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『劇場』の山崎賢人と行定勲監督を直撃「嫉妬心は誰にでもあるもの」

インタビュー

『劇場』の山崎賢人と行定勲監督を直撃「嫉妬心は誰にでもあるもの」

「“夢をつかんだ人間”に見える人ほど、自分はまだ夢なんてつかんでいないと思っている」(行定監督)

純文学に造詣が深い行定勲監督
純文学に造詣が深い行定勲監督撮影/河内 彩

やがて、永田は沙希のマンションに転がり込み、ヒモ同然の生活を送るようになるが、その状態についても行定監督は「そのことを最低だとは思えないです」と言う。

「家賃については、払えるほうが払えばいい。ただ、永田も素直に『払えない』と言えばいいのに言わないし、その話題になると話をそらすので、人間が小さいなとは思います。ただ、それって相手との距離感の問題なのかなと。永田は沙希に対して、自分がどう思われてもいいという距離感にいて、沙希に対して子どものように甘えている。だから沙希はどんどん“母親”みたいな気持ちになっていくんです。本来なら、不安で仕方がないのに、包容力を無理やり持たされてしまう。だいたい永田が『沙希は俺に甘い』と言っていること自体が甘えです。ただ僕は、その関係を最低とは思わないです」。

永田は沙希のアパートに転がり込み、そのまま同棲していく
永田は沙希のアパートに転がり込み、そのまま同棲していく[c]2020「劇場」製作委員会

山崎も「きっと永田は、自分が最低であることをあまりわかっていないのかもしれない」と捉えた。
「沙希ちゃんだけが唯一自分を肯定してくれる人であり、沙希ちゃんといるあの部屋だけが、そういう場所だったんだろうなと。永田はこれくらいのわがままを言っても、沙希ちゃんだったらきっと許してくれるだろうと思い、どんどんエスカレートしていってしまう。それで、本当に突き放されそうだと感じた時は、ふざけて逃げるんです。良くないことだなと思いながらもやっていたのでしょうね」。

本作では、アーティストであるKing Gnuの井口理が、永田と同い年の劇作家、小峰役に扮しているのもキャスティングの妙だ。永田が主宰する劇団「おろか」は鳴かず飛ばずだが、小峰が主宰する劇団「まだ死んでないよ」は、高く評価されていく。やがて永田は小峰に対する嫉妬心をむきだしにする。

永田と共に、劇団おろかを一緒に立ち上げた野原(寛 一 郎)
永田と共に、劇団おろかを一緒に立ち上げた野原(寛 一 郎)[c]2020「劇場」製作委員会

山崎は、永田と小峰の両方に共感できたそうだが、演じるうえで永田像を掘り下げていった。
「こういう嫉妬心は、誰にでもあるものだと思います。やっぱり仕事が上手くいっていようがいまいが、小峰のような存在の人は常にいると思うんです。でも、本作の取材で永田に共感できると言うと、『え~!?』と言われたりします(笑)。周りの評価と、自分の考える評価は違うものですし、そういうなかでの葛藤みたいなものは、昔から僕のなかにもありました」。

行定監督は、山崎が言う葛藤について「その根本にあるのは、たぶん人からの評価なんじゃないかと」と捉えている。
「山崎は、すでにある部分で俳優としての地位を確立しています。だからこそ、永田みたい役をやると『意外性がある』とみんなが思うわけで。でも、それは相当身勝手な話で、これまでみんなが“そういう山崎”を望まなかっただけのことかなと。ただ、それも一つの評価です。山崎は、成功している俳優ではあるかもしれないけど、山崎自身が自分に下す評価という部分では、決して成功しているわけではないのかもしれない。というか、夢をつかんだ人間に見える人ほど、自分はまだ夢なんてつかんでいないと思っている。そして小峰みたいな対象は、常にいるはずなんです」。

※山崎賢人の「崎」は立つ崎が正式表記
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