コロナ禍での開催…映画祭にかける熱い想いを主催者たちが告白！【映画祭座談会・前編】

ーー第17回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、9月26日から10月4日(日)までの期間、オンラインで開催されることになりました。

「“応募していただいた作品に対する責任をとること”が、なによりも大事なことなのではないか」(長谷川)

長谷川「9月の開催に向けて、各ノミネート作品へのコンタクトを5月ごろから行う予定でした。つまり5月には、どのような形で開催するのかを決めなければいけないわけです。そんななか、4月8日以降、各社シネコンさんも休業の決定をする事態となり、我々も劇場での上映は難しいのではないかと考えるようになりました。4月半ばには、オンラインで開催すべきだという話になっていたと思います。ただ、それはパートナーとなる配信会社がないと実現できない話ですので、発表するまでには時間を要することになりました」

ーーオンライン開催を決めるまでの想いとはどのようなものでしたか？

長谷川「話し合いをしている3月の時点で、すでにかなりの数の作品が集まっていました。やはり映画祭としては、“応募していただいた作品に対する責任をとること”が、なによりも大事なことなのではないかという想いが強くありました。また、どうしてもコンペはやりたいと思っていました。その時に課題となるのが、菊地さんもおっしゃっていたように、海外ゲストだけではなく、海外の審査員を呼べないということ。結果として我々は、ビデオ会議形式で、世界中の審査員の方をお呼びして、審査をしていただくという決断をしました。今年は審査委員長に映画プロデューサーの澤田正道さんを迎えていますが、澤田さんはパリを拠点に活動されている方なんです。逆に言うと、こういった状況だからこそ、海外にいらっしゃる方ともつながることができると思い、澤田さんにお願いできたと思っています」

「映画は楽しむものだと、改めて感じています」(長谷川)

ーー皆さん、困難な状況でも映画文化の灯を絶やしてはいけないという想いがあったことがうかがえます。

荒木「映画館もお客さんがいないとつぶれてしまいますよね。だからこそ、皆さんには“日常的に映画館に行く”ということを、なんとか続けてほしいなと思っています。普段も映画館に行かない人が、映画祭に足を運ぶということは、まずないと思っていて。映画館に通う人がいてこそ、映画祭ができる。“映画館に映画を観に行く”という習慣をつけるためには、映画館に一人でいくのではなく、若い世代や、映画館に行ったことがない子どもを連れて、映画館に行くことが大事。それこそが、大人がやらなくてはいけないことなのかなと。子どもたちもそういった経験がないと、映画館にどんどん行かなくなってしまうと感じています」

長谷川「映画は楽しむものだと、改めて感じています。観客の皆さんには、映画祭を通して、世界中にはいろいろな映画があるんだと感じてもらえたらとてもうれしいです。今年、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭には、106の国と地域から、総数にすると1169作品という、17回目にして過去最高となる応募作が集まりました」

菊地「私は東宝株式会社から出向という形で、東京国際映画祭で働くようになって。昨年、初めて映画祭のなかで仕事をしてみて、『映画祭って、なんて楽しいものなんだ』と思ったんです。映画祭というのは、観客やクリエイターなどいろいろな人が集まって、交流することで、またそこから新しいものが生まれるというのを、目の前で見ることができる場所なんです。映画祭には、新たな才能を育てるという意義もあり、映画の道が開けていく可能性を感じられる場にいられることは、非常にやりがいを感じるものです。来場していただく方々にも、そういった映画祭ならではの楽しさを味わっていただけたらうれしいです」

取材・文/成田おり枝