大庭功睦監督&片山慎三監督が『滑走路』トークイベントで熱い“映画製作”談義を披露!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
大庭功睦監督&片山慎三監督が『滑走路』トークイベントで熱い“映画製作”談義を披露!

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大庭功睦監督&片山慎三監督が『滑走路』トークイベントで熱い“映画製作”談義を披露!

夭折の歌人、萩原慎一郎の遺作となった歌集を原作とした『滑走路』(11月20日公開)の埼玉県特別試写会が11月8日に開催され、本作でメガホンをとった大庭功睦監督と『岬の兄妹』(19)の片山慎三監督が登壇。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」を主催する埼玉県との共同制作として立ち上がった本イベントで、長年助監督として経験を積み、ともに同映画祭で競い合った仲でもある二人が熱い映画トークを繰り広げた。

『滑走路』埼玉県特別試写会に、大庭功睦監督と片山慎三監督が登場!
『滑走路』埼玉県特別試写会に、大庭功睦監督と片山慎三監督が登場![c]2020「滑走路」製作委員会

いじめや非正規雇用を経験しながらも歌に生きる希望を託し、32歳の若さで命を絶った歌人の萩原慎一郎。本作では、多くの共感を集めた彼の遺作「歌集 滑走路」を原作としたオリジナルストーリーが展開し、水川あさみ、浅香航大、寄川歌太が人生を懸命に生きる3人の主人公たちを演じている。

イベント前の試写会で映画を鑑賞していた片山監督は、「原作は偶然知っていて読んでいたんです。歌集からよくここまで完成度の高いオリジナルストーリーを作り上げたなぁと感動しました」と熱気冷めやらぬ感想を伝え、「群像劇だと思って映画を観ていたのに、だんだんと3人の人生が交錯してきて、最後には全部がつながるという構成の妙にやられた。そしてところどころホラーっぽかったり、サスペンスっぽかったりちょっと変わった演出が加わっていて、おもしろかったですね」と大庭監督ならではのポイントも指摘してニヤリ。それに対し大庭監督は、「いつか撮ってみたいという願望があるからか、 油断するとホラー映画になってしまう傾向があるんですよね(笑)」と話しつつ、「時間が交錯していく作りについては、原作歌集の中に過去を思い返す歌と、現在の歌、さらに未来への希望を託した歌が混在していたのが着想となりました」と明かした。

【写真を見る】『滑走路』製作の裏側を語る大庭功睦監督
【写真を見る】『滑走路』製作の裏側を語る大庭功睦監督[c]2020「滑走路」製作委員会

また片山監督は、浅香航大演じる若手官僚の鷹野の職場シーンを挙げ、「ここは難しい専門用語のセリフが飛び交っていて、『シン・ゴジラ』をやられていた大庭さんっぽいのかなと(笑)。あと、予算が潤沢にある映画ではないのに、セットの作り込みも与えられたものをうまく利用し、しっかり設計されているのは助監督経験の長い監督ならでは」とさすがの指摘も。それに対し大庭監督は「片山さんも僕も助監督出身。もうお互い10年以上やってるよね。助監督経験が長いと、現場でどこにお金がかかるのか、そしてお金をかけられない場合のごまかし方をよく知っているんです」と明かし、「以前『予算の少ない映画の方がより芸術映画になる』という鈴木清順監督の言葉を聞いたことがあります。お金がなければそれをカバーするために、努力や創造力が働いて、その苦労がアートになっていく。その言葉を頼りに映画製作を行っている節もある」と自身の考えを述べ、片山監督も深くうなずいていた。

続いてキャスティングへと話が移ると、「前作『キュクロプス』の池内万作さんや杉山ひこひこさん、その前の『ノラ』で主演をしていた染谷将太さんも出演されていましたね」と片山監督。これに大庭監督は「以前に仕事をしたことのある方々が現場にいると安心します。やはり監督の現場での仕事は多い。なのですでに信頼がある役者さんにお願いできると僕もとても楽。さらに彼らは自分で役を解釈して演じてくれる優れた役者さんたちでもあるので、現場でもあまり指示は出さずに任せていました」と全幅の信頼を置いていた様子。さらに片山監督が「特に坂井真紀さんの演技には引き込まれました」と話し始めると、大庭監督も「坂井さんはすごい女優さんでした」とうなずく。「自分の出演していないパートも含めて、自分の役の役割と在り方をよく理解してくれていました。映画が伝えたいメッセージの核心部分をつくセリフがあったのですが、テストもやらず本番一発で決めてくださり、さすがだなと思いました」と撮影を振り返った。

大庭監督と同じく「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」出身の片山慎三監督
大庭監督と同じく「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」出身の片山慎三監督[c]2020「滑走路」製作委員会

これまで自主映画の制作にも精力的に取り組んできた二人。自主映画と商業映画の違いについて聞かれると、大庭監督は迷わず「違うのは予算だけ」ときっぱり。「もちろん予算があれば機材の量も増えるし、現場がスムーズになってやりやすくもなる。でもみんなをまとめる監督の仕事としては、自主でも商業でも変わりません」という言葉に、片山監督も賛同していた。

新たな才能の発掘と映像クリエイターの育成を掲げる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」。2018年にノミネートされたことについて振り返ると、片山監督は「軽い気持ちで応募したのですが、おかげ様でいろんな方々に映画を観て頂けて、そこから仕事につながっていきました」と回顧。大庭監督も「現場に人を送り出す映画祭のイメージ。中野量太さんや、白石和彌さん、上田慎一郎監督もみんなここで成果を得て、商業映画でも評価されている。『キュクロプス』を出したのは、映画祭の働きが好きだったから、ここで認められたい一心でした」と明かし、ともに同映画祭へ感謝の意を述べた。

『滑走路』は、11月20日(金)より公開
『滑走路』は、11月20日(金)より公開[c]2020「滑走路」製作委員会

また『滑走路』の公開1週前の11月13日(金)からは、片山監督の新作『そこにいた男』が公開される。すでに映画を観ていた大庭監督は「壇上で褒め合うのは気持ち悪いかもしれないけど(笑)、お世辞抜きで本当におもしろかったです。実際に起きた事件をモチーフにオリジナルストーリーを作られているんですが、男と女のもつれの中にある一瞬の美しさをうまく切り取っていたように思いました。片山さんの映画で!?と自分でもびっくりしましたが泣きました」と赤裸々に感想を述べ、片山監督も恐縮しきり。イベントの最後には、片山監督が「『滑走路』本当にいい映画なのでぜひ広めてください!」と呼びかけると、大庭監督も「『そこにいた男』、充実した映画体験となること請け合いなので、ぜひ観てください。そのあとにはぜひ『滑走路』もね」と、お互いの映画をアピールし合っていた。

文/富塚沙羅

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