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坂本龍一、独白5000字。コロナ禍のNYで語った、“いま”伝えたいメッセージ

インタビュー

坂本龍一、独白5000字。コロナ禍のNYで語った、“いま”伝えたいメッセージ

「パンデミックは、人間の行き過ぎた経済活動がもたらしたもの」

近年の音楽活動では、素材として自然の音を集めていくことも
近年の音楽活動では、素材として自然の音を集めていくことも[c]2017 SKMTDOC, LLC

現在は、ニューヨークで自粛生活を送る坂本に、まずは自身の状況と、ニューヨークから見た日本の姿について語ってもらった。
「いまのニューヨークは、ピーク時に比べると山を登る前のあたりのレベルまで下がってきたという状況です。この山は登るのに比べ、降りてくるのに時間がかかります。しかしまだ1日に100人くらいの方が亡くなっているので、異常な事態が続いています。
僕は、3月いっぱい日本にいましたが、その間、すでにニューヨークが外出禁止になっていました。日本はそれに比べると警戒心が緩く、国や行政も指針がはっきりしていなくてはがゆい思いをしていたんです。なのでなるべく外出はせずに、自主的に自粛した行動を取っていました。
いまもニューヨークで自粛中ですが、いつも家で作業をしているので、生活自体はそれほど変わらないです。こっちへ帰ってきて外出したのは、かかりつけの医者に抗体検査を受けに行ったくらいで、普通に暮らしています。いま大変な方たちには申し訳ないけれど、そういう職業でありがたいなと思っています」

「東北、福島の復興を後回しにして、オリンピックを開催すべきなのか」

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が延期になったが、坂本はもともとオリンピックに対しては反対の立場だったそうだ。現在公開中である福島の原発事故を描いた映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)を激賞した坂本は、同作にこのようなコメントを寄せ、自身のスタンスを明確にしている。
「2011年3月のことを、フクシマのことを、僕らは忘れてはいけない。もう一度思いだそう、原発をもつことがどれだけ愚かなことで、取り返しのつかないリスクを伴うか、ということを」としつつ、「俺たちは自然の力をなめていたんだ。(中略)自然を支配したつもりになっていた。慢心だ」と、劇中で渡辺謙演じる福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長の台詞を引用し、人類に警鐘を鳴らす。

原発反対を唱える運動にも参加した坂本
原発反対を唱える運動にも参加した坂本[c]2017 SKMTDOC, LLC

「僕自身は、もともと東北、福島の復興を後回しにして、オリンピックをやるのは倫理的に許せないと思っていました。また、21世紀に入っても、MERS、SARS、今回のコロナウィルスとパンデミックが起こりましたが、温暖化の進行によって、今後ますます増えていくと思います。それは、人間の行き過ぎた経済活動がもたらしたもので、資源と称して世界的に生態系を破壊し、ほかの種がどんどん住めない世界にしていく。そこを考え直さないと、同様なことが今後も頻発するのではないかと。
また、それに伴い心配されるのが世界的な食糧危機です。今回のコロナ禍でもすでに食料の高騰が起こっていますが、それに水害、干ばつ、大規模な火災などが加わるのですから。近年一連の前例を見ない災害と、ウィルス問題はリンクしていると思います。その原因である人間活動を少し方向転換しないと、結局は自分の首を絞めることになるでしょう。
では、一人一人がなにをするべきなのか。これは本当に難しい。いろいろな分野の科学者、経済学者、政治家などを含め世界の頭脳を集め、一生懸命考えてくれないと、今後さまざまな被害を受ける方が世界中で増えてしまう。でも、私たち個人にもできることはあります。一人一人は小さくても、地球人口は70億人以上いますから、皆が少しでも考えて行動することで、その数に匹敵するほどの効果は出るはず。もちろん、全員が同じ方向を向くのは好きじゃないですけれど、みんなが少しずつ動くことで、大きく変わる可能性はあると思っています」

【無料配信 詳細】
タイトル:『Ryuichi Sakamoto: CODA』
本編分数:102分
配信期間:2020年5月22日(金)15:00 ~ 5月28日(木)23:59
配信場所:「KADOKAWA映画」 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCHjj-qlJhYWDacFwnaewV6Q
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