「舞台と配信、二つの歌舞伎が存在する時代に…」松本幸四郎と市川猿之助が新時代の歌舞伎を語る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「舞台と配信、二つの歌舞伎が存在する時代に…」松本幸四郎と市川猿之助が新時代の歌舞伎を語る

インタビュー

「舞台と配信、二つの歌舞伎が存在する時代に…」松本幸四郎と市川猿之助が新時代の歌舞伎を語る

松本幸四郎と市川猿之助の二人がお騒がせコンビの“弥次さん”、“喜多さん”を演じる大人気シリーズの最新作「図夢歌舞伎『弥次喜多』」が、12月26日からAmazonプライム・ビデオで独占レンタル配信中。新作歌舞伎を“配信”で初披露するのは、400年を超える歌舞伎の長い歴史の中でも画期的な初の試みだ。

しかも、市川猿之助が一般演劇に初めて出演した名作「狭き門より入れ」(前川知大 作・演出)を原作にした今回の「弥次喜多」は、疫病が蔓延した江戸を舞台とした日本の“いま”ともリンクする、笑えて、ちょっぴりゾクッとするSFストーリー。それを、市川中車(香川照之)や2016年から「弥次喜多」に出演し続けている松本幸四郎の長男・市川染五郎、市川中車の長男・市川團子ら豪華共演陣を迎え、スタジオに立てた“万屋(江戸時代のコンビニ)”のセットで、まるで映画のようにワンシチュエーションで撮影したというから興味深い。

図夢歌舞伎「弥次喜多」は、疫病が蔓延した江戸を舞台とした“いま”の日本ともリンクするSFストーリー
図夢歌舞伎「弥次喜多」は、疫病が蔓延した江戸を舞台とした“いま”の日本ともリンクするSFストーリー図夢歌舞伎「弥次喜多」 Amazon Prime Video 12月26日より独占レンタル配信開始 [c]松竹

はたして、どんな作品に仕上がったのか?新作歌舞伎の配信での初披露に込めた思いと願いとは!?“弥次さん”こと弥次郎兵衛を演じた松本幸四郎と、監督・脚本・演出を兼任しながら“喜多さん”こと喜多八に扮した市川猿之助に撮影を振り返っていただいた。

「図夢歌舞伎の『弥次喜多』でいまやるべきストーリーだと思ったんです」(猿之助)

【写真を見る】「弥次喜多」バディで笑顔爆発!2人が思う、いままでと違う見どころとは?
【写真を見る】「弥次喜多」バディで笑顔爆発!2人が思う、いままでと違う見どころとは?撮影/黒羽政士

――「忠臣蔵」に続いて、図夢歌舞伎で「弥次喜多」をやることになった経緯を教えてください。
幸四郎「コロナ禍で、歌舞伎が舞台でできなくなってしまった。しかも、いつできるのかもわからないし、この状態が続いたらずっとやれないかもしれない。だったら、芝居をやれる場を探さないといけないということになって、たどり着いた唯一の場所が“配信”でした。そこで今年(2020年)の6~7月に『忠臣蔵』をやらせてもらい、次になにを?という話になった時に、僕たちが毎年8月に歌舞伎座で上演してきた『弥次喜多』をやろうという話に自然になっていきました」

猿之助「コロナで働く場所、表現する場所がなくなったわけですから、“配信”の話をもらった時は本当にありがたいなと思いました。それに、毎年新作を生みだしてきた『弥次喜多』をなんとか続けたいとも思っていたので、それが今回の“図夢歌舞伎”のタイミングとうまく合ったんです」

“喜多さん”こと喜多八を演じる猿之助
“喜多さん”こと喜多八を演じる猿之助図夢歌舞伎「弥次喜多」 Amazon Prime Video 12月26日より独占レンタル配信開始 [c]松竹

――その新作の題材に、猿之助さんも出演された舞台「狭き門より入れ」を選ばれたのはどんな理由からですか?
猿之助「残るものなので、間に合わせでやるものにはしたくなかった。準備期間が短い中で、脚本がおもしろくてお客さんに大きな感動や問題意識を届けられるものはなにかな?と考えた時に、ポ~ンと浮かんたんです。『狭き門より入れ』はパンデミックの話ですからね。しかも、上演した10年前はそれが絵空事だったけれど、いまは自分たちの身に実際に起こっていることでもあるので、笑いもありつつ、お客さんも観終わった時には背筋がプルっと震えていたりする。それをいまやることに僕は意味があると思うんです」

幸四郎「『自分がやった芝居にこういう話があってね』って、猿之助さんから最初に話を聞いた時はビックリしましたよ。どうして、パンデミックが『弥次喜多』とつながるんだ?と思って(笑)。だから、慌てて『狭き門より入れ』のDVDを買って観て、細かいアレンジに関しては、猿之助さんと相談しながら作り上げていきました」

「喜多さんのことを強く思う、いままでとは違う弥次さんが見どころです」(幸四郎)

“弥次さん”こと弥次郎兵衛を演じる幸四郎
“弥次さん”こと弥次郎兵衛を演じる幸四郎図夢歌舞伎「弥次喜多」 Amazon Prime Video 12月26日より独占レンタル配信開始 [c]松竹

――そんななかでの本作の見どころは?

猿之助「僕がやりたいと言ってやった、ハリウッド映画みたいなオープニングですね。そこで予算を使い果たしたんじゃないかって思うぐらい凝っています。あとは、やっぱり物語の内容がいまだからこそ興味深いですよ」

幸四郎「僕が演じている弥次さんは、ポジティブなのか鈍感なのかわからないけれど、物事を積極的に楽しむ人で、そこが彼の魅力です。でも、今回は弥次さんが喜多さんや周りの人の幸せについて真剣に考える姿が描かれていて。そこは、いままでの『弥次喜多』と違う見どころだと思いますね」


猿之助「『狭き門より入れ』の世界を『弥次喜多』の設定とどう結びつけたらいいのか?そこは悩みましたけど、いざやってみたら、我々のいまの関係の積み重ねがあったから、自然となじんでいきました。ただ、脚本通りにやってもおもしろくないし、そこは難しいところでした」
幸四郎「僕はなにか特別な工夫をするというより、とにかく黙らず、中車さんからセリフもらったら返す、もらったら返すということを繰り返していました(笑)」

猿之助「アドリブの中車さんですから、丸投げにしてもなにか味つけしてくれるんですよ(笑)」

幸四郎「台本にはないそんなやりとりで、おかしみを出すようにしたんです」

猿之助と中車が見せる“半沢”ネタにも期待!
猿之助と中車が見せる“半沢”ネタにも期待!図夢歌舞伎「弥次喜多」 Amazon Prime Video 12月26日より独占レンタル配信開始 [c]松竹

――猿之助さんと中車さんのかけあいでは「『半沢直樹』」を連想する人も多いと思うんですけど、本作でもあの顔芸は取り入れているのでしょうか?

猿之助「“半沢”のネタももちろんやりましたよ。そこはちゃんと仕掛けておかないと(笑)」

幸四郎「皆さん期待していますからね(笑)」

猿之助「そこは気持ちよく応えます(笑)」

■図夢歌舞伎「弥次喜多」(ずぅむかぶき やじきた)
配信元:Amazon Prime Video(国内独占レンタル配信) 112分
独占配信開始:2020年12月26日(土)
レンタル料:1,900円(税込)

■予告編


■特別映像

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