大泉洋を実写版とコミック版で見比べ!『騙し絵の牙』を3つのメディアで徹底的に堪能|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
大泉洋を実写版とコミック版で見比べ!『騙し絵の牙』を3つのメディアで徹底的に堪能

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大泉洋を実写版とコミック版で見比べ!『騙し絵の牙』を3つのメディアで徹底的に堪能

9月3日(金)にBlu-rayとDVDがリリースされる、大泉洋の主演映画『騙し絵の牙』。原作小説をほかにはあまり類を見ない驚愕の脚色で再構築した映画版はもちろん、小説やコミックとのメディアミックスによって多角的に楽しめる、前代未聞の社会派エンタテインメントになっている。


『騙し絵の牙』のBlu-ray&DVDは9月3日(金)発売
『騙し絵の牙』のBlu-ray&DVDは9月3日(金)発売DVD通常版 9月3日(金)発売 価格:4,180円(税込み)  発売・販売元:株式会社KADOKAWA [c]2021 「騙し絵の牙」製作委員会

映画化前から主演は決まっていた!?あて書きされた小説版

原作は、未解決事件のグリコ・森永事件をモチーフにした「罪の声」で第7回山田風太郎賞を受賞した塩田武士の同名小説だが、そもそも、この小説から意表をついていた。なにしろ塩田は、主人公となる型破りの雑誌編集長、速水輝に国民的俳優である大泉をあて書きして物語を進める画期的なスタイルにチャレンジしたのだから。

しかも、そのことをわざわざ公表し、発売中の文庫版でも巻頭や各章の扉に大泉の写真を挟み込むことで、読者が自然に大泉をイメージしながら読み進めるように仕組んでいる。そのうえ、本の最後では大泉自身が解説を書いており、「僕のなかにある決して分かりやすくないものを掘り起こしてくださったんだろうな」という本人にしか分からない絶賛コメントを寄せているのだ。

原作小説であて書きされた大泉洋が、主人公でカルチャー誌「トリニティ」の編集長である速水を演じる
原作小説であて書きされた大泉洋が、主人公でカルチャー誌「トリニティ」の編集長である速水を演じる[c]2021 「騙し絵の牙」製作委員会

そんなハイレベルな小説の映画化となると当然ハードルが高くなるが、原作者の塩田は、2019年、映画がクランクインした直後に「ダ・ヴィンチニュース」のインタビューで、「できあがった小説を大泉さん主演で実写映画化する、というところまで持っていくのが当初からの目標」ときっぱり。そして、そこに果敢に挑んだのが『桐島、部活やめるってよ』(12)などの奇才、吉田大八だったわけだが、そこはさすが、吉田監督!小説界からの挑戦状を受け、これまた斬新すぎる手法で映画版としての『騙し絵の牙』をまんまと完成させた。

それこそ、原作を読んでから映画を観た人は冒頭の数シーンで戸惑い、それが徐々に驚きに変わっていったに違いない。映画を観てから小説を読んだ人も同様の感想を持ったはずだ。というのも、小説と映画では、物語も登場人物たちの行動もまったく違うから。通常、小説の映画化は、原作全体のストーリーをコンパクトにまとめたり、原作の特定のエピソードを膨らませることが多いが、本作の場合はそのどちらでもない。

薫風社の次期社長の座をねらう東松(佐藤浩市)
薫風社の次期社長の座をねらう東松(佐藤浩市)[c]2021 「騙し絵の牙」製作委員会

吉田大八&楠野一郎の脚色によって大きく生まれ変わった映画版

原作では、担当雑誌「トリニティ」が廃刊の危機に追い込まれた編集長の速水が、社内の権力争いに巻き込まれながらも、持ち前の行動力と豊かな発想で雑誌の立て直しに奔走する姿を活写。それまでの多彩な人脈をフルに使った速水の逆転劇を爽快に描き、その一方で“騙し”の裏の顔を持つ彼がどうして誕生したのかに迫る幼少期などにも触れていた。つまり、速水という人物に大きくスポットを当てる形で物語を展開させている。

ところが、吉田監督と、『天空の蜂』(15)『東京喰種 トーキョーグール』(17)を手掛けた楠野一郎が脚本を書いた映画の構造や展開はそうではない。映画では、小説ではちょっとしか出てこない編集者の高野恵をクローズアップ。松岡茉優扮する昔ながらの本屋の娘である彼女の目線で速水を描き、雑誌業界を見つめながら、ここぞという時に速水が彼女を巧妙に使って、社内の敵や時代遅れなのにふんぞり返っている金食い虫の大御所作家をスカッと欺くというスタイルがとられている。

速水に振り回される編集者の高野を演じる松岡茉優
速水に振り回される編集者の高野を演じる松岡茉優[c]2021 「騙し絵の牙」製作委員会

しかも、小説にはできない、“生身”の大泉洋を使える映画ならではの表現を最大限に利用し、彼のパブリックイメージを逆手にとった、それこそ“騙し”の演出で原作に真っ向から勝負。速水の過去やプライベートをばっさりカットしながらも、大泉洋その人ですべての行動に説得力を持たせ、原作の描く雑誌業界の穏やかならぬリアルと、「人たらし」と言われる速水の表と裏の顔をしっかりあぶり出している。

さらに、雑誌「トリニティ」で連載を開始する人気ファッションモデルの城島咲(池田エライザ)に小説版にない新たなドラマを用意し、エンタテインメント性とビジュアルのインパクトを強化。視覚に訴える描写を存分に盛り込んで、映画ならではの刺激と興奮を増幅させることも忘れていない。

観終わった後には小説を読んだ時と同じ爽快感と余韻が残り、新たな発見があっておもしろさが倍増する。その逆ももちろん同様だ。

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