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EXILEのAKIRA、“ダンスに例える”演技論に納得

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EXILEのAKIRA、“ダンスに例える”演技論に納得

人気ボーカル&ダンスユニット・EXILEのAKIRAが初主演する映画『ちゃんと伝える』が8月22日に公開される。今回、主人公のAKIRAと、その父親役の奥田瑛二と2人の単独インタビューが実現。“未来への可能性に満ちた若手”と“演技を知り尽くすベテラン”という、役者として対照的な立ち位置の2人に話を聞いた。

本作は、父親がガンで余命いくばくもないと知った息子が、自身もガンだと宣告されて苦悩する様を描いている。AKIRAは、「奥田さんとの共演では、病室のシーンが印象に残っています」と振り返る。

「お父さんに親孝行しようと思っていた矢先に、自分もガンを宣告されて、(親よりも先に死ぬのは最大の親不孝なので)『親父、早く死んでくれ!』と、矛盾した感情が初めて芽生えたシーン。目の前で奥田さんが自然な感じで眠ってらしたので、本当の病室にいるようなリアリティがあったんです」。

それを受けて奥田は言う。「僕の経験から言いますと、本来なら病室で寝ているシーンは、役者にとってはつまらない。ところが、今回は“家族”というものを表現できるのが病室だけですから、病室の中を家族愛で満たさないといけない。ただ寝ているだけというレベルじゃないから、やっていて楽しかったですね」と。豊富なキャリアを誇る彼にも新鮮な現場だったようだ。

本作のメガホンをとったのは、園子温監督。前作『愛のむきだし』(08)では、敬虔なクリスチャン家庭に育った青年の純愛を怒涛のハイテンションで描いて絶賛された。本作は、一転して、往年の日本映画を思わせる抑制の利いた筆致が印象的な作品だ。

映画の中で、息子は医者から直接ガンを宣告される。それに対して父親の方には、本人が病名を知っているか否かを判断できるシーンはない。だが、奥田は敢えて、その疑問を園監督にはぶつけなかった。「役作りは面白いもんで、それを監督に聞いちゃうとつまらない。自分では、映画全体の空気感、つまり結末からフィードバックされた世界観を決め込まないようにする。もちろん自分の中では考えますが、フレキシビリティですね。曖昧でいる方が良いわけ。これは俳優術の1つなんだけどね」と、ベテランらしい演技論を展開。

その上で奥田は、ダンスの例を挙げて分かりやすくAKIRAにアドバイスした。「決定づけるとスベる時があるんだよ。立ち位置が狭いとしんどいじゃない。ダンスもそうでしょ? ここだけで踊るのと、広いスペースが使えるのとでは、自己表現のしやすさが変わってくる。だから、自分の中では決めても、決定づけない。そうすることで、良い意味で空気感が連鎖していく」。

大きくうなずくAKIRA。「奥田さんの言っているニュアンスは、すごく分かります。本当にその通りで、ダンスでも決め打ちってその人の表現を狭める。無限にあったはずの可能性を奪ったりしますから。そういう意味で、周りの方々に作ってもらった空気感がありがたかったです」。

目の前で奥田がAKIRAに俳優術を伝授する様子が、劇中の親子の関係と重なって見える。映画の中には、親から子へ“ちゃんと伝える”というメッセージの象徴として、セミの抜け殻が出てくる。これもまた、園監督が映画に持ち込んだ空気感と言える。

AKIRAには、監督から今後の演技に役立ててほしいと、NGカットも含めた彼の全てのラッシュ・フィルムがプレゼントされたそうだ。監督も彼に“ちゃんと伝え”たかったに違いない。先輩たちの“親心”に恵まれ、役者としても大きく羽ばたこうとしているAKIRAの前途は洋洋に見える。【取材・文/外山真也】

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