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唐沢寿明、『杉原千畝』で共演の小雪を称える

インタビュー

唐沢寿明、『杉原千畝』で共演の小雪を称える

第2次世界大戦中、赴任先のリトアニアで、6000人ものユダヤ難民にビザを発給し、その命を救った杉原千畝。“日本のオスカー・シンドラー”と呼ばれた彼の、知られざる一面にも迫った歴史ドラマ『杉原千畝 スギハラチウネ』が、12月5日(土)より公開される。タイトルロールを演じた唐沢寿明に、本作の魅力や、劇中で描かれる夫婦愛について話を聞いた。

杉原千畝役を演じるにあたり、今回は引き算の演技を要求されたという唐沢。「演技をする時、こうしてと言われる方が簡単で、何もしないというのがいちばん難しい。そのなかで、今回は、その土地に住んでいるように見せる空気感みたいなものをいちばん大事にして演じていったよ」。

千畝の勇気ある行動については、リスペクトを惜しまない。「ドイツと日本は、当時友好国だった。そのドイツがユダヤ人を虐殺し始めた時、ユダヤ人にビザを出していたということがすごい。当然、ゲシュタポから家族も含めて狙われていただろうし、職を失うことも覚悟していただろう。まだ小さい子どももいたのに、よくやったなと。この状況下で普通の人間ならこんな行動はできない。余程の覚悟があってのことだったと思う」。

千畝の妻・幸子役の小雪とは、ドラマ「不毛地帯」などで共演している。小雪について「いままで共演したなかでいちばん良い演技だったんじゃないかな」と太鼓判を押す。実は、唐沢は、小雪や、彼女の姉で歌手の弥生とは、プライベートでも仲が良いのだ。

「小雪は我が強いから、いままでの演技にはそれが出ていた気がしたけど、子どもを産んでから変わったのかもしれない。できあがったものを観たら、とても良かった。中身がちゃんと伝わるような演技だったので、映画を観た後『良かったよ』とメールしました」。

千畝と幸子の夫婦関係について、唐沢は「基本は幸子さんあっての千畝さんだろうね。彼が自分の任務や仕事を全うできたのは、奥さんのおかげなのかなとも思う。」と解釈する。「お互いに好きになったとはいえ、千畝さんは幸子さんを自分の人生に引き込んだわけだから。普通の奥さんなら、外務省から『ビザを発行するな』と言われたら、夫を止めるでしょ。でも、あんなふうに『私は大丈夫です』と言ってくれる人は、あの時代になかなかいなかったと思う。いつの時代もパートナーの存在は非常に大きいんじゃないかな?」。

また、唐沢は、自身が映画で、杉原千畝を演じた意味についてこう語る。「まずは、杉原千畝さんを知らなかった人に、その名前を知ってもらえるだけでも、成果はあると思う。そして、映画を観た人が、もっと杉原千畝さんのことを知りたいと思ったら、文献や本などを探して読んでもらえば良いし。そうすれば、バックグラウンドに戦争はどうしたってついてくるから。この時代の戦争がどういうものだったのかを、もっと知ってほしい」。

杉原千畝が救ったユダヤ人は6000人だけではない。その子孫も含めると、4万人にも及ぶと聞く。戦争によって奪われる犠牲の大きさを目の当たりにすると共に、杉原千畝がユダヤ人の人々の未来をも救ったのだということを実感した。戦後70年の最後を締めくくるにふさわしい『杉原千畝 スギハラチウネ』は、世界中の人々に観てほしいと思う。【取材・文/山崎伸子】

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