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『渇き。』や『万引き家族』『パラサイト』も…『望み』とあわせて観たい“家族×サスペンス”映画たち

コラム

『渇き。』や『万引き家族』『パラサイト』も…『望み』とあわせて観たい“家族×サスペンス”映画たち

知られざる家族の真の姿に、残された家族が翻弄されていく

最も近い存在ながら、すべてを明かしてはおらず、互いに理解できているとは言い難い”家族”。そんな複雑でややこしい関係性をテーマにした作品は枚挙にいとまない。本作では、事件の渦中にいる息子について、警察やマスコミ、彼の同級生たちから、憶測も含めて様々な一面が家族の耳に入り、知られざる姿に気づかされいく。

加害者であっても、息子に生きていてほしいと願う母を石田ゆり子が演じる
加害者であっても、息子に生きていてほしいと願う母を石田ゆり子が演じる[c] 2020「望み」製作委員会

中島哲也監督の『渇き。』 (14)では、役所広司演じる元刑事のダメな父親が、本作で女優デビューを果たした小松菜奈扮する失踪した娘の行方を捜すことに。彼女の交友関係を調べるうちに、成績優秀な優等生だと思っていた娘の裏の顔が次々と明らかになり、父親は翻弄されてしまう。

『渇き。』のパッケージは発売中
『渇き。』のパッケージは発売中[c] 2014「渇き。」製作委員会

このほかでは、妻が行方不明になったことで、完璧に思えた夫婦の破綻した日常が浮き彫りになるデビッド・フィンチャー監督作『ゴーン・ガール』(14)、姿を消した娘のSNSに父親が触れることでその秘めた思いや悩みを知ることになる、全編がPC画面上で展開される意欲作『search/サーチ』(18)も印象的だ。

全編PC画面上で展開される『search/サーチ』
全編PC画面上で展開される『search/サーチ』[c] 2018 Sony Pictures Worldwide Acquisitions Inc. All Rights Reserved.

家族の“在り方”や“絆”を問いかける作品たち

望み』の肝になるのは、加害者か被害者かわからない息子に対する、家族それぞれの立ち位置。父親は妻や娘を守りたいという立場から、それが愛する息子の”死”を意味することであっても無実を願ってしまう。一方、母親は殺人犯でもいいから無事でいてほしいと祈り、社会的地位を失うことも受け入れる覚悟をする。有名高校への受験を控える娘は、加害者家族に待ち受ける未来に怯えている。究極の選択を迫られ、家族の在り方や絆が問われていく。


殺人事件の容疑者となった息子の無実を証明するため、母が真犯人捜しに奔走するポン・ジュノ監督の『母なる証明』(09)。形は違うが、どんなことをしても息子を救いたいという、母の強い執念が強烈な爪痕を残す作品だ。

息子の無実を願う、母の姿がヒリヒリするほど強烈な『母なる証明』
息子の無実を願う、母の姿がヒリヒリするほど強烈な『母なる証明』[c] 2009 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

家族の在り方、絆を問うという意味では、是枝裕和監督の『万引き家族』(19)も大きな話題を集めた。父親の愛人である女性に誘拐され、育てられた過去を持つヒロインの複雑な思いを描く『八日目の蝉』(11)とともに、“血のつながり”だけが家族の証明なのか、“母性”はどこに宿るのかなど、深く考えさせられる作品となっている。

現代社会に一石を投じる高いメッセージ性

『万引き家族』は育児放棄や虐待、貧困、行き届かない社会保障など日本社会が抱える問題も映しだされていたが、家族の物語を通して、現代社会に警鐘を鳴らす作品のインパクトは大きい。『万引き家族』に続いてカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞し、米アカデミー賞で作品賞など4冠にも輝いた『パラサイト 半地下の家族』(19)では、半地下の部屋に暮らす貧困家族と、豪邸に住む裕福な家族の比較がなされており、格差社会や失業問題などへの問題提起のメッセージを受け取ることができる。

格差社会に警鐘を鳴らす『パラサイト 半地下の家族』。不穏な家族描写、読めない展開にリピーターが続出した
格差社会に警鐘を鳴らす『パラサイト 半地下の家族』。不穏な家族描写、読めない展開にリピーターが続出した[c]2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

『望み』では、石川家に対する周囲の反応を通して、加害者(の可能性がある)家族に対する残酷な仕打ちに目を覆いたくなる。連日のように家の前に押しかけるマスコミの集団、外壁への落書きや誹謗中傷はもちろん、一登は決まっていた建築の仕事が白紙になり、娘の雅も塾のクラスメイトに加害者家族は志望校には受からないと言われてしまう。遺族のことを考えると非常にデリケートな問題だが、だからといってなにをしてもいいのかと、心にもやもやとしたしこりを残していく。

息子の無実を信じたい父を堤真一が演じる
息子の無実を信じたい父を堤真一が演じる[c] 2020「望み」製作委員会

観る者に多くの“気づき”を提供し、おそらく様々な議論を巻き起こすに違いない『望み』。ここで紹介した作品もあわせて鑑賞し、家族をテーマにした物語の“深み”にはまってほしい。

文/トライワークス


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