犯人と人質の間に生まれる奇妙なつながり…『狼たちの午後』『普通じゃない』など“ストックホルム症候群”にまつわる映画5選|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
犯人と人質の間に生まれる奇妙なつながり…『狼たちの午後』『普通じゃない』など“ストックホルム症候群”にまつわる映画5選

コラム

犯人と人質の間に生まれる奇妙なつながり…『狼たちの午後』『普通じゃない』など“ストックホルム症候群”にまつわる映画5選

誘拐や監禁事件の人質が犯人に好意を抱いてしまう“ストックホルム症候群”。その語源となったスウェーデンの有名な銀行強盗事件を映画化したクライムスリラー『ストックホルム・ケース』が公開中だ。極限状態に置かれた人々が結ぶこの奇妙な絆は、過去に何度も映画の題材にされてきた。その最新作にして原点でもある本作を中心に、印象的な類似作品を紹介したい。

アル・パチーノが社会的弱者のヒーローに祭り上げられる『狼たちの午後』

1972年にニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件をアル・パチーノ主演で映画化した『狼たちの午後』(75)。パチーノ演じる主人公のソニーが仲間とともに小さな銀行を襲うも、計画性のなさからあっという間に警官隊に取り囲まれ、人質を取って立て籠もってしまう。しかし、手荒な手段を使わない紳士的なソニーと人質にはいつしか連帯感が芽生え始め、さらに彼が同性愛者でベトナム帰還兵だったことからも、(観客を含む)大勢が彼の境遇に同情して社会的弱者のヒーローとして祭り上げられていく。米アカデミー賞にて作品賞を含む6部門にノミネートされ、脚本賞を受賞したほか、英国アカデミー賞でもパチーノが主演男優賞に輝いた。

アル・パチーノが主人公の銀行強盗を演じる(『狼たちの午後』)
アル・パチーノが主人公の銀行強盗を演じる(『狼たちの午後』)[c] 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

誘拐犯と社長令嬢の恋が描かれる『普通じゃない』

ダニー・ボイル監督が『トレインスポッティング』(96)に続いて、ユアン・マクレガーを主演に迎えた『普通じゃない』(97)。マクレガー扮するしがないビル清掃員と、ひょんなことから彼に誘拐されてしまった社長令嬢との恋の行方が描かれる。人間社会に真実の愛を取り戻すため、天国から天使が派遣されたことが事の発端になるなど、オフビートでユーモラスな展開が特徴。反発しながらもしだいに惹かれていく、格差カップルをマクレガーと令嬢役のキャメロン・ディアスがみずみずしく体現している。

反発しながらも互いに惹かれていく(『普通じゃない』)
反発しながらも互いに惹かれていく(『普通じゃない』)[c]2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

強盗犯と保安官がトランクの中で意識し始める『アウト・オブ・サイト』

名匠スティーヴン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーのタッグ作『アウト・オブ・サイト』(98)も、この現象に通じる要素を持った作品だ。銃を持たないことがポリシーの銀行強盗ジャック(クルーニー)は、逃走車の故障で運悪く刑務所に収監される。相棒とともに脱獄を実行するが、連邦保安官のカレン(ジェニファー・ロペス)に運悪く見つかり、彼女を車のトランクに押し込むことに。逃走中、彼女が抵抗できないように、ジャックもトランクに入り、狭い空間で会話を重ねるうちに互いに意識し始めていく。
全米映画批評家協会賞で作品賞を受賞するなど、カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた『セックスと嘘とビデオテープ』(89)の成功以降、キャリアの低迷期にあったソダーバーグが復活するきっかけとなった本作。このあとソダーバーグとクルーニーは、「オーシャンズ」シリーズや『ソラリス』(02)といった作品を手掛けることになる。

ジョージ・クルーニーが銃を持たない銀行強盗を演じる(『アウト・オブ・サイト』)
ジョージ・クルーニーが銃を持たない銀行強盗を演じる(『アウト・オブ・サイト』)Fim [c] 1998 Universal Studios. All Rights Reserved.

突然監禁された女性の身に起こる恐怖…『ベルリン・シンドローム』

ベルリン・シンドローム』(16)はオーストラリアのサスペンス・スリラー。オーストラリアからドイツのベルリンにやって来たバックパッカーのクレアは、アンディと名乗る地元の男性と意気投合し、そのまま彼の部屋で一夜をともにすることに。翌朝、目覚めたクレアは、ドアに鍵がかかって出られないことに気づくのだが…。ドアを施錠するだけでなく、窓を二重窓にし、彼女の携帯電話からSIMカードも抜き取って居場所がわからないようにしてしまうアンディには、罪の意識はまったくない。そんな彼に対して、長期間の監禁の末にクレアの心には不可思議な同情心が沸き上がっていく。
『きみがくれた物語』(16)などに出演してきたテリーサー・パーマーが監禁された女性の恐怖を体当たりで熱演。脱出の機会をうかがうクレアと、彼女の希望をことごとく砕いていく男の駆け引きから目が離せない。

脱出の機会をうかがうヒロインとその希望を砕く誘拐犯との攻防が展開される(『ベルリン・シンドローム』)
脱出の機会をうかがうヒロインとその希望を砕く誘拐犯との攻防が展開される(『ベルリン・シンドローム』)[c]2016 Berlin Syndrome holdings Pty Ltd, Screen Australia. All Rights Reserved
■『狼たちの午後』
Blu-ray 発売中
価格:2,381円+税
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

■『普通じゃない』
DVD 発売中
価格:1,419+税
発売・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン

■『アウト・オブ・サイト』
Blu-ray 発売中
価格:1,886 円+税
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

■『ベルリン・シンドローム』
DVD 発売中
価格:3,900円+税
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング

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