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是枝裕和とホアン・シー監督が語り合う、『台北暮色』の魅力と巨匠の素顔。「作りながらなにかを探し求めていた」

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是枝裕和とホアン・シー監督が語り合う、『台北暮色』の魅力と巨匠の素顔。「作りながらなにかを探し求めていた」

「いつ本番なのかわからないまま撮影が終わっていました(笑)」(是枝裕和)

ホアン・シー監督の師で、『台北暮色』でプロデューサーも務めた巨匠ホウ・シャオシェン監督
ホアン・シー監督の師で、『台北暮色』でプロデューサーも務めた巨匠ホウ・シャオシェン監督写真:SPLASH/アフロ

是枝「インタビューを読ませていただいた時に、監督は小さいころからホウさんを知っていたと書かれていましたが、どのようなつながりがあったのですか?」

ホアン・シー「実は父がホウ監督と同級生だったんです。その縁で『台北ストーリー』の時に現場に遊びに行ったことがあって、その時に主演のツァイ・チンさんエドワード・ヤン監督の姿も見ていました。小さい頃から映画の影響をなんとなく受けていたんだなと思います」

是枝「撮影現場でのホウさんは、『台北ストーリー』と『憂鬱な楽園』と『黒衣の刺客』の3本をご覧になっていると。彼の監督としての姿のなかで一番印象に残っていることは?」

ホアン・シー「最初は現場を見て、みんなプレッシャーが大きいだろうなと思いました。なぜならものすごく静かな現場なのです。監督はほとんど『アクション!』とか言わないので、なんとなく撮影が始まる。スタッフがちょろちょろ動いてたと思うともう本番が始まっていて、待ち時間もものすごく長い。なぜこういう現場になっているのかよくわからなかったです」

是枝「僕は93年に台湾に行って、ホウ・シャオシェン監督のインタビューを撮らせていただいたことがあって、当時は映画ではなく車のCMの現場におじゃましました。いつ本番なのかわからないまま撮影が終わってましたね(笑)。その時一番撮影したのは、撮影現場の様子じゃなく夜のカラオケで、ホウ監督は『歌うから撮れ』って(笑)。とても上手でしたけど、ホアンさんも一緒にカラオケ付き合わされたりすることが?」

ホアン・シー「確かにホウ監督は若い時からディスコとかカラオケみたいなところが大好きな方なんですよね(笑)。『黒衣の刺客』のクランクアップの際に、日本語で“流し”というんですよね、ギターを抱えてやってきて歌を伴奏してくれる人を連れてきて、一緒に歌っていました(笑)」

是枝監督が注目したラストシーンの驚くべき撮影方法とは…
是枝監督が注目したラストシーンの驚くべき撮影方法とは…

是枝「『台北暮色』に戻って、ラストシーンで車がエンストを起こして後ろの車が動けなくなる。スタッフの視点からするととんでもないシーンですが、これは許可を取ってやってるのか、それとも黙って撮ってるのかどっちですか?」

ホアン・シー「もちろんゲリラ的に撮りました。なのでプロデューサーからは『このシーンは1回でOKにしてね』と言われました。リマが実際にパニックになるところを撮りたかったんです。結局のところ、5回撮りました(笑)」

是枝「絶対ワンテイクだと思ったんですけど、良い街ですね台北。東京だと絶対無理だな…羨ましいな。ところでいまは新作の準備中ですか?

ホアン・シー「はい。パンデミックの影響で計画が遅れていますが、次の作品を準備中です!」

是枝「完成を楽しみに待っております!」

文/久保田 和馬

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