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黒沢清監督、TIFF上映の『ダゲレオタイプの女』のQ&Aで感無量

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黒沢清監督、TIFF上映の『ダゲレオタイプの女』のQ&Aで感無量

第29回東京国際映画祭(TIFF)のJapan Now部門出品作『ダゲレオタイプの女』(公開中)の舞台挨拶が10月27日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催。黒沢清監督とプログラミングアドバイザーの安藤紘平が登壇し、Q&Aを行った。

『ダゲレオタイプの女』は、世界最古の写真撮影方法“ダゲレオタイプ”を軸に、芸術にのめり込む写真家の父の犠牲になる娘と、写真家に雇われた青年との悲劇的な恋を描くサスペンススリラーだ。

安藤は「また黒沢さんの新しい世界が広がったと思います。日本の怪談、『雨月物語』のようなにおいのする作品。思いが実体化していく要素があり、黒沢さんが日本に帰ってきれくれたという気がしました」と感想を述べた後、『惑星ソラリス』(72)との共通点について指摘した。

黒沢監督は「僕も『惑星ソラリス』は映画も大好きですが、原作も何度も読んでいます。安藤さんがおっしゃったように、非現実なものが実体化し、戸惑いながらも頑張って生きていこうとする。幻だったものと普通の人間がドラマを結んでいくという大好きな物語です」と大いにうなずいた。

観客とのQ&Aでは、劇中の老婆が言う「死は幻です」という台詞が印象的だったという意見が出た。その観客は、その台詞を病床の母親に聞かせてあげたいと言うと、黒沢監督は「あなたと出会えて映画も喜んでいると思います」と言葉をかみしめた。

「実は、脚本を書いていて一番最後に付け足したシーンなんです。どうしても入れたくて。若い人にはわからないかもしれないけど、死が間近に迫ったものとしては、あの台詞を誰かに言わせたかったので、最後にここなら入れられると思って入れました」。

その思いについて黒沢監督は「年を取れば取るほど死んだ知り合いが多くなる。でも亡くなった後も『あの人だったらどう思うかな』といろいろと考えたりするんです。その人と僕の間では、死が境目とは思えなくて、何か幻のようなものだなという思いが何となくあって。そこを指摘いただいてうれしかったです」と感無量の表情で述べた。

第29回東京国際映画祭は、10月25日から11月3日(木・祝)の10日間にわたり、六本木ヒルズをメイン会場に、EXシアター六本木、東京国立近代美術館フィルムセンター、歌舞伎座、東京国際フォーラムで開催中。【取材・文/山崎伸子】

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