくて、すべてが混乱しているというところにとても惹かれたんだ」とニッコリ。テレビの世界に飛び込んだことで、「テレビドラマを手がけてみて初めて、映画をつくることの難しさを知った」と発見もあったそうだ。

「テレビと映画って、アプローチの仕方がそもそも違うんだ。アルフレッド・ヒッチコックは、テレビで『ヒッチコック劇場』(55〜62)をやって、その後に『サイコ』(60)や『鳥』(63)という彼にとっての代表作となる映画を撮っている。それって偶然じゃなくて、テレビの経験があって新しいことを学んだからこそできたことだと思うんだ」

「僕も『ウェイワード・パインズ』で新しく学んだことを、今後公開になる『The Visit』(原題)に活かした。その影響は大きかったよ」と言うが、では具体的にはどんなことだろう?「テレビは、時間をかけていられない、ガチの勝負という感じで。僕はバスケが大好きなので、バスケに例えると、ストリートバスケみたいなものだよね。『一対一のガチ』みたいなところが面白いんだ」

現場の空気感や、スピード感に対応していくことの面白さを実感したそうで、「『The Visit』はまさにそんな映画だよ。もう僕は、太っている場合じゃないよね(笑)。映画で使う筋肉と、テレビで使う筋肉は違っていた。だから今、いろいろな筋肉を鍛えている最中なんだ」と新たな挑戦を経て、エネルギーも満タンだ。

気になるのが、今後の展開。「現状、“10話1シーズン”という契約なんだ。今後、シーズンが続くかどうかは、原作者や作家陣と相談しなきゃね」とシャマラン監督。閉ざされた街というシチュエーションは、シャマラン監督の『ヴィレッジ』(04)を彷彿とさせるが、「『ウェイワード・パインズ』にも社会へのメッセージを込めているけれど、今はまだ言えない。ただ言えるのは、真実が明かされた時に、見ている人はモラル的なジレンマに陥るかもしれないということ。これは『ヴィレッジ』も同様だね」

確かにどの作品においても、「自分の見えているものが世界の全てではない」という人生観が感じられる。「全てが善と悪にわけられるものではない。『ヴィレッジ』でも、嘘をついている方も、つかれている方の言い分もわかるよね。『ウェイワード・パインズ』でも、ライター陣に言ったのは、『一見、悪とみなされる側にもそれなりの理由がある』ということなんだ。それを明確にしたいと、ずっと言い続けていたよ」。

一方の視点だけではなく、悪と思えるものの視点を追うこと。どうやらそれが、謎の糸口とシャマラン監督のメッセージを紐解くヒントとなるかもしれない。【取材・文/成田おり枝】

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