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『世界から猫が消えたなら』原作者・川村元気の頭の中に迫る!

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『世界から猫が消えたなら』原作者・川村元気の頭の中に迫る!

余命わずかと宣告された青年を通して、生きることの意味を問う映画『世界から猫が消えたなら』(佐藤健・宮崎あおい出演、5月14日公開)。原作者の川村元気が「本作と双子の関係にある」と語るのが、彼がハリウッドの巨匠たちと“空想企画会議”を繰り広げる会議本「超企画会議」だ。一見、無関係に思える2作品にどのようなつながりがあるのか?『モテキ』『バケモノの子』『バクマン。』などヒット作を次々と生み出す映画プロデューサー・川村元気の頭の中に迫る!

「超企画会議」は、「ハリウッドの名だたる巨匠たちと、いきなり打ち合わせをすることになったら何を話すのか?」という“もしも”の世界を舞台に、川村が空想を繰り広げる会議本。本書のアイディアのきっかけをこう語る。

「ちょうど『モテキ』を作っていた頃に遡ります。本にも出てくる編集者の小川くんから、僕の企画術を明らかにする連載をやりませんか?という話があって。でも僕はやっぱりエンタテインメントの人間なので、自分の企画術をビジネス書のようにまとめることにはどうしても抵抗があった。大事なことはストーリーに乗せて語らなければいけないと、日々思っているんです。そこで、思いついたのが“空想会議”というネタ。自分がどうやって企画をしているのかを、なるべくエンタメで表現したいと思って始めました」

スティーヴン・スピルバーグと『宇宙兄弟』を作ったら。ウディ・アレンと『モテキ』を作ったらなど、巨匠たちに大胆な企画をぶつけていく。突拍子もない空想であれ、どこかリアリティが感じられるのが面白い。その源は、巨匠たちの性格や作風についてじっくり調べた上で、空想を広げているからだ。「僕はいつも話す対象者についていろんなことを予習して、企画会議に臨んでいます。予習を散々した挙句にちゃぶ台を何度もひっくり返しながら、道を見つけて行く。本書の空想会議も毎回そのような展開ですが、現実の会議も同じような感じで始まるものなんです」

「監督を誰にしよう、俳優は誰にしようと考えているときが一番楽しい」と企画の醍醐味を語る。「そういう意味では、本書は企画の幸せな瞬間を切り取ったものといえるでしょう。ここから先は、スケジュールが、予算が、時間が…と地獄になっていくわけで(笑)。でもバカバカしいと思うかもしれませんが、J.J.エイブラムスと『ゴジラ』を作ったらどうなるか、ジェームズ・キャメロンと『寄生獣』を作ったらどうなるかと空想することで、限りなく世界の最高峰レベルに近づいていけるんじゃないかと思っています」

その一例として挙げたのが、中島哲也監督の『告白』。「『告白』のときは、中島監督と『時計じかけのオレンジ』を超えたいよねと話していたんです。そうすることで、あれを超えるためにはどうしたらいいんだと目標値ができます。また、対談集『仕事。』で坂本龍一さんとお会いしたときに、『ライバルをモーツァルトやドビュッシーに設定している』というお話をされていて。ものづくりというのは、過去の偉人たちとの戦いでもあるんですよね」。空想の翼を広げることで、実際の仕事もより高みを目指していけるものだという。

企画における最高の瞬間を、「エンタメとしてまとめたのが、『超企画会議』」とのこと。一方、人生観を小説としてまとめたのが、『世界から猫が消えたなら』だ。「僕は、例えば自分の親が死んでしまったらとか、友人がいなくなってしまったらというように、逆説的に物事を考えることで、その価値を確認したり、見出しているところがあるんです。つまり『僕が世界をどう見ているか』を小説として表現したのが『世界から猫が消えたなら』なんです。僕にとっては『超企画会議』と『世界から猫が消えたなら』は双子のような関係性になっているんです」。なるほど、「もしこれが手に入ったら」と「もしこれがなくなってしまったら」とを行き来する2冊となっているというわけだ。

最悪の状況を常に予想しながらも、最高のイメージを忘れないでいること。この両極の“想像力の幅”を持つことが、映画プロデューサーとして欠かせないものなのかもしれない。そしてもう一つ、川村氏からビシビシと感じるのは、映画への並々ならぬ愛情。「『世界から猫が消えたなら』を読んで、作中に出てくるチャップリンの映画を見てみたという中高生が結構いるんです。『超企画会議』を読んで、ソフィア・コッポラやタランティーノに興味を持ったりと、あまり普段は映画を見ない人にとって、映画を深く知っていくきっかけになれたらうれしいです」【取材・文/成田おり枝】

「超企画会議」4月21日(木)発売
本体:1300円+税
発行:エイガウォーカー
発売: KADOKAWA

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