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“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた

コラム

“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた

巨匠のこだわりに応えた音響デザイナーの手腕

米アカデミー賞で録音賞と編集賞を受賞した『地獄の黙示録』で音響を担当したウォルター・マーチは、1969年にコッポラやジョージ・ルーカスとともに映画制作スタジオ、アメリカン・ゾエトロープ社の設立にかかわった人物。本作以外にも、野外録音を行ったロードムービー『雨のなかの女』(69)や不協和音によって登場人物の不安感を表現した「ゴッドファーザー」シリーズなど数多くのコッポラ作品に携わり、“音響(サウンド)デザイナー”という肩書きも作りだした。劇中では、マーチのように映画史に残る名作で音響を手掛けてきた音響デザイナーが紹介される。

フランシス・フォード・コッポラの作品に数多く携わってきた音響デザイナーのウォルター・マーチ
フランシス・フォード・コッポラの作品に数多く携わってきた音響デザイナーのウォルター・マーチ[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

『E.T.』(82)や「インディ・ジョーンズ」シリーズ、『エイリアン』(79)に『ブレードランナー』(82)といった名だたる作品に参加してきたベン・バート。輝かしいキャリアを持つ彼は、その初期に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)で、ウーキー族やR2-D2、ライトセーバーの音や鳴き声を制作している。“リアル”な音にこだわるルーカス監督の要望に応えるため、バートは撮影開始の1年前から各地を回り様々な音を収集。仲良くなった動物園のクマ“プー”の鳴き声からチューバッカの声を作り、“音の表情”を変化させることでR2-D2の感情表現を豊かにしている。

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に参加し、R2-D2の声などを制作したベン・バート
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に参加し、R2-D2の声などを制作したベン・バート[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

1980年代半ばになると音作りにもデジタル化の波がやって来る。設立されたばかりのピクサーで、ジョン・ラセターによる1分半の短編「ルクソーJr.」の音響デザイナーを務めたゲイリー・ライドストローム。シンクラヴィアというシンセサイザーを愛用する彼は、金属や電球、スプリングなどの音をコンピュータに取り込み、キーボードで操作することで、スタンドライトのキャラクターの喜怒哀楽を表現した。その後も、恐竜たちの自然な鳴き声を生みだした『ジュラシック・パーク』(93)、おもちゃの動作音がリアルな『トイ・ストーリー』(95)といった作品でその手腕を発揮してきた。

『ジュラシック・パーク』で恐竜たちの自然な鳴き声を作りだしたゲイリー・ライドストローム
『ジュラシック・パーク』で恐竜たちの自然な鳴き声を作りだしたゲイリー・ライドストローム[c] 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.

映画の歴史と共に進化し、知れば知るほど奥が深い映画音響の世界。劇中では音響デザイナーや監督たちによる、音響へのこだわりや熱い思いが語られる。本作を鑑賞したら、これからの映画の見方が変わるかもしれない。

文/平尾嘉浩(トライワークス)





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