監督も絶賛!笑福亭鶴瓶の芝居での“間”の話芸とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
監督も絶賛!笑福亭鶴瓶の芝居での“間”の話芸とは?

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監督も絶賛!笑福亭鶴瓶の芝居での“間”の話芸とは?

『ゆれる』(06)で各映画賞を総なめにし、注目を集める西川美和監督の最新作『ディア・ドクター』(6月27日公開)で、映画初主演を飾った落語家・笑福亭鶴瓶に撮影裏話を語ってもらった。

本作は、山あいの小さな村で村人たちから絶大な信頼を集める医師の失踪をきっかけに、彼の知られざる素顔が明らかになるストーリー。

秘密を抱えながら村の診療所に勤める医師、伊野を圧倒的な存在感で演じ切った笑福亭鶴瓶は本作を「かけがえのない財産になった」と振り返る。

「笑いの世界でも芝居の世界でも大事なのは“間”だと思うんです。例えば、誰かと会話をしている最中に知り合いが通りかかったら、その知り合いに挨拶してから会話に戻る、これが日常で使うリアルな間なんです。泣いたり怒ったりしてれば別ですけど、人は喋りながらいろんな景色を見てますから。ただ、こういう間っていうのは台本に書きにくい。だから『こんなん言ったら面白いかな?』『これはどう?』と監督に見せながらやっていました。劇中に登場する『伊野でございます』なんていう台詞も、台本とは違う順番で言ってるんやけども成立している。そういうリアルな間は大切にしてましたね」

西川美和監督も「台詞は標準語だったのですが、鶴瓶師匠の言葉で表現してもらえば生々しさが出ると思っていました。それをアドリブも交えながら演じてくれたおかげで現場の空気が柔らかくなったような気がします」と語る。

そんな鶴瓶の持ち味がいかんなく発揮されたのが、八千草薫演じる未亡人の患者かづ子に、伊野が野球中継を見ながら野球のルールを教えるシーン。台本には台詞がなかったのだそう。

「ここは(ゲスト俳優と即興ドラマを演じるテレビ番組)『スジナシ』の経験が生かされましたよね。素人にも分かる説明の中に、間違えがちな説明を入れたりなんかすると面白くなるじゃないですか。そりゃあ楽しかったですよ」とコメントした鶴瓶。西川監督も「やりとりが本当に絶妙で面白かったです」と教えてくれた。

一方、瑛太演じる研修医・相馬とケンカをするシーンでは「(撮影前に)瑛太とふたりきりで会話をしながら、台詞を入れて本番に臨みました。間でつまるのはいいけど、台詞でつまるのはあかんから」と役者魂を見せた鶴瓶。だが基本的には「直前まで違う環境に身を置いておきたい」のだそう。

ちなみに撮影中、瑛太と飲みに行き親交を深めたという彼は「瑛太は大酒のみ」と暴露。地元の人ともすっかり打ち解け楽しく飲んだことを明かした。

最後に「監督と僕の思いがピッタリと合った連続が“映画”になっている」と語った笑福亭鶴瓶。撮影時の和やかな雰囲気はそのままに、へき地医療の様々な問題点をも浮き彫りにする本作。まずは映画館で観てほしい。【MovieWalker/大西愛】

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