菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ”|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ”

インタビュー

菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ”

「息子を殺したのは私ですか――?」という衝撃の台詞に慄然とさせられる、映画『明日の食卓』。椰月美智子の同名小説が、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子という豪華な布陣で映画化された。3人はそれぞれ、同姓同名の“石橋ユウ”という10歳の男の子を育てる母親を演じている。

菅野は、2人の男の子を育てながら仕事に復帰した、43歳のフリーライター、留美子に。高畑は、仕事をいくつも掛け持ちしながら、必死で息子を育てている30歳のシングルマザー、加奈に。そして尾野は、年下の夫と優等生の息子と、夫の実家に隣接する新築一戸建てに暮らす36歳の専業主婦、あすみに。住む場所も家庭環境もまったく異なる彼女たちが、それぞれの家庭で葛藤と問題を抱え、それを乗り越えようともがき、奮闘する姿がリアルに映しだされていく。

「瀬々監督って“ここだ!”という時の画面への集中力がすごいんです」(菅野)

監督は、『糸』(20)や『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)など、女性向けの作品をフィルモグラフィに持ちつつ、『64-ロクヨン- 前/後編』(15)、『友罪』(17)、『楽園』(19)など、硬派な社会派映画の名手として誉れ高い瀬々敬久だ。3人共に、瀬々組には初参加。菅野は「瀬々監督というと、男性が主人公の作品を多く撮られている方という印象を持っていました。若手からベテランまで、幅広い年齢の男性俳優さんたちからの、厚い信頼を感じるというか」と語る。

【写真を見る】菅野、高畑、尾野が理想の家族像について語る!3人の撮り下ろし写真も掲載
【写真を見る】菅野、高畑、尾野が理想の家族像について語る!3人の撮り下ろし写真も掲載撮影/杉 映貴子 ヘアメイク/北 一騎(Permanent ) スタイリスト/青木 千加子

硬派な作品作りをする印象が強い一方で、現場では非常にシャイ――とりわけ相手が女性だとかなりの口下手――であると、これまで何度か耳にしてきた。3人も、“現場ではほぼなにも言われなかった”と口を揃えた。高畑によると、「初日に不安すぎて、つい監督に『私、大丈夫ですか?』と聞いてしまいました。そうしたら『ま、大丈夫なんじゃない?』とサラッと言われて(笑)。私が勝手に不安になっていただけですが、ずっと“不安だ”と思いながらやり続け、そのまま撮影が終わった感じ」だったそう。菅野もそれに同調し、「私もすごく不安だった」と振り返った。


一方の尾野は、「私は最初からなかなか話されない方だと思っていたので、逆に私からどうでもいい話をしてみました。『トイレ行きました?』など、冗談みたいにどうでもいいことを聞いて(笑)。なにか入口を探そうとしましたが、それでもやっぱり監督からは来てくれなかったです」と、果敢に試みた事実を告白する。

高畑が演じるのは、仕事を掛け持ちして生計を立てる30歳のシングルマザー、加奈
高畑が演じるのは、仕事を掛け持ちして生計を立てる30歳のシングルマザー、加奈撮影/杉 映貴子 ヘアメイク/根本 亜沙美 スタイリスト/Shohei Kashima(W)

しかし、それでも数々の話題作を生みだしてきた、監督・瀬々の手腕は疑うべくもない。本作における3人の演技も鬼気迫るものがあり、観る者をグッと惹き付けずにはおかない。“どういう演出をされたか”ということに対しては、3人とも言葉を探し続けてしまうが、菅野が「ただ、瀬々監督って“ここだ!”という時の画面への集中力がすごいんです。“いま、なんか上手くいっている”ということは、監督の目線で感じることができて」と思い当たって目を輝かせると、尾野も合いの手を入れた。

「そうそう!そういう時は、急に声が大きくなるんですよね。カット割りにはないけれど、スタッフさんへ『もう1カット撮るよ』と急に言い出したり。『いま、光が欲しい、光だ!』と大声を出したり(笑)。画面への集中力が半端ないんです」。

そういう時の現場の空気や動きを、菅野が「長く瀬々組でやって来られたチームなので、スタッフさんたちが“瀬々さんがノッて来たぞ”というタイミングに、食らいつく感じなんです。これまで培われてきた瀬々組の厚い信頼や、言葉ではない言語を感じました」と明かしてくれた。

尾野が演じるのは、夫と優秀な息子と豪邸で暮らす36歳の専業主婦、あすみ
尾野が演じるのは、夫と優秀な息子と豪邸で暮らす36歳の専業主婦、あすみ撮影/杉 映貴子 ヘアメイク/黒田 啓蔵(Iris) スタイリスト/伊藤 真弓(BRÜCKE)

時折、現場にみなぎる監督の情熱や要求が、作品を人々の胸を打つ血の通ったものへと高めていくのだろう。菅野が「不思議ですが、そういうものが我々の芝居に還元されていくのだと思います。結局は(伝わるかどうかは)芝居、という部分があるので…」と語ると、高畑も「不安になりながら演じるからこそ、ということなんでしょうね」と頷く。尾野も「緊張感があってこそ、出てくる演技があるんだろうね」と考えながら同意した。

衣装協力/
菅野…ネックレス¥2,200,000、ブレスレット¥792,000、イヤリング¥2,035,000/ミキモト
高畑…ワンピース¥73,000/VIVIANO(VIVIANO)、シューズ¥32,000/lostinecho(VIVIANO)、ピアス¥63,000、リング¥67,000/すべてCHARLOTTE CHESNAIS(EDSTRÖM OFFICE)
尾野…ピアスtalkative(トーカティブ)
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