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初主演を務めた女優・橋本環奈を前田弘二監督が語る!

インタビュー

初主演を務めた女優・橋本環奈を前田弘二監督が語る!

先日開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016」でインターナショナル・ショートフィルム・ コンペティション部門の審査員を務め、さらに主演女優・橋本環奈と共に『セーラー服と機関銃 -卒業-』(3月5日公開)を引っさげて登壇した前田弘二監督にインタビュー。監督が見た女優・橋本環奈について、話を聞いた。

『セーラー服と機関銃 -卒業-』でメガホンをとった前田弘二監督
『セーラー服と機関銃 -卒業-』でメガホンをとった前田弘二監督

本作で、これまで薬師丸ひろ子をはじめ、原田知世、長澤まさみといったそうそうたる女優たちが演じてきた伝説的ヒロイン、星泉を演じる橋本環奈。「千年に一人の逸材」と形容される彼女のことを、前田監督はどのように感じたのか?

「実際に会って抱いた印象は、場を明るくさせる人間力と強さを持っているなということ。ハードなシーンが多いので、人によっては沈んだり、湿っぽくなってしまう可能性もあると思っていたのですが、妙な安心感があって、『この子ならいける』と直感しました」

本作は橋本にとっての初主演作。一生に一度しかない機会とだけあって、監督としても気を遣った部分があるようだ。

「やはり初主演は特別ですから。まず『映画ってこんなものか』と思われてしまわないように気をつけましたね。一生そう思わせてしまうのは罪じゃないですか。とにかく『映画はとんでもないからね!』と脅すように言い聞かせていました(笑)」

【写真を見る】機関銃を持った橋本環奈を演出する前田監督
【写真を見る】機関銃を持った橋本環奈を演出する前田監督[C]2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

しかし、本人の映画に対する意識や向き合い方は半端なものではなかったという。

「最初に会った時に、本人から『私、普段はアイドルやらせていただいているんですけど、アイドルが映画に出て“ああこういう感じね”ってなるのは絶対にイヤなんです』みたいなことを言われたんです。本当は僕から言おうと思っていたことなのですが、こっちがどう言おうかと考えていたことを、既にわかっているという。ハっとさせられましたね」

本格的な演技は初めてだった橋本。監督として演出してみての感想は?

「撮影前に2か月くらいリハーサルをやりました。実際に撮影しているような雰囲気で細かくやりながら、(役を)作って、作って、現場入りする直前に全部忘れさせました(笑)。現場って、何が起きるかわからないので。彼女にとってどんな演出がいいのか模索しながら、基本的にのびのびと演じながら泉という役をものにしてくれれば…と考えていましたが、要求したものを常に上回る状態で返してくれるんですよね。だからこちらも火がついて、ここまではできるかな?って少しずつハードルを上げてみる。そうして彼女の反応を見ながら、演出を変えてみたりしていました」

子分たちを引き連れて商店街をゆく女子高生組長・星泉
子分たちを引き連れて商店街をゆく女子高生組長・星泉[C]2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

本作での星泉のあまりのハマリぶりに、橋本環奈のために用意された役だと思ってしまうが、驚いたことに、俳優にあわせて脚本を執筆する“当て書き”をしたわけではないという。

「3年前から企画が進んでいたのですが、その段階ではまだ役者の候補が決まっていなかったんです。脚本の段階で、泉を現代の女子高生したいと考える中で、相手に毒づくユーモアとか、今っぽさを大事にしたかったのですが、実際に本人に会ってみたらそのままで、ぴったりでした」

そして仕上がった『セーラー服と機関銃 -卒業-』。映画には、笑って、怒って、泣いて…と、橋本環奈のありとあらゆる姿が収められている。

「カメラマンと話していたのは、『いま、橋本環奈が持っている表情をすべて映そう』ということでした。だから、色々な表情を引き出せる状況に置こうとしました。他の役者さんもそれに乗ってくれて。たとえば泉と敵対する安井を演じた安藤(政信)さんは、彼女を本気でムカつかせるためにテストと本番で違うことをやるんですよ。いきなり本番でコップを思い切り投げつけたり、見ているこっちが『ええっ!?』ってビックリするようなことを。そういった仕掛けに対して、彼女もぐっとこらえて、組長として対峙する。よくやってくれたと思います」

長谷川博己演じる大人の男・月永とのシーンも必見
長谷川博己演じる大人の男・月永とのシーンも必見[C]2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

そんな撮影現場で、監督も「一番感動した」という、まさに誰も見たことのない表情が引き出されたシーンが存在する。

「撮る順番はバラバラだったのですが、唯一順撮りしたのが、ナイトクラブと夜中から朝にかけての長谷川(博己)さんとのシーン。感情を出し切る芝居が必要とされる、一番難しい“勝負”のシーンだったんです。1テイクしかできないだろうと一発勝負で朝方にやったんですが、芝居を見ていて『よくやった!』と感動しました。これを見たかったという気がしました。内面から出るものが現れる場面だから『こういう顔してくれ』って説明できないんですよね。そんな場面で、どんなものを彼女が見せてくるのか。本人は役柄同様にわけがわからなくなっている状態だったと思いますが、見事にやってくれました」

こうして見事に主演を務め上げ、誕生した女優・橋本環奈。監督が見た、彼女の“武器”は?

「主演を務めるというのは本人にとって相当なプレッシャーだったとは思うんですが、弱音を絶対に吐かない。すごく真面目なんですよね。どんなことでも挑戦しようとするし、応えようとする姿勢はすごいと思いました。身ひとつで映画にダイブできる度胸、場の空気をひっくり返すことができるだけの明るさは彼女の強みですね。スター性という、訓練で身につけられない天性のものを持ちながら、のびのびとしていられる。すべてが魅力的な“女優”です」【取材・文/Movie Walker】

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