國村隼が韓国で外国人初の男優助演賞を受賞!その壮絶な舞台裏とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
國村隼が韓国で外国人初の男優助演賞を受賞!その壮絶な舞台裏とは?

インタビュー

國村隼が韓国で外国人初の男優助演賞を受賞!その壮絶な舞台裏とは?

『チェイサー』(08)や『哀しき獣』(10)のナ・ホンジン監督が、観る者の度肝を抜くような凄まじいサスペンス『哭声/コクソン』(3月11日公開)を放つ。韓国の第37回青龍映画賞で5冠を獲得し、國村隼に外国人初の男優助演賞受賞をもたらした。来日したナ・ホンジン監督と、彼がリスペクトしてやまないという國村にインタビューを敢行した。

國村が演じたのは、平和な田舎の村にやってきた“よそ者”だ。この謎めいた男の噂が広がるにつれ、村人が自分の家族を殺す残虐な事件が多発していく。殺人犯たちは濁った眼をしておびただしい湿疹が出ている。事件を捜査する村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は、自分の娘にも同じような湿疹が出ていることに気付き、このよそ者の男を追い詰めていく。

國村演じるこの男は、「イエス・キリストがベースになったキャラクターだ」とナ・ホンジン監督は語る。國村は裸で滝に打たれたり、恐ろしい悪鬼のような風貌になったりして鬼気迫る演技を見せた。

「すべてのことが初めてという経験に近いものでした。こういうキャラクターをやったことも、韓国映画に出演したこともそうですし、自分にとっては新鮮な経験でした。肉体的には非常にハードで、たぶんいままでやった映画のなかでいちばん体力を使った映画だったと思います」。ナ・ホンジンが「そんなことないでしょ?」とツッコむと、國村は「いやいや、これがいちばんです」と笑った。

いわゆる善人キャラである警官ジョングだが、娘の命を救うためによそ者の男のすみかへ赴き、愛犬を殺したり、家をめちゃくちゃにしたりする暴挙に出る。まさに追い詰められた人間そのものの恐怖が浮き彫りになるシーンだ。國村はこのシーンでのクァク・ドウォンのバイタリティに感心したそうだ。

「あの撮影でジョングが使ったのは本物のツルハシなんですが、クァクさんはあれを何度も何度も振り下ろしていたんです。僕はじっと見ているだけで良かったのですが、クァクさんは大変だったと思いますよ」。

ナ・ホンジン監督は同シーンについて、撮影を止められる状態ではなかったと振り返る。「クァク・ドウォンと國村さんという主演級の俳優さん同士が共に息を合わせるシーンは1本の映画でそう多くはないんです。そういう時はすごいことになるので、言葉でどうこう言うことができないですね。あたかも演技を通して2人が闘っているような感じで、すごいエネルギーを噴出させているから。ツルハシの上げ下ろしを何度もしていたけど、疲れたら自分で自制してくるだろうと思っていたから、僕は何も言わなかったです。ただ、実際にクァク・ドウォンさんは手首を痛めました。100回くらい撮ったかな?確かにへとへとになっていました」。

國村も「大変なシーンでもやっているもの同士は楽しいんですけどね」と苦笑い。「ある意味、娘を思う父親の思いの強さを表現として見ればわからないでもないかなと。でも、クァクさんはたぶん筋肉痛がすごかっただろうと思います」。

國村はリドリー・スコット監督作『ブラック・レイン』(89)や『キル・ビルvol.1』(03)などのハリウッド映画や香港映画など海外の作品にも多数出演してきたが、そのことについて特に気負いはないようだ。

「自分が知らない国の人たちと映画を作ることをすごく面白がれるんです。僕が初めて映画というものにふれたのは、井筒和幸監督の『ガキ帝国』(81)でしたが、10年後くらいに『ブラック・レイン』でハリウッドのシステムを知り、その後香港でもいくつか撮りました。そう考えてみると映画のスキルはまず外から入ってきているのかもしれない。そういう経緯があるから海外で知らない人とやることに違和感がないし、自分にとってはどこか当たり前なことでもあります。結果、初めてやった韓国映画で賞もいただいて、また韓国のお客さんたちが日本の俳優に少しでも興味をもってくれたらうれしいことだとは思いますが。映画というメディア自体は1つの国のなかに収まっているものじゃないですし」。

ナ・ホンジン監督は、韓国のスタッフや俳優陣みんなで、國村の姿勢に感銘を受けたと言う。「みんなが國村さんを見てびっくりしていました。國村さんは外見だけではなく内面の深さにも斬り込んでいく。私自身、あそこまでプロフェッショナルな演技をされる方は初めて見ました。國村さんの演技を見る時は、どういう演技をしてくれるのか好奇心の方が大きくて、毎回撮影をするのが楽しみでした。國村さんはいつも私が考えていた以上のものを作ってくださる。今回多くのことを学ぶことができましたし、いろんなことで助けてもらいました。本当に尊敬に値する大先輩で、大好きです」。

國村もナ・ホンジン監督について「才能が人の形をしたような人」と手放しで絶賛する。まさに相思相愛のとても素晴らしいコラボレーションができたのだ。【取材・文/山崎伸子】

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