苦節を重ねたメル・ギブソンが醸す憂い…『ブルータル・ジャスティス』での定職処分刑事役がハマりすぎ!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
苦節を重ねたメル・ギブソンが醸す憂い…『ブルータル・ジャスティス』での定職処分刑事役がハマりすぎ!

コラム

苦節を重ねたメル・ギブソンが醸す憂い…『ブルータル・ジャスティス』での定職処分刑事役がハマりすぎ!

俳優、監督としてあふれる才能を持ちながら、問題行動も多いメル・ギブソン。そんな彼の主演最新作『ブルータル・ジャスティス』が現在公開中だ。本作でメルが演じるのは、不祥事によって定職されてしまうベテラン刑事。どこかギブソンの人生ともリンクしそうな本作を、彼のスキャンダラスな過去を振り返りながら紹介したい。

【写真を見る】数々のスキャンダルを経て、かつての活気を取り戻しつつあるメル・ギブソン
【写真を見る】数々のスキャンダルを経て、かつての活気を取り戻しつつあるメル・ギブソン写真:SPLASH/アフロ

低予算映画から大ヒットシリーズへと躍進した「マッドマックス」三部作、ダニー・グローヴァーとの凸凹コンビぶりが熱い「リーサル・ウェポン」シリーズなどでアクションスターの地位を確立したギブソン。監督としては、主演を務めた『ブレイブハート』(95)で、米アカデミー賞作品賞や監督賞など5部門に輝いた。その後も、賛否両論が巻き起こった『パッション』(04)や『アポカリプト』(06)といった話題作を立て続けに手掛けてきた。

ベテラン刑事とその相棒が強盗から金を盗もうとするが、思わぬ事態に発展する…
ベテラン刑事とその相棒が強盗から金を盗もうとするが、思わぬ事態に発展する…[c]2018 DAC FILM, LLC. All RIGHTS RESERVED

これらの経歴に反して、2006年にはスピード違反と飲酒運転で逮捕されてしまう。その際、警察官に対してユダヤ人への差別的な暴言を吐いたことが問題に。『パッション』でのユダヤ人の描写が原因でユダヤ系の団体から抗議されていたこともあり、一気にレイシストの汚名を被ることとなった。このほか、2010年には、一女を儲けた元恋人でロシア人歌手のオクサナ・グリゴリエヴァへのDVが発覚。告訴されたギブソンは、裁判によって75万ドル(約8,300万円)の慰謝料の支払いを命じられた。また、オクサナとの関係が原因で、2011年には約30年連れ添った妻にも離婚訴訟を起こされ、当時のハリウッドセレブの最高額と言われた4億ドル(442億円以上)の慰謝料を支払っている。

定職処分を言い渡されるブレットとトニー
定職処分を言い渡されるブレットとトニー[c]2018 DAC FILM, LLC. All RIGHTS RESERVED

このようにスキャンダルに事欠かないギブソンだが、そんな彼の最新作が『ブルータル・ジャスティス』だ。ベテラン刑事ブレット(ギブソン)とその相棒トニー(ヴィンス・ヴォーン)は、強引な逮捕が原因で6週間の無給の停職処分を言い渡される。家族のために大金を必要としているブレットは、強盗犯から金を強奪する計画を思い付く。ボーゲルマンという男が銀行を襲おうとしている情報を得た彼は、トニーと共にその動向を監視。犯行を実行したボーゲルマン一味を追うブレットたちだったが、追跡劇は思わぬ事態に発展する。

変装してボーゲルマン一味の金を奪おうとするブレットとトニー
変装してボーゲルマン一味の金を奪おうとするブレットとトニー[c]2018 DAC FILM, LLC. All RIGHTS RESERVED

監督を務めるのは、人食い種族とガンマンたちとの戦いを描いた『トマホーク ガンマンvs食人族』(15)、ドラッグディーラーが刑務所内である男の殺害を命じられる『デンジャラス・プリズン ―牢獄の処刑人―』(17)など、カルト的人気作を手掛けてきたS・クレイグ・ザラー。派手な演出に頼らない容赦ない暴力描写が特徴で、本作でも劇伴を極力使用せず、監視カメラから見たような引いた視点からの映像を多用し、乾ききったリアルな世界観を構築している。ブレットを演じるギブソンも、少ない語り口ながら、表情の変化や疲れを感じさせる体の動きで、追い詰められた男の悲哀や焦りを体現。この十数年で経験してきた苦労の影も合わさり、一筋縄ではいかない役柄に深みを持たせている。

メル・ギブソンの主演最新作『ブルータル・ジャスティス』
メル・ギブソンの主演最新作『ブルータル・ジャスティス』[c]2018 DAC FILM, LLC. All RIGHTS RESERVED

一時期は映画界からも距離を置かれていたメル・ギブソンだが、第二次世界大戦期の史実を映画化した監督作『ハクソー・リッジ』(16)が高い評価を得るなど、再び活気を取り戻しつつある。ますます円熟味が増し、その動向に注目が集まる彼の俳優としての魅力を改めて、『ブルータル・ジャスティス』で確認してほしい。

文/平尾嘉浩(トライワークス)

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