“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた

コラム

“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた

映画を鑑賞する際に、なにげなく聞いている様々な“音”。音楽や声、効果音など、これらの“音響”はどのように作られ、進化してきたのか?その歴史をひも解くドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』が現在公開中だ。ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・リンチといった巨匠たちへのインタビュー、名作映画のフッテージ映像なども全編に収められた本作より、“映画音響”がたどってきた進化を紹介したい。

映画の“音響”の歴史と進化に迫る『ようこそ映画音響の世界へ』
映画の“音響”の歴史と進化に迫る『ようこそ映画音響の世界へ』[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

映画音響を構成する3つの要素

映画の音響は大きく分けて、“声”と“効果音”“音楽”で構成される。これらの要素をオーケストラのように、大量にある音声トラックを重ねたり、強弱をつけたりしながら、それぞれのシーンに適した音を探っていく。

映画の音響は大きく分けて、“声”と“効果音”、“音楽”で構成される
映画の音響は大きく分けて、“声”と“効果音”、“音楽”で構成される[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

”声”の作業でまず挙げられるのは“ライブ録音”で、俳優たちのセリフを現場で録音する。しかし、実際には風の音など余計な音が多く、それら不要な音をピックアップし、環境音に置き換える“ダイアログ編集”が必要。劇中では、ロバート・レッドフォードの初監督作『普通の人々』(80)に言及し、撮影場所が空港近くの倉庫で騒音がひどく、10分のシーンに数週間をかけ、ノイズや飛行機の音を除去したエピソードが語られている。また、聞き取りにくいセリフがあった際には、そのセリフをスタジオで再録し、口の動きに合わせて編集する“ADR(アフレコ)”の工程も行われる。

映画における音の重要性を力説するジョージ・ルーカス
映画における音の重要性を力説するジョージ・ルーカス[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

声の次は”効果音”で、3種類の作業がある。まず“SFX(特殊効果音)”とは、観客にもたらす感動をより効果的にするため、実際には存在しない新たな音を作ること。劇中にも登場する『トップガン』(86)と言えば、迫力あるジョット機のエンジン音が印象的だが、実物のエンジン音は意外と弱々しいものだったそうだ。そこで、ライオンやトラ、サルなど動物の鳴き声を重ねることで、鋭く激しい音に加工していったという。
2つ目の“FOLY(フォーリー)”では、より臨場感を出すための動作音が録音される。例えば、雪の上を歩く、水場で取っ組み合うといったシーンでは、フォーリーアーティストと呼ばれる人たちが、スタジオ内で氷の上で足踏みをし、濡らした布を丸めたり引っ張ったりの動作を行う。俳優と同じように、場面に合った動作をすることで、様々な音を作りだしていく。
最後の“環境音”とは、すべてのシーンの背後にある音の層こと。都市部の喧騒に室内の物音、鳥のさえずりや川のせせらぎなど、現実に存在するあらゆる音が集められ、観客をその場にいる感覚にさせてくれる。

スティーヴン・スピルバーグの音へのこだわりとは?
スティーヴン・スピルバーグの音へのこだわりとは?[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

最後の”音楽”は、観客の心に訴えかける力を持つ劇中曲で、既存のものから、作曲家によって作られる劇伴まで様々。本作では、『ダークナイト』(08)や『インセプション』(10)などクリストファー・ノーラン監督とのタッグで知られるハンス・ジマー、『ブラックパンサー』(18)でクラシックにアフリカンミュージックの要素を取り入れたルドウィグ・ゴランソンが登場し、音楽の持つ力やそのこだわりなどが語られている。

実験的な音を作品に取り入れてきたデヴィッド・リンチ
実験的な音を作品に取り入れてきたデヴィッド・リンチ[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

これらすべての音の要素を組み合わせ、正しい場所に収めまとめるのがMIXING(ミキシング)。観客に伝えたいことを明確にし、どの音のボリュームを上げ、また抑えるのかなどを調整するため、映画の出来を左右する重要の作業と言える。





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