「妖怪・特撮映画祭」の特撮講座であふれる特撮愛!原口智生が“修復師”になった理由とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「妖怪・特撮映画祭」の特撮講座であふれる特撮愛!原口智生が“修復師”になった理由とは?

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「妖怪・特撮映画祭」の特撮講座であふれる特撮愛!原口智生が“修復師”になった理由とは?

妖怪大戦争 ガーディアンズ』(公開中)にあわせ、角川シネマ有楽町とところざわサクラタウン・ジャパンパビリオン ホールBで開催されてきた「妖怪・特撮映画祭」。現場の第一線で活躍中の特撮スタッフを招いたトークイベント「特撮講座」も週替りで行われてきた。最終日となる8月12日に角川シネマ有楽町で行われた「特撮講座」第3弾では、10代の頃から造型師、特殊メイクアーティストとして活躍し、現在は特撮プロップの修復師として活動中の原口智生が登壇した。

原口は、特撮映画との出会いについて「僕は1960年生まれで、映画館で最初に観た怪獣映画は、東宝の『三大怪獣 地球最大の決戦』で、渋谷東宝で観た記憶があります。他にも、同じく東宝の『怪獣大戦争』や『フランケンシュタイン対地底怪獣』も観ました。ただ、記憶には残っていませんが、その前にも、『キングコング対ゴジラ』や『海底軍艦』にも連れて行かれたと家族から聞いたことがあります。当時、テレビで『ウルトラQ』が始まって、怪獣・特撮作品が爆発的ブームになっていました」と当時を振り返った。


【写真を見る】「妖怪・特撮映画祭」のポスタービジュアルには、大魔神や妖怪が勢ぞろい!
【写真を見る】「妖怪・特撮映画祭」のポスタービジュアルには、大魔神や妖怪が勢ぞろい!

大映映画で一番最初に観たのは『大怪獣ガメラ』(65)で、昭和ガメラシリーズは全8作を公開当時、映画館の封切りで観たそうで、ほかにも、「東映まんがまつり」、松竹の『宇宙大怪獣ギララ』(66)、日活の『大巨獣ガッパ』(67)など、幼稚園のころから1人で映画館に足しげく通っていたという。

「東宝の整音技師だった祖父・下永尚の影響で幼いころから東宝撮影所に通っていました。最初に東宝撮影所で見せてもらったのは1966年の『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』で、東京の街のミニチュアセットを見て、その後、『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』で、ゴジラと“赤イ竹”という秘密結社が戦っているのを見て、すごいなと思いました。東宝特殊美術課というビルや怪獣の着ぐるみやミニチュアを作っている場所に入り浸っていました」。

現在の修復師というキャリアに至った経緯については「小さいころから、撮影が終わると捨てられそうになったものをもらってきて、家にため込んでいたのを個人の趣味で修復していました。その趣味が高じて、アーカイブとして後世に残そうという動きにつながりました」と語った。

「妖怪・特撮映画祭」で、「大魔神」三部作が4Kで蘇る!
「妖怪・特撮映画祭」で、「大魔神」三部作が4Kで蘇る![c]KADOKAWA1966

大映京都撮影所にも、メイクアップの仕事で閉鎖の直前に行き、『大魔神怒る』(66)や『妖怪百物語』(68)の撮影台本や画コンテなどをもらってきたそうだ。

「当時、ハリウッドの映画は、画コンテ通りに作られることが多かったと聞いたことがありますが、日本の映画でここまで画コンテ通りに、まるで設計図のように緻密に作られていたことには驚きました。4K修復された本編も、ただ高画質なだけでなく、フィルムで捉えたまま修復されている。撮影助手として参加された宮島正弘キャメラマンが修復を監修されているので、当時の大映京都のテイストが遜色なく残っていて、人類の財産と言えるほどすばらしい。音もクリアに修復されていて、いままで聞こえていなかったセリフがハッキリ聞こえます」。

現在、特撮プロップの修復師として活動中の原口智生
現在、特撮プロップの修復師として活動中の原口智生

修復にあたって心がけていることがあると言う原口。「『大魔神』三部作の森田富士郎キャメラマンなど、当時の諸先輩方とご縁があり、お話を伺っていたので、自分が見聞きした記憶から、それぞれの工房の特徴はわかっていました。なるべく捏造はしないよう常に気をつけています。着ぐるみはゴム素材で作られることが多いので、時間とともに加水分解が進んで、劣化してしまう。僕は、オリジナルの形が良い状態の時に、オリジナルが少し傷んでも、型を取って複製して、劣化をしない素材に置きかえて残すようにしています。朽ちた状態で大事に取っておくよりも、オリジナルに近い形に修復して、後世に残したい。まず作品がすばらしいことが一番大事で、そのすばらしさの秘密、制作過程の証を中間制作物と合わせて見ていただけるのが良いですね」。

まさに先人たちが作り上げてきた歴史の重みを感じさせられた「妖怪・特撮映画祭」。いよいよ『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が公開されたので、ダイナミックな令和版の妖怪映画も大スクリーンで体感していただきたい。「妖怪・特撮映画祭」は9月2日(木)まで角川シネマ有楽町で開催中だ。

文/山崎伸子


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「妖怪」三部作の4K修復版、「大魔神」三部作の4K修復版、そして昭和ガメラシリーズなど、アナログ特撮の魅力にあふれた作品群を一挙上映する「妖怪・特撮映画祭」。その開催を記念して、公式パンフレットを発売。妖怪、幽霊、怪獣、宇宙人らが登場する上映作品の解説に加え、4K修復監修を務めた宮島正弘カメラマンに聞く裏話や、豪華執筆陣による特撮愛あふれる寄稿、インタビューなどを収録。
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