松坂桃李、本木雅弘は「まさに天皇陛下でした」と絶賛|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
松坂桃李、本木雅弘は「まさに天皇陛下でした」と絶賛

インタビュー

松坂桃李、本木雅弘は「まさに天皇陛下でした」と絶賛

甘いマスクで高身長、爽やかで礼儀正しいナイスガイの松坂桃李。勢い良くスター街道を駆け上がってきた彼は、2015年、『マエストロ!』を皮切りに5本の出演映画が公開される。『エイプリルフールズ』(15)の尻軽男役、『ピース オブ ケイク』(9月5日公開)のオカマ役というチャレンジングな役柄に続き、『駆込み女と駆込み男』(15)の原田眞人監督の反戦映画『日本のいちばん長い日』(8月8日公開)では、血気盛んな若き将校役に挑んだ。松坂にインタビューし、初めて出演した戦争映画の現場について話を聞いた。

原作は、昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション。太平洋戦争末期に、終戦の舞台裏で、身を挺して闘った人々の物語を綴る。松坂が演じたのは、断固として本土決戦を主張する畑中少佐役だ。

撮影前に、ハードな軍事訓練を受けた松坂は「味わったことがないような緊張感がありました」と振り返る。「軍事指導の方も軍人として扱ってくださったので、本当に厳しくて。でも、70年前の畑中たちもこういう空気のなかでやっていたのかもしれないと思い、訓練の時から作品の世界観に入ることができました。所作がメインで、ドアの開け方1つとっても、自分の名を名乗ってから開けて、きちんと足を揃えてドアを締める。それをずっとやっていくと、だんだん違和感がなくなっていくんです。怖かったですね」。

強硬派でクーデターへと走ってしまう畑中。1967年に岡本喜八監督も同じ原作を映画化しているが、今回の畑中とは少し描き方が異なる。「最初に原田監督と『畑中という男は本当に純粋なんだ』という話をさせてもらって。岡本さんが撮られた作品の畑中は、狂気というワードにすごく寄っていたけど、今回はちょっと違います。彼は純粋がゆえに、突き進んでいく。だから、ポツダム宣言を受託することになった時、信じるものや頼るものがなくなり、彼は間違った正義を持ち始めたのではないかと。だから、純粋さを大事にして演じました」。

本作の主人公は、畑中の上司である陸軍大臣・阿南惟幾で、役所広司が演じた。役所との共演シーンが多かった松坂は「ただただ、かぶりつくように役所さんを見ていました」とうれしそうに話す。「役所さんは、存在するだけで説得力を出される。今回、役所さんたちと共演させてもらう機会をいただけたのは、非常に大きな経験となりました」。

松坂は、本木雅弘演じる昭和天皇のなりきりぶりにも感銘を受けたそうだ。「本木さんとの共演シーンはなかったのですが、撮影の入れ替え時間に、たまたまお会いできたんです。姿勢から発する言葉も含め、何から何まで動きの1つひとつが、まさに天皇陛下でした。本当に昭和天皇は、こういった人物だったんじゃないかと思い、僕はただただ圧倒されました」。

松坂は、本作での昭和天皇の聖断について、心を揺さぶられたという。「当時、昭和天皇のように、先のことをちゃんと考えている人もいたんだということを、この作品を観て思いました。それこそ畑中なんかは、いまのことしか考えてなかったけど、昭和天皇は、もっと未来のことも考えて、行動されたんだなと」。

本作では、陸軍将校たちの穏やかな日常も描かれる。「70年前の話だけど、いまの日常と共通する部分が確かにあったということも、今回の作品を通して実感できました。それに、戦争は70年前に起きたことですが、もしかしたら明日起こるかもしれないですし。そうなると、いま、選択の自由、表現できる自由が許されているうちに、僕たちが自分の考えや行動をしっかりともって、これから先の戦争を知らない世代の人たちを守るためにも、もっと先のことを考えていかないとだめだなと思いました」。

真っ直ぐな眼差しでそう語る松坂桃李が、実に頼もしい。俳優としても、人間としても、本作の現場からいろんなものを吸収したに違いない。戦後70年を迎えたいま、是非とも『日本のいちばん長い日』を、若い世代にこそ観てほしい。【取材・文/山崎伸子】

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