ベートーベンの「第九」を愛し、市民合唱団に参加する人々の姿を追ったドキュメンタリー。日本全国に普及した素人合唱団による「第九の合唱」。様々な境遇の人々が年末の合唱に向けて練習に打ち込む姿を通して、世界に例を見ないこの文化を後世に伝える。監督を務めたのは、韓国出身のキム・ソヨン(「空色の故郷」2000年)。撮影は「パンク侍、斬られて候」の松本ヨシユキ。
ストーリー
毎年年末、各地の市民合唱団によって恒例行事のように行われているベートーベンの交響曲『第九番』第4楽章『歓喜の歌』の合唱。そこに参加するのは、サラリーマンから専業主婦、看護師、農民、神父さん、鉄工所の作業員、エンジニア、医師……。年齢も経歴も、国籍も宗教も、生きてきた道筋も千差万別。年の頃は小学生から100歳を越えたおばあちゃん、体に障害を持つ人まで。専門的な音楽教育を受けたことのない全くの素人ばかり。楽譜はもちろん、ドイツ語も読めない。そんな一般の人たちが難しい『第九の合唱』に自らの意思で挑戦する国は、世界中探しても日本以外には存在しない。彼らは、地元のアマチュア合唱団に所属し、約半年間、猛練習を積み、様々な想いを胸に舞台へと向かう。たった一度でも舞台で歓喜を味わうと、再び歌いたくなり、歌えば歌うほど深みにはまり、いつまでも到達できない儚い気持ちを抱え、また次の舞台へと向かう。その姿は、さながら恋に落ちた人そのもの。恋の悩みほど甘いものはなく、恋の嘆きほど楽しいものはなく、恋の苦しみほど嬉しいものはなく、恋に苦しむほど幸福なことはないというように。人の心は“愛する”ためにあると言うが、人の歌は“恋する”ためにあるのかもしれない。
スタッフ
監督、編集
キム・ソヨン
撮影
松本ヨシユキ
プロデューサー
金誠民
アソシエイトプロデューサー
康成虎
エンディング音楽
内田ゆう子
整音
冨田和彦
題字タイトル制作
李民花
英語字幕翻訳